アスベスト除去作業には、専用の服装と装備が必要です。アスベストを含む粉じんの吸入や体への付着を防ぐためにも、規定の基準を満たした服装を着る、必要な装備を身に着けるなどを徹底しましょう。
今回は、アスベスト除去作業の服装や装備の種類や選ぶポイントなどを詳しく解説します。アスベスト除去作業に関わる方は、ぜひご参考ください。
目次
アスベスト除去作業に特別な服装を着るべき理由は?
アスベストの除去作業では、特別な服装を着るべき理由があります。アスベストが呼吸器官を通じて人体に入り込むと、以下のような健康被害をもたらすリスクが高いからです。
- 石綿肺
- 悪性中皮腫
- 肺がん
いずれも、潜伏期間が大変長く、アスベストを吸引してから数十年経過して発症することもケースも多く見られます。現役世代のときには問題なくても、高齢になって体力が落ちているところに発症することが多く、命に関わることも多いため、注意が必要です。
アスベスト除去作業に必要な服装や装備の種類は?
アスベスト除去作業に必要な服装や装備には、以下のような種類があります。
- 防護服
- 防塵マスク(通常のマスクはNG)
- 防護メガネ(ゴーグルタイプが密着性が高くておすすめ)
化学防護手袋 - フード(フード付き防護服の場合は不要)
- シューズカバー
上記のような服装を用意するときは、作業服専門業者など、信頼性が高い業者から購入することが大切です。また、購入する際は、アスベスト除去作業のレベルに応じた性能や機能の条件を満たしているか、確認してから購入してください。
アスベスト除去作業に適した服装の条件
ここでは、アスベスト除去作業に適した服装の条件を、詳しく解説します。
規定のJIS規格を満たしている
まずは、規定のJIS規格となる「JIS T 8115の浮遊固体粉じん防護用密閉服(タイプ5)」を満たした服装を着る必要があります。
アスベスト除去作業用の服装は、基本的に「JIS T 8115の浮遊固体粉じん防護用密閉服(タイプ5)」以上であることを確認してください。用意するのが面倒などの理由で規定外の服装を着て作業するのは、絶対にやめましょう。
つなぎ服などですき間が少ない
アスベスト除去には、つなぎ服などのすき間が少ない服装が適しています。アスベストを含む粉じんは非常に細かい粒子であるため、わずかなすき間から服装の中に侵入するからです。
いったん、服装の中に入り込んでしまったアスベストを除去するのは、とても大変です。前述した「JIS T 8115の浮遊固体粉じん防護用密閉服(タイプ5)」を満たした服装を選ぶことが、最も安全といえます。
丈夫で粉じんが通過しづらい素材や構造
丈夫で粉じんが通過しづらい素材や構造であることも、アスベスト除去作業の服装に欠かすことができません。
たとえば、生地の表面が複数層の構造になっていて、粉じんが表面にとどまり、内部に通過しづらくなっているなどです。また、袖口や足首部分がテープ式で体に密着できる、縫い目をテープで覆ってすき間を埋めているなどの点も、重要なポイントといえます。
使用後に使い捨てできる
アスベスト除去作業の服装は、使用後に使い捨てできるタイプを選ぶとよいでしょう。服装に付着したアスベストを除去するより、使い捨てしたほうが手間がかからず、効率的です。
また、服装に付着したアスベストを吸い込んでしまうリスクを考えると、使い捨てタイプを選ぶ意味は大きいといえます。アスベスト作業に使用した服装については、捨てるのはもったいないと考えてはいけません。
アスベスト除去作業におすすめの服装を3つのレベル別に解説
アスベスト除去作業では、レベルに合わせた服装を選ぶことも大切です。ここでは、3つのレベル別に解説しましょう。
レベル1のアスベスト除去作業の服装
レベル1は、最も危険度の高いアスベスト除去作業です。アスベストが綿状で、種類も毒性が高く、「アスベスト含有吹き付け材」などの、飛散性が高いものが該当します。
したがって、アスベスト除去作業時には、完全防備を徹底する必要があります。
「JIS T 8115の浮遊固体粉じん防護用密閉服(タイプ5)」の基準を満たしたつなぎ服などを着て、アスベストの粉じんの吸引や付着を徹底して避けることが大切です。
レベル2のアスベスト除去作業の服装
レベル2は、「アスベスト含有耐火被覆材」や「アスベスト含有保温材」が該当します。レベル1よりも危険度は下がりますが、健康被害のリスクが十分に高いため、アスベスト除去作業の際には、徹底した対策が必要です。
基本的には、レベル1と同様に「JIS T 8115の浮遊固体粉じん防護用密閉服(タイプ5)」の基準を満たしたつなぎ服を着て除去作業に臨んでください。
レベル3のアスベスト除去作業の服装
レベル3は、「アスベストを含む成形板」など、比較的危険性が低いものが該当します。アスベストを含む粉じんが飛散するリスクが低いため、レベル1やレベル2ほどは心配する必要がありません。
そのため、「JIS T 8115の浮遊固体粉じん防護用密閉服(タイプ5)」の基準を満たさない防護服などの服装についても、専用の作業着であれば着ることが認められています。
ただし、「石綿含有けい酸カルシウム板第1種」を含む部材を切断する場合などは、フード付きの防護服を着ることが義務付けられていることがあります。
アスベスト除去作業に使用した服装の処分方法
アスベスト除去作業に使用した服装は、処分方法にも十分に気を配ることが必要です。アスベスト除去作業に使用した服装は、特別管理産業廃棄物として、厳密に処分することが義務付けられています。
適当な方法で処分することは禁じられていますので、専門業者に依頼して安全に処分してください。
まとめ
今回は、アスベスト除去作業に適切な服装や装備の条件や選ぶポイントなどについて詳しく解説しました。
アスベスト除去作業では、アスベストを含む粉じんの吸引や体への付着を防ぐために、専用の防護服などを着る必要があります。
アスベスト除去作業の服装は、取り扱うアスベストの部材によって、レベル1~レベル3まであり、それぞれに求められる服装が異なるため、きちんと確認しましょう。