昨今のコロナ禍で飲食店業界には大変厳しい状況が続いています。売上が思うように伸びず、閉店することを考えていらっしゃる方も多いのではないでしょうか。
飲食店を閉店する際に重要なのは、開店時と同様、綿密なスケジュールを立てて進めることで余分な出費や手間を最小限に抑えることです。
今回の記事では飲食店を閉店する際の流れと必要なことをわかりやすく解説します!閉店を考えているけど何から手をつけていいかわからないという方は参考にしてみて下さい!
目次
テナント退去の流れはYouTube動画でも解説しています!
テナント退去の流れとスケジュール感はウラシコのYouTubeチャネル【ウラシコチャンネル】でも解説しています。賃貸テナントの退去の流れは、契約の解除から原状回復工事、引き渡しまで複雑な行程があります。基本の流れとスケジュール感を押さえて、スムーズな退去を実現しましょう!
閉店を考えた時に最初にやるべきこと
1.賃貸借契約書を確認する
ここでのチェックポイントは、解約通知の期限、敷金の返還のタイミング、原状回復に関する条項、敷金返却時の償却額についてです。
解約通知の期限について、通常、賃貸借契約書には「解約する場合は○か月前までに通知すること」などと書かれています。解約する旨を書面で通知しても、その日から契約書に書かれた期間(解約予告期間という)は賃料を支払わなければなりません。
契約によって異なりますが、一般的には2~6か月であることが多いです。敷金の返金のタイミングについても、契約書できっちりと確認しておきましょう。物件の引き渡し日に入金されるとタカをくくっていると当てが外れることもあります。
良心的なところでは「契約終了後速やかに返還」と書かれている場合もありますが、一般的には「明け渡し後債権債務の精算を行い1か月以内に返還」とされている場合が多いようです。
原状回復とは
原状回復とは、退店する際に店の設備や内装を「契約時の状態に戻すこと」です。ほとんどの賃貸物件において原状回復義務があるとされているので契約書の内容をしっかりと確認しておきましょう。
どの程度の原状回復が必要かによって、かかる費用も異なってきます。自分と貸主の間で原状回復の認識にズレがあると後々のトラブルになるので、工事業者に見積もりを取る際には、貸主や管理会社の人にも立ち会ってもらうと安心です。
敷金の償却額とは
敷金の償却額とは、敷金返還時に大家さんが受け取るお金のことです。つまり敷金は必ずしも全額戻ってくるわけではありません。
一般的には2か月分の賃料相当額が償却額として設定されていることが多いようです。賃貸借契約書でしっかり確認しておきましょう。賃料の滞納があったり、原状回復工事が不十分だったりした場合にも返却される敷金が減額されることがあります。
原状回復における行政手続きを詳しく解説している記事をまとめてあります。こちらも合わせてご参照ください。
2. 閉店にかかる費用の見積り
・解約予告期間分のテナント料
上記で説明したように賃貸借契約書に書かれた解約通知の期限分は、営業を終了したとしても賃料を支払わなければなりません。
・水道、光熱費、金融機関からの借入金、リース料など
厨房機器やエアコンにリース契約がある場合は、リースを解約します。中途解約ができるかどうか、残りの期間のリース料、中途解約違約金の金額などについても調べておきましょう。
退去するまでの水道代や光熱費も払う必要があるので各自試算しておきましょう。金融機関からの借入金については、毎月の支払額と残高を確認しておきます。人件費や食材費などにかかる費用のうち、「後払い」となる経費も計算に入れておきましょう。
・従業員の給料(解雇予告手当)
従業員を雇っている場合、30日以上前に解雇予告を行う必要があるとされています。ということは、即時解雇する場合であっても少なくとも30日分の平均賃金を払わなければいけないことになります。
・原状回復の工事費
原状回復の工事費は店舗の立地や構造によっても異なりますが、一般的な相場は1坪あたり数万円から10万円程度かかることが多いです。また解体費用とは別に廃棄物処理費用がかかることもあるので、事前に確認しておく必要があります。
無駄のないスケジュール管理の仕方
閉店する際に無駄の少ないスケジュールを組むことを考えた場合、次の2点に留意してスケジュールを決定していきましょう。
・営業終了日を決める(解体工事はどれくらいの時間がかかるか確認)
・解約予告日を決める(解約予告期間をしっかり確認)
この2点を踏まえた上で厨房機器の買い取り査定や、解体費用の見積もりを先に済ませておけば、必要な費用の額や期間が明確になります。その後に解約通知を出し、期限いっぱいまで営業すれば、費用的にも時間的にも無駄の少ない退店が可能になることでしょう。
店舗を居抜きで売却する場合
今まで解説してきたケースは、原状回復工事をして退店する場合ですが、他の方法として「居抜き」あるいは「造作譲渡」と呼ばれる取引も可能です。
これは飲食店の造作、厨房機器、設備一式を居抜き店舗として新テナントに売却する方法です。ここで居抜き売却の流れを簡単に示しておきます。
① 事前に物件の所有者の承諾を得る
② 居抜き専門業者に査定を依頼する
③ 新テナント候補者による内覧
④ 売却額の交渉
⑤ 造作譲渡の契約の締結
⑥ 退店(新テナントの入居)
⑦ 売却額を受け取る
居抜き売却にはいくつかのメリットがあります。まず造作・備品などを第三者に有償で譲渡することによってお金が入ってきます。
また売却によって原状回復工事義務も次の方に引き継がれるので工事費用が一切不要になります。リース物件がある場合には、そのリース契約を新テナントの方に引き継いでもらうことができれば、中途解約違約金を払わずに済みます。
ただし、居抜き売却の場合、かならず買い手が見つかるとは限りませんし、買い手が見つからなければ原状回復するしか手はなくなります。また物件所有者が居抜き売却に対して難色を示す場合もあります。
もし居抜き売却を考えている場合は、専門業者に依頼しましょう。査定、契約書の作成、新テナントとの仲介などを、すべて代行してくれます。もちろん仲介手数料はかかりますが、プロに任せることでトラブルを未然に防ぐことができます。
また、居抜き工事に関してはこちらの記事で詳しく解説していますので、合わせてご参照ください。
まとめ
飲食店を閉店する際には、開店時と同じように、資金繰りとスケジュールが大変重要であることがわかりました。また閉店するにあたり様々な種類の届出が必要になります。届出書の用紙はインターネットで手に入るものも多いので時間に余裕のある時に準備しておきましょう。
スケジュール表を作成するなどして、貸主やお客様に迷惑がかからないように退店の準備をしていきましょう。また、優良な解体業者に見分け方に関しましては、こちらの記事一覧ページにてまとめております。こちらも合わせてご参照ください。