「石綿(アスベスト)」という言葉を聞いたことがある人は多いでしょうが、「グラスウール」という言葉を聞いたことはありますでしょうか。アスベスト同様、建築物の断熱材として使用することができます。今回は、グラスウールについて説明していきます。
目次
グラスウールとは?
グラスウールとは、ガラスを高温で溶かすことでミクロン(1,000分の1ミリ)単位の細い繊維に細分してから綿状にしたもので、ガラス繊維とも呼ばれます。グラスウールは最終的に板状のバットやボード、ロール、筒状の保温筒、細かく粉砕した吹き付け用に加工されます。
リサイクルガラスを主成分としているため、ガラスの持つ耐熱性や不燃性、耐久性を持っているほか、繊維のもつ柔軟性や断熱性、吸音性、防振性もあわせもっているため、暑さや寒さ、騒音、振動などを遮断するのにも適しています。
このように様々な性質を持ち合わせていることもあり、グラスウールは住宅、ビル建築、設備機器をはじめ、自動車など多岐にわたり、幅広い用途で使用されています。
グラスウールの特徴(特長)
グラスウールには以下に挙げるような特徴(特長)があります。
耐熱性が高い
無機質のガラスを素材としているため、熱に強く(180℃程度までは耐える)、ロックウールと並んで法定不燃材(建築基準法で定められた17の建築材料)の一つになっています。
断熱性が高い
複雑に絡み合った細かいガラス繊維の間に無数の空気を閉じ込めた部屋をつくり、この空気の部屋を層として構成することで高い断熱性能が発揮されます。
吸音性に優れている
幅広い周波数帯域の音を吸音することができます。(N.R.C※0.5~0.9ほど)
※N.R.C:騒音低減係数(Noise Reduction Coefficient)とは、吸音パネルの吸音性を測定するもので、250・500・1000・2000Hzの吸音率の平均値のことを指します。1が最高(すべての音を吸収)で、0が最低(音を吸収しない)です。
食害に合いにくい
グラスウールは繊維の一本一本がガラスであり、柔らかいようで硬いため食害にあいにくい素材であるということができます。
柔軟性、加工性が高い
やわらかい綿状なのでカットしやすく、軽量で加工が容易であるだけでなく、施工も楽に実施することができます。
耐水性が低い
繊維の中に空気を含むことで熱を伝えにくくするため、水に濡れてしまったり、湿気を含んでしまうと思うような断熱性能を発揮できないため、防水シートを被せるなどの工夫が必要となります。
コストパフォーマンスが高い
リサイクルガラスを利用しており、軽量で加工しやすいため、玄武岩などを減量としているロックウールより安価でコストパフォーマンスが高いです。ただし、耐水性がそれほど高くないため、利用できるところが限定されます。
安全性
グラスウールの繊維は直径4~9ミクロンほどで、繊維を吸い込んでしまったとしても鼻や気管支でほとんどが除去され、肺に到達することはありません。万一肺に入っても、体液に溶けやすく短期間で体外に排出されます。
また、2001年10月にフランスのリヨンで開催された国際がん研究機関(IARC)による発がん性分類評価会議において、グラスウールは「グループ3:ヒトに対する発がん性が分類できない」に該当するものと評価され、紅茶と同じグループとなりました。
ちなみに、アスベストは「グループ1:ヒトに対して発がん性がある」であり、コーヒーが「グループ2B:ヒトに対する発がん性が疑われる」に分類され、グラスウールはコーヒーより安全であると評価されました。
参考:IARC発がん性リスク一覧
グループ | 評価 |
グループ1 | ヒトに対して発がん性がある |
グループ2A | ヒトに対する発がん性がおそらくある |
グループ2B | ヒトに対する発がん性が疑われる |
グループ3 | ヒトに対する発がん性が分類できない |
グループ4 | ヒトに対する発がん性がおそらくない |
グラスウール断熱材の断熱性能について
グラスウールは繊維の密度(K = kg/㎡)によって種類分けされており、製品ごとに「◯K」というような表示がされています。
熱伝導率
一般的に、断熱材の性能は熱伝導率(W/m・K)によって決まります。 熱伝導率は「厚さ1m・面積1㎡の断熱材の表裏に1℃の温度差があるときに、1秒間にどのくらいの熱量が移動するか」を示した数字であり、「熱伝導率の数字が低い=熱を伝えにくい=断熱性能が高い」ということになります。
以下に繊維の密度ごとの熱伝導率を示します。
繊維の密度(K) | 熱伝導率(W/m・K) | |
通常のグラスウール | 高性能グラスウール | |
10K | 0.050 | 0.044 |
16K | 0.045 | 0.037 |
24K | 0.038 | 0.035 |
32K | 0.036 | 0.034 |
現在では、16Kや24Kの高性能グラスウールが多く利用されていますが、値段が上がる割に性能がそれほど上がるわけではないため、16Kの高性能グラスウールが一番よく利用されています。
グラスウール施工時の注意点
グラスウール断熱材から発生するホルムアルデヒド()は極めて少量は、軽量で利用しやすいものですが、壁の中に充填して使われることが多く、すきまなく詰め込む施工技術が求められます。
施工時に押し込みすぎたり、柱や壁との間にすきまができてしまったりすると、そのぶん断熱性能は下がりますので、技術力が求められます。
ただ、グラスウールは柔軟性のある素材のため、枠に合わせてぴったり施工されていれば、地震の揺れや経年によって家に多少歪みが生じても、すきまが生じにくいという利点もあります。
グラスウール解体時の注意点
先に述べたように、グラスウール断熱材は壁に埋め込まれていたり、空調ダクトや給排水管などに巻きつけてあることが多いので、建物の天井板・壁板を取り外すとグラスウールが露出します。
木造建築では、壁に埋め込まれているグラスウールはステープル(針)などで取り付けられていることが多いため、簡単に撤去でき、配管などに巻かれているグラスウールも容易に外すことができます。
しかし、取り外す際に粉塵が発生することがありますので、すき間ができないように作業場をシートで囲うと共に、散水しながら作業するなど粉塵が飛散しないような対策を施すことが求められます。
撤去したグラスウール断熱材は、直ちにポリ袋などに入れて密封し、粉じんが飛散しないようにし、産業廃棄物(ガラスくず、コンクリートくず及び陶磁器くず)として処分するか、分別できる場合には分別して回収されることで再度リサイクルすることができます。
グラスウールについてのまとめ
今回は、ガラスウールについて説明してきました。グラスウールの断熱材はコストパフォーマンスが高く、加工しやすいなどの理由から世界的にも今一番利用されていますが、耐水性などに課題があるなどデメリットもありますので、利用する際にはコストの低さだけで選ぶのではなく、将来的なメンテナンス性や耐久性も考慮して利用する建材を考えるようにしてください。
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