アスベストは、かつて多くの建築物に使用されていた素材ですが、健康への影響から現在では使用が厳しく制限されています。特に2006年の法規制見直しにより、解体業者には事前調査や報告義務が求められ、違反時には罰則が適用されるようになりました。
アスベスト法の罰則内容と解体業者が知っておくべきアスベスト法強化の罰則や法的基準、違反防止のための対策を解説します。
目次
アスベスト法とは
アスベスト法とは、石綿(アスベスト)による健康被害を防ぐため、製造や輸入、使用を制限する法律です。労働安全衛生法施行令の改正により、アスベスト含有製品の禁止や解体時の調査義務が規定されています。
アスベスト法の主な内容は次の通りです。
内容 | 詳細 |
アスベスト含有製品の禁止 | 石綿を重量の0.1%以上含む製品の製造、輸入、譲渡、提供、使用が禁止されています。 |
吹付けアスベストの禁止 | 建築物における吹付けアスベストの使用は禁止されています。 |
改修工事時の義務 | 増改築や大規模修繕の際、既存部分を封じ込めたり囲い込んだりできる場合を除き、アスベストの除去が義務付けられます。 |
調査結果の報告 | 解体や改修を行う施工業者は、アスベストの有無を事前に調査し、結果を労働基準監督署や地方公共団体に報告しなければなりません。 |
アスベストの処理方法 | アスベストを含む廃棄物は、ガイドラインに基づいて適切に処理する必要があります。 |
2006年以前に建設された建物には、屋根や壁、床タイルなどにアスベストが含まれている可能性が高く、解体業者は特に注意が必要です。
アスベスト法違反による罰則内容
アスベスト規制を遵守せず、適切な手続きを怠ると、業者には罰則が科せられます。以下は、アスベストに関する違反行為の種類と罰則内容です。
調査や報告を怠った場合
建築物や工作物の解体や改修を行う際には、アスベスト含有建材の調査が義務付けられています。この調査は、アスベストの有無にかかわらず報告が必要です。
また、アスベストを含有する建築物であるか調査できるのは、建築物石綿含有建材調査者や石綿調査診断士といった資格を持つ専門家のみとなっています。
調査報告は施工開始の14日前までに労働基準監督署や都道府県などの関係機関に提出しなければならず、報告書は必ず3年間保存することが法令で義務付けられています。調査を怠ったり虚偽報告を行なったりした場合、大気汚染防止法違反として30万円以下の罰金が科せられることから、慎重に対応しなければなりません。
アスベスト措置義務に違反した場合
アスベスト除去の措置義務に違反した場合、法令により3か月以下の懲役または30万円以下の罰金が科せられます。これは、作業者および周辺住民への健康被害を防ぐためのルールと言えます。
作業基準に違反した場合
アスベスト除去作業は、飛散防止対策など、法定の基準に基づいて行われなければなりません。適切な手順を怠ると、アスベストの飛散により作業者や周辺住民へ健康リスクをもたらす可能性があります。作業基準に違反した場合は、6ヶ月以下の懲役または50万円以下の罰金を科せられます。
解体業者が知っておくべきアスベストの法的基準
アスベスト除去作業を行う際には、関連する法律を十分に理解し、遵守することが重要です。解体業者が知っておくべきアスベストの法的基準は以下の通りです。
労働安全衛生法
労働安全衛生法に基づき、解体業者は作業場の安全を確保するため、アスベストの飛散防止策や作業員の安全管理を徹底する必要があります。作業中は防護服やマスクの着用が求められ、特定の作業基準に基づいて除去作業を行わなければなりません。
建設リサイクル法
解体や改修などの建築工事を行う場合、届け出を提出する前に、事前調査を行わなければなりません。事前調査では、吹付けアスベストやアスベストを含有した資材の有無について調査し、その結果を各自治体へ提出します。また、分別解体を行う場合は、法令に基づき、適切な手続きを行なった上で、適正に処分する必要があります。
廃棄物処理法
アスベストを含む廃棄物は、通常の廃棄物と異なり、特定管理産業廃棄物として適切な処理が必要です。廃棄物処理法に基づき、廃棄物の取り扱いや処分方法に従い、適切な処分が求められます。
アスベスト法違反を防ぐための対策
違反防止のため、アスベストの取り扱いには事前準備が欠かせません。解体業者が取り組むべき基本的な対策をご紹介します。
事前調査を実施する
アスベスト含有率を事前に確認し、解体・改修工事の影響範囲を把握することで、適切な対策を取れるようになります。調査には、建築物石綿含有建材調査者や石綿調査診断士といった専門資格を持つプロを起用し、正確にアスベスト調査を完了させましょう。
調査結果を報告する
調査結果は、施工開始の14日前までに労働基準監督署や地方公共団体に提出し、報告書を3年間保存する義務があります。報告が漏れた場合、違反と見なされるため注意が必要です。
飛散防止対策をする
アスベストが含まれる建材を除去する際は、飛散防止措置が必須です。飛散防止の養生や集塵・換気装置などの使用により、アスベストが空気中に放出されるのを防ぎます。また、作業員には専用の防護服やマスクの着用が義務付けられており、周辺環境や作業員への影響を最小限に抑えることが求められます。
アスベストに関する補助金制度
アスベストの調査や除去にかかるコストを軽減するため、各自治体では補助金制度を設けています。ここでは、アスベストに関する補助金制度と、それぞれの要点について解説します。
アスベスト調査に関する補助金
アスベスト調査に関する補助金は、国が補助金制度を創設していますが、補助制度がない地域もあります。そのため、補助金制度の利用を検討している場合は、それぞれの地方公共団体への確認が必要です。
アスベスト調査に関する補助金制度の基本的な内容は、以下の通りです。
対象 | アスベストが施工されている可能性のある住宅や建築物 |
補助内容 | アスベストの有無を調査するために必要な費用を補助する |
補助限度額 | 原則1棟25万円 |
この補助金は、アスベストが含まれているかを調べるための調査費用を一部補助するものであり、申請条件は自治体ごとに異なります。補助金の上限額や補助率、申請に必要な書類などが異なるため、事前に自治体のホームページなどで確認を行いましょう。
申請手続きには、調査結果を証明する書類やアスベスト除去に係る見積書、除去が必要と市長が認めた書類が必要です。
さらに、補助金申請には期限が設けられているため、計画が決まり次第、早めに申請を行わなければなりません。依頼者に代わり解体業者が補助金の申請を行う場合は、依頼主との協力や確認作業が不可欠です。必要書類を正確に揃え、迅速に手続きを進めるように心がけましょう。
まとめ
令和のアスベスト法規制強化により、解体業者をはじめとする建築関係者は、国が定めた法的基準と罰則のもとで業務を行う必要があります。
アスベストに関する調査や報告、適切な除去措置は、施工の安全性や公衆の健康を守るために欠かせません。法令を遵守しつつ、各自治体が提供する補助金制度を活用することで、アスベスト除去に伴うコストを抑え、法的な義務を果たせます。
業界全体が安全意識を持ち、正しい手順でのアスベスト対策を取ることが、安心で持続可能な事業運営につながります。ぜひ、参考にしてみてください。