賃貸物件から退去するとき、心配になるのは原状回復費用の負担。特に壁紙を張り替えることになったら、かなり費用は高くなりそうですよね。
「久しぶりに家電を移動してみたら、壁紙が黒く変色していた」
「ポスターを貼るためにピンを使ったけど、小さな穴なら大丈夫?」
と、不安になる方もいると思います。
退去時に壁紙の張替えが生じた場合、入居者が払うのか?どれくらいの費用がかかるのか?
といった疑問にお答えしていきます。ここで基本的な考え方を学んでおけば、わからない不安から解放されますし
退去時にオーナー側からの理不尽な請求があっても、しっかり対処できるようになります。
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退去立会いの詳細は以下ページでより詳しく解説しています。ぜひこちらも合わせてご参照ください。
目次
原状回復とは
そもそも原状回復とはどういうことを指すのでしょうか。原状回復とは、賃貸契約が終了して退去する時にその部屋を元の状態(入居前の状態)に戻して、オーナー側に返すということです。
壁紙やフローリングなどを、次の入居者のためにキレイに戻しておく必要があります。
ハウスクリーニングと誤解されることもありますが、ハウスクリーニングは普段出来ない部分までしっかり清掃をすることですので、壁紙を張り替えるような工事は含みません。
もしも原状回復費用を入居者側が負担することになった場合、敷金から支払われます。
原状回復ガイドラインとは
日常生活をおくっていれば、壁紙の劣化や汚れの発生などは避けられないものです。敷金の返還に関するトラブルは非常に多かったこともあり、国土交通省では「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」を公表しています。
このガイドラインでは、入居者が理不尽な支払いをしないように設定されており、あいまいだった修繕費用の負担について具体的な明記がされています。
2020年には民法が改正され、原状回復と経年劣化に関して、入居者の落ち度でない部分の修繕に関しては負担しなくて良い、とわかりやすく言及されました。
出典:国土交通省ウェブサイト「「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」について」
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk3_000020.html
出典:法務省ウェブサイト「2020年4月1日から賃貸借契約に関する民法のルールが変わります。」
https://www.moj.go.jp/content/001399957.pdf
オーナー側が壁紙の修繕費用を負担するパターン
以下のような場合はオーナー側が壁紙の修繕費用を負担します。
家電製品の裏で発生した電気やけ
日常生活をおくる中で、家電製品は必要不可欠なため、家電の裏側で発生した電気やけはオーナー側の負担になります。
日焼けや経年劣化による変色
紫外線によるダメージや、経年劣化によっておきた変色は、どうしても避けられません。ですので、この場合もオーナー側の負担となります。
経年劣化による壁紙のはがれ
壁紙を貼るときに使用する接着のり。のりの劣化で壁紙がはがれた場合は経年劣化とみなされますので、入居者側が費用を負担することはありません。
画鋲やピンの小さな穴
ポスターやカレンダーを壁に貼るときに画鋲やピンを使いますが、小さな穴があいてしまいますよね。実はこの場合も、生活に必要な範囲内と考えられていますので、入居者側の負担とはなりません。
地震などで建物自体が変形したことで発生したヒビや破れ
地震などで建物が変形したことにより、壁紙にヒビや破れが発生することがあります。この場合も不可抗力ですので、入居者側が費用を負担する必要はありません。
入居者側が壁紙の修繕費用を負担するパターン
入居者側に不利益がないようにガイドラインが設けられていますが、以下のような不注意によるケースは入居者側が費用を負担しなければなりません。
結露を放置したことよるカビやシミ
冬に発生しやすい結露。そのままにしていると、壁紙にカビやシミが発生してしまいます。そもそも入居者には借りている部屋を、適切な保存に努める義務があります。
これには日頃の清掃をおこなうことも含まれますので、結露を放置して壁紙を汚した場合は入居者側が費用負担となる場合があります。
タバコのヤニ汚れ
喫煙によって壁紙が汚れてしまい、清掃をしても元に戻らないと判断された場合は入居者側の負担となります。タバコのニオイが付着してしまった場合も同様です。
子供の落書き
クレヨン、油性マジック、ボールペン。小さな子供がいる家庭では、油断していると子供が落書きをしてしまうことも。残念ながら、落書きによる壁紙の損傷は入居者側の負担となります。
ペットの爪や噛んだ跡
ペットが引っかいたり、噛んでしまったことで壁紙が損傷してしまった場合は、入居者側の負担となります。退去時に無駄な支払いをしなくてすむよう、ペットのしつけを心掛けましょう。
ピンの穴よりも大きな穴
画鋲やピンの穴よりも大きな穴があいてしまった場合は、入居者側の負担となります。釘を打ったり、物をぶつけて出来た大きな穴は、壁紙に加えて、下地ボードも交換する必要があるため、原状回復費用が高額になる場合があります。
修繕費用の相場
壁紙の修繕費用は以下になります。
張替え/1㎡あたり | 約1,000~1,500円 |
穴の補修 | 約1~3万円 |
壁紙のグレードにもよりますが費用は1㎡あたり、およそ1,000円からになります。また穴の補修は下地ボードも交換しなくてはならない場合、総額で約6万円ほどかかる場合もあります。
施工業者や時期によって費用は増減しますが、目安として覚えておくとよいでしょう。
修繕費用の負担相場
原状回復ガイドラインによると、「壁紙の経年劣化による残存価値は6年で1円になる」と定められています。つまり賃貸物件の退去時に、壁紙が貼られて6年経過していた場合は費用負担はありません。
ここでは原状回復ガイドラインを元におおよその費用を表にしました。
部屋の広さ | 1~2年経過 | 3~4年経過 | 5~6年経過 |
4.5畳(32㎡) | 3.2万円~ | 1.6万円~ | 0~1万円 |
6畳(45㎡) | 4.5万円~ | 2.3万円~ | 0~1.4万円 |
8畳(54㎡) | 5.4万円~ | 2.7万円~ | 0~1.6万円 |
※()内の㎡数は壁と天井も含めた面積
※費用は1,000円/㎡で計算
実際にはこれに人件費などが追加されますので、おおよその費用感として考えてください。
退去前に賃貸借契約書を確認しよう
賃貸借契約書の控えは手元にありますか?ぜひ契約書に書かれている退去時のルールを確認しましょう。
原状回復ガイドラインは、入居者側に理不尽な請求がされないように配慮されていますが、あくまでトラブルを回避するための目安ですので、賃貸借契約書に記載された内容が優先されます。
例えば、退去時に壁紙の修繕費は請求されないが、ハウスクリーニング(退去後の清掃)の費用は入居者の負担となっている場合もあります。
DIYで壁紙を貼る場合の注意点
最近は賃貸物件であっても、自分好みに壁紙をはるDIYが人気のようです。裏がシール状になっているおしゃれな壁紙がオンラインでも販売されています。
注意点として壁紙を選ぶ際は、必ず後から剥がせるタイプの壁紙を選びましょう。剥がすときは、下地になる壁紙を傷めないように、ゆっくり丁寧に作業しましょう。
うっかり下地の壁紙を傷めてしまった場合、不注意によるケースとみなされますので修繕費は請求されることになります。
まとめ
退去するときに壁紙の張替え費用を請求されないか、とても心配になりますよね。今回は請求されるケースとされないケース、費用の相場に関して説明しました。
借りている部屋ですので、もし大きな傷などを発見した場合は自分で判断せず、オーナーに相談することをおすすめします。
また思わぬ請求でトラブルにならないように、日頃の掃除と契約書の確認を気にするようにしましょう。