「原状回復」「現状回復」「現状復帰」「原状復帰」「原状復旧」は、賃貸物件を退去する際に関係する用語です。特に退去時の立ち会いのときに頻発されます。
皆さんは、この5つの用語の意味や違いをご存じでしょうか?漢字も読み方もよく似ていることから、とても紛らわしいですよね。
実は、それぞれの用語は、同じような漢字を使っていたり語感であったりしても、異なる意味を持つのです。今回は、「原状回復」「現状回復」「現状復帰」「原状復帰」「原状復旧」の5つの用語の意味や違いについて、詳しく解説します。
目次
「原状」と「現状」の意味と違いを確認
最初に、「原状」と「現状」の意味と違いについて確認していきましょう。読み方は同じ“ゲンジョウ”ですが、微妙に意味が異なることが分かります。
「原状」の意味は?
「原状」には、はじめに存在した状態、元のままの状態、といった意味があり、オーナーや不動産管理会社と結ぶ賃貸契約書に記載されることが多い語句の一つです。主な使い方については、以下をご覧ください。
- 使用例:賃貸物件を退去することになったため、入居時の原状に戻した。
上記の例から、「原状」は、過去の状態を示していることが分かります。
「現状」の意味は?
「現状」には、現時点の状態、もしくは、現在の状態という意味があります。「現状」は、あらゆる分野で一般的に広く使われている語句で、以下のような使い方をするのが適切です。
- 使用例:築50年の自宅の現状は、まるでゴミ屋敷のように荒れ果てていた。
上記の例からも、現時点の状態で物事を見ているのが分かるはずです。
「原状」と「現状」の違いは?
結論として、賃貸契約書に記載する場合は、「原状」を使用するのが適切といえます。
「原状」も「現状」も、同じ“ゲンジョウ”と読むことから、混同しやすいものです。しかし、前述したように、「原状」は過去の状態を表しているのに対し、「現状」は現在の状態を表している点で、大きな違いがあります。
「回復」「復帰」「復旧」の意味と違いを確認
次に、「回復」「復帰」「復旧」の3つの語句の意味と違いについて、詳しく見ていきましょう。どんなときにどの語句を使うべきか、理解できるはずです。
「回復」とは?
「回復」の意味は、元の状態に戻すこと、もしくは、元の状態に戻ることなどです。以下の例を参考にしていただくと、語句のニュアンスが理解できます。
- 使用例:猫が爪で引っかいて壁紙が剥がれたので、部分的に貼り替えて元どおりに回復させた。
何らかの理由により生じた傷や汚れを補修し、元の状態に戻すことをイメージしてください。なお、「回復」は、賃貸契約時だけでなく、病気や天候などを表現する際にも、広く使われます。
「復帰」とは?
「復帰」には、元のポジションや状態に戻る、戻すこと、といった意味があります。たとえば、以下のように使われるのが一般的です。
- 使用例:オーナーから依頼されて、入居者が退去した後の部屋を元どおりに復帰させた。
「復帰」は、上記以外にも、スポーツ選手のケガが治って一軍に復帰した、産休明けの女性社員が今週から職場に復帰した、といった使い方もあります。
「復旧」とは?
「復旧」の意味は、壊れたり傷んだりしている状態から、元の状態に戻すことなどです。たとえば、以下のように使われます。
- 使用例:賃貸物件の電気設備が故障したので、不動産管理業者に修理を依頼して復旧させた。
「復旧」の場合、そのままでは使用できない状態で、明らかに補修が必要であることが前提と分かります。そのため、災害時のインフラ整備などにも、多く使われているのが特徴です。
「回復」「復帰」「復旧」の違いは?
結論として、賃貸契約書に記載される場合は、「回復」を使用するのが最も適しているといえます。
「回復」「復帰」「復旧」は、ニュアンスが微妙に異なるものの、いずれも、元の状態に戻す、もしくは、元の状態に戻るという意味です。それぞれ、「原状」と組み合わせて、「原状回復」「原状復帰」「原状復旧」のように使うことが多く見られます。
中でも、不動産業界で圧倒的に多く使われているのは、「回復」です。入居中に発生した傷や汚れを元の状態に戻す、という意味合いにしっくりきます。
「原状回復」「現状回復」「現状復帰」「原状復帰」「原状復旧」の意味や違いは?
ここでは、「原状回復」「現状回復」「現状復帰」「原状復帰」「原状復旧」について、それぞれの意味や違いを詳しく解説します。
「原状回復」とは?
「原状回復」とは、主に賃貸契約時に使われる用語の一つです。「原状回復」は、元の状態に戻すといった意味になります。
賃貸契約書などで、賃貸物件の入居時の状態に戻すという意味で使われるのが一般的です。「原状復帰」「原状復旧」と同様の意味で記載されることもあります。
なお、賃貸契約書での「原状回復」とは、あくまでも入居時の状態に戻すという意味合いであり、新築当初やリフォーム当初の状態に戻す義務はありません。
「現状回復」とは?
「現状回復」の意味は、現時点の状態に戻すことです。元の状態に戻すという意味の「原状回復」と異なり、論理的に成り立たないことが分かります。
したがって、賃貸契約書などに「現状回復」と記載されている場合は、「原状回復」と読み替えて理解すべきです。念のため、賃貸契約を行う際、管理会社やオーナーに確認し、可能であれば記述訂正を依頼するとよいでしょう。
「現状復帰」とは?
「現状復帰」の意味も、現在の状態に戻る、もしくは、戻すということになり、意味が通じなくなります。「現状回復」のケースと同様に、ここでは、「原状回復」を使用すべきといえるでしょう。
そのため、賃貸契約書に「現状復帰」との記載がある場合は、「原状回復」の意味であることを確認すると同時に、記述訂正を依頼することがおすすめです。
「原状復帰」とは?
「原状復帰」は、元の状態に位置や状態に戻る・帰るという意味から、「原状回復」や「原状復旧」と同様の目的で使われます。
「原状回復」や「現状復旧」と異なるのは、「原状復帰」が主に不動産業界や建設業界で使われる点です。実際に、建設業界ではごく一般的な用語ですが、そのほかの業界ではほぼ使われません。
「原状復旧」とは?
「原状復旧」は、以前の状態に戻す、直すという意味になります。「原状回復」や「原状復帰」とほぼ同様の意味となり、従来の賃貸契約書ではよく使われていました。
そのため、「原状復旧」を使用していても間違いではありませんが、現在は「原状回復」を使うのが主流です。新たに賃貸契約書を作成する場合は、「原状回復」の使用をおすすめします。
賃貸物件の契約では「原状回復」を使うのが基本
結論として、5つの語句のうち、賃貸契約書では「原状回復」を使うのが最適といえます。
入居者が入居時の状態に戻す必要があることを記載する場合は、5つの語句のうち、最も適している意味合いになるからです。
なお、同じ“ゲンジョウカイフク”という読み方でも、「現状回復」は間違った使い方になります。したがって、賃貸契約書に「現状回復」との記載がある場合は、「原状回復」の意味であることを確認して対応するとよいでしょう。
まとめ
今回は、「原状回復」「現状回復」「現状復帰」「原状復帰」「原状復旧」についてそれぞれの用語の意味や違いを解説しました。
賃貸物件の契約では、基本的に「原状回復」を使用しているはずです。賃貸契約書で「原状回復」以外の用語が使われていたら、不動産業者に同様の意味であることを確認しておきましょう。
なお、語句の意味について不動産管理業者と食い違いが見られるときは、そのままにするとトラブルになるため、双方の見解をすり合わせておく必要があります。少しでも不明な点があったら、その場で不動産管理業者に確認し、必要に応じて賃貸契約書の差し替えや記述訂正を依頼しましょう。
原状回復工事の流れについてはこちらのページで詳しく解説しています。ぜひこちらも合わせてご参照ください。