今回は、2022年4月のアスベスト関連法令の改正実施について、解体工事に特に大きな影響がある変更点をピックアップしてご説明いたします。
なお、改正内容は、地方自治体の条例などで多少の差異がありますので、本記事で概要を確認したあとは、必ず各自治体のホームページなどで詳細をご確認ください。
また、令和4年4月1日改正実施の詳細の説明は、以下ページで解説しています。解体業者自らが現場目線で変更点を解説していますので、ぜひこちらもご参照ください。
目次
令和4年のアスベスト改正実施はYouTube動画でも解説しています!
アスベスト関連法令の改正実施の解説はウラシコのYouTubeチャネル【ウラシコチャンネル】でも解説しています。解体業者の目線で現場がどのように変わるのかわかりやすく説明していますので、ぜひこちらもご参照ください!
アスベストとは?
アスベストとは、石綿(いしわた・せきめん)と呼ばれる天然の鉱石のことです。
耐熱性や防音性の特徴を持ちながら、安価で加工しやすいため、火災防止等を目的として、1955年頃から2006年までの建物の耐火被覆材やアスベスト含有断熱材、ロックウール吸音天井板などに使用されてきました。
しかし、数十年後に肺がんや悪性中皮腫などの原因となるリスクがあることが判明し、徐々に使用が禁止されました。そして、2006年9月には0.1重量%を超えるアスベスト含有製品の製造や使用が禁止されました。
つまり、現在の建材で使用されていることはありませんが、2006年以前に建造された建物には、アスベストを使用した建材が使用されている可能性があります。
アスベスト法改正の変遷
前述の危険性を考慮して2020年6月5日に「大気汚染防止法の一部を改正する法律(改正大気汚染防止法)」が定められました。この法律は、2021年4月から順次施行されています。
ここからは、この法改正で解体工事の現場がどのように変わるのかを説明していきます。なお、こちらでご紹介している内容は一部の主要な変更箇所になります。
規制対象の拡大(2021年4月~)
規制対象が、レベル1(吹付け石綿 等)、レベル2(石綿含有保温材、石綿含有断熱材、石綿含有耐火被覆材 等)だけでなく、レベル3(石綿含有成形板等、石綿含有仕上塗材 等)にまで拡大され、全ての石綿含有建材が対象となりました。また、レベルごとの作業基準も更新、新設されました。
アスベストのレベルに関しては、YouTube動画で詳しく解説しています!
アスベストの基礎知識、アスベストレベルごとの特徴、レベルごとに必要な届け出と手続きについて、現場目線でわかりやすく解説しています。ぜひこちらもご参照ください。
不適切な作業の防止(2021年4月~)
元請業者は、石綿含有建材が使用されている建築物等の除去等が完了したことの確認を適切に行うために、必要な知識を有する者(※後述します)による目視での確認が義務付けられました。
さらに作業の結果を発注者に書面で報告、工事現場に掲示する義務が課されました。また、作業を行う際に作成した書類を作業完了日から3年間保管することが義務化されました。
事前調査の信頼性の確保(2021年4月~)
事前調査方法が「図面又は目視」から「図面及び目視」に変更になり、義務化されました。解体工事、リフォーム工事等を行う業者は、解体工事着工前に「目視」で建材が設計図と同じであることをチェックする必要があります。
さらに、目視での調査で判明しない場合、サンプリングと成分分析が必要になります。実際のところ、図面や目視だけで判断することは難しく、分析結果などの「証拠」を手に入れることができないため、必須に近い形なっています。
ただし、2006年9月以降に着工された建物に関しては、アスベストが使用禁止になった後ですので、当該着工日や製造日等の確認を行うことで事前調査を完了とすることができます。
また、解体工事の元請業者は解体工事の前に行った事前調査に関する記録を作成し、解体工事完了から3年間保存しなければならなくなりました。
直接罰の創設(2021年4月~)
隔離等をせずに除去作業を行った場合や、事前調査の結果を報告しない場合に対する直接罰の規定が新設されました。
さらに、元請業者のみに課せられていた作業基準の遵守義務が、作業基準遵守の徹底のため、下請業者にも課せられるようになりました。
事前調査結果の報告(2022年4月~)
一定規模以上の工事を行う場合には、石綿含有建材の有無にかかわらず、事前調査結果の報告(電子システム「Gビズ」より申請)が義務化されました。
この報告義務が発生する主な工事は以下の通りです。
・床面積合計80平米以上の解体工事
・請負代金合計100万円以上(材料費及び消費税を含む)の建築物の改造・補修作業
・請負代金合計100万円以上(材料費及び消費税を含む)
環境大臣が定める工作物の解体・改造等工事が対象となります。詳しくは、厚生労働省のHPや、お近くの役所などで確認しましょう。
建築物の事前調査を行う者の資格要件の新設(2023年10月~)
事前調査を行うための資格が創設され、事前調査を行う資格が必要になります。
この資格に該当する「アスベスト調査者」とは、アスベスト(石綿)に関する一定の知見を有し、的確な判断が出来る者が行うとされています。
具体的には、建築物アスベスト含有建材調査者や、一般社団法人日本アスベスト調査診断協会に登録された者、アスベスト作業主任者のうちアスベスト等の除去等の作業の経験を有する者などがこれに該当します。
さらに、2023年10月1日からは、一定の資格を有する者(一般建築物石綿含有建材調査者や特定建築物石綿含有建材調査者など)しか調査を行うことができなくなります。
アスベスト調査の流れ
①設計図書等による書面調査
まずは、設計図書から、施行年、使用されている建築材料などを確認し、アスベストの使用があるかどうかを確認します。ここで、アスベストの有無についてある程度のあたりを付けます。また、使用が疑わしい場所、アスベストの使用の有無が不明な場所を確認します。
②現地目視調査
書面調査で確認した内容と、実際に使用されている建材が同じものかどうかを確認します。また、使用が疑われる場所や使用建材が不明であった場所を目視で確認します。アスベストが使用されているかどうかわからない場合には、サンプルの採取を行います。
③アスベスト含有の可能性がある部材のサンプリング(サンプルの採取)・分析
アスベストの使用が不明であったり、使用建材が不明であったりする場合には、サンプルを採取し、分析調査機関で成分を分析し、アスベストの使用の有無を確認します。
この際に発行される分析結果は、その後の報告や、産業廃棄物処理の際に提示する証拠として必要となりますので、しっかり管理保管しておきましょう。
④報告書の作成・報告
調査内容の結果を書類にまとめるとともに、工事の依頼人や元請業者に結果の報告を行います。元請業者の場合は、工事開始前までに都道府県等へ報告することになります。
報告には電子申請システム(Gビズ)の登録が必要です。もちろん、アスベスト含有があった場合は、その後に適切な処置が必要になります。
アスベスト除去工事の流れ
アスベスト除去、封じ込め工事の作業内容に関する変更箇所(事業者向け)は、説明が非常に長くなるため、下記専用ページにて詳しくご紹介しています。こちらも合わせてご参照ください。
その他のアスベスト法規定
最後にアスベストの工事に関する法規が他にも存在しますので、簡単にご紹介します。各参考リンクも合わせて記載いたしますので、ぜひご参照ください。
また、下記意外にも、地方自治体レベルでの条例やルールが設けられている場合がございます。こういった地方ルールは、地方自治体のホームページ等で提示されていますので、役所のホームページ等で必ず詳細を確認しておきましょう。
建築基準法
2006年10月1日以降に着工する建築物について、アスベストの飛散の恐れがある建築材料の使用を禁止しています。増改築時には原則として既存部分のアスベスト等規制材料の除去を義務付けています。
さらに、劣化などでそのまま放置すればアスベスト飛散の恐れがある場合には、除去等の勧告・命令ができると定められています。
参考リンク:建築基準法による石綿規制の概要(国土交通省)
廃棄物の処理及び清掃に関する法律
廃棄するアスベストは、専門の資格を持つ業者に処分を依頼しなければならないなど、「廃アスベスト等」または「アスベスト含有産業廃棄物」の適正かつ確実な処理基準等を定めています。
参考リンク:廃棄物の処理及び清掃に関する法律(Wikipedia)
建設リサイクル法
解体工事等の際には、解体工事前に適切な届け出や申請を行うこと、きちんと分別を行い、他の建築廃棄物のリサイクルを妨げないようにすることなどを定めています。
参考リンク:建設工事に係わる資材の再資源化等に関する法律 – 国土交通省
労働安全衛生法
労働者の健康被害防止を目的として、建築物の解体時におけるアスベストの除去作業の届出や事前調査、作業計画、作業主任者の選任、保護具着用の徹底、作業場所の隔離、立入禁止などの規定を定めています。
アスベスト関連改正法の主要な改正内容まとめ
今回紹介したアスベスト関連改正法の主要な改正内容をおさらいしていきます。
・工事業者は、解体工事の前に、対象となる建物やそれに付随する設備等のアスベスト使用の有無を事前に調査することが義務化された。
・工事業者は、アスベスト使用の有無の調査結果を施主や元請業者に報告するとともに、調査結果の記録を3年間保存することが義務化された。
・工事業者は、一定規模以上の工事におけるアスベスト使用の有無の調査結果を、各都道府県の労働基準監督署へ電子システムで届け出ることが義務化された(一部例外を除く)
・元請業者だけでなく下請け業者にも規定に反した場合の罰則(直接罰)が科されるようになった
・アスベスト使用の有無の調査は、2023年10月に厚生労働大臣が定める講習を修了した者が行うことが義務化される。
アスベスト関連工事は、建物の利用者様や作業員の健康を守ることにもつながる重要な内容です。抜け漏れのないようにしっかりと対応しましょう。
私たちウラシコは東海エリアを拠点にアスベスト除去工事を承っております。目視調査からサンプル分析、封じ込め、囲い込み、撤去回収、特別特別産業廃棄物処分までワンストップで対応させていただきます。東海エリアでアスベスト除去業者をお探し中の方は、ぜひお気軽にご相談ください。