アスベストの「みなし判定」について、詳しく知りたいという方は多いのではないでしょうか?
一定の条件を満たした建物の解体や改修では、アスベストを含有しているかどうか、分析調査を行ってから、適切に進める必要があります。
しかし、分析調査を行うと時間や手間が大幅にかかるため、分析調査を省いたみなし判定を採用することが認められているのです。
とはいえ、アスベストのみなし判定について正しく理解していないと、本当に採用すべきなのかどうか、判断に迷いますよね。 そこで今回は、アスベストのみなし判定について、メリット・デメリットを含めて詳しく解説してみます。
令和4年4月1日のアスベスト関連法令の改正実施内容に関しましては、こちらのページで詳しく解説しています。解体業者の現場目線で変更点を解説していますので、ぜひご参照ください。
目次
アスベストの事前調査が必要な理由は?
アスベストは、空気中に飛散すると、呼吸によって人間の肺に入り込んで残留し、10年以上経過してから肺がん・じん肺・中皮腫などの重大な病気を引き起こします。
アスベストを含有している建物は、適切な対処なしに解体や改修を行えば、アスベストが飛散し、作業員などが吸引し、前述したような重大な病気につながる恐れがあります。
そのため、アスベストの含有の有無についてきちんと事前調査を行う必要があるのです。
アスベストの事前調査の法的な根拠や条件は?
2022年の大気汚染防止法改正により、一定の条件を満たした工事について、アスベストの含有の有無に関する事前調査が義務付けられました。
具体的には、以下のような工事です。
- 建物のの解体工事で、解体部分の延べ床面積が80㎡以上
- 建物の改修工事で、 請負金額が税込み100万円以上
- 特定の工作物の解体もしくは改修工事で、請負金額が税込み100万円以上
- 総トン数が20トン以上の船舶(鋼製)の解体もしくは改修工事
上記の工事を行う元請け業者は、適切な方法でアスベストの含有に関する事前調査を行い、調査結果を都道府県や労働基準監督署に報告する義務があります。
なお、分析調査の結果、アスベストの含有がなかった場合も同様に報告すべきなので、注意が必要です。
アスベストのみなし判定とは?従来の手法との違いは?
アスベストのみなし判定とは、建物にアスベストが含有されていると仮定した上で、分析調査を行わず、規定の除去作業や処理を進めることです。厚生労働省が正式に認めている手法であり、実際に多くのケースで採用されています。
一方、従来の手法では、建物にアスベストが含有されているかどうか、最初の段階で分析調査を行います。この調査結果を参考にし、アスベストが含まれている場所に関しては、適切な処置を行った上で解体するのです。
アスベストのみなし判定を行うメリットは分析調査が不要な点
アスベストのみなし判定を行うと、通常行われる分析調査が不要な点が最大のメリットです。
分析調査では、建物の書面調査・図面調査・現地調査を行った上で、アスベストが含有されている可能性が高い場所を特定します。
その後、建材からサンプルを採取し、偏光顕微鏡やX線回折装置などの専門機器を使用して測定するため、数日程度はかかるのが一般的です。商業施設などの大規模ビルの解体では、こうした分析調査を行うだけでも、大変な手間と時間がかかります。
その点、みなし判定を行えば、分析調査を行わなくて済むので、手間や時間の削減が可能です。
また、工期の短縮にもつながることから、特定の期日までに必ず解体・改修を終える必要がある場合などは、特に大きなメリットとなるでしょう。さらに、調査費用を削減できるのもメリットといえます。
アスベストのみなし判定にはデメリットもある
アスベストのみなし判定を行う場合、以下のようなデメリットがあることも理解しておきましょう。
事前調査結果の報告義務は必要なまま
アスベストのみなし判定を行った場合でも、事前調査結果の報告は必要になります。
これは、前述したように、2022年4月の法改正により、一定の条件を満たした工事を行う場合、アスベストの含有の有無を事前に報告することが義務付けられたからです。
事前調査結果の報告を怠った場合は、元請け業者に30万円以下の罰金が科せられるため、遅れることなく報告することが大切です。
アスベストの含有確率が低い場合はコストが高く付く
アスベストの含有確率が低い場合は、みなし判定を行うと、むしろコストや手間が高く付くことがあるので注意しましょう。
アスベストのみなし判定では、アスベストが含有されていることに加え、最も有毒なクロシドライト(青石綿)が含まれていることを想定し、慎重に工事を進めることになります。
そのため、分析調査が不要というメリットがあっても、トータルで考えると、手間やコストが高く付くことがあるのです。
たとえば、比較的新しい建物で、アスベストを含有している可能性が低い、含有している場所が一部だけであると想定される場合などは、従来の分析調査を行う手法が向いていることがあります。
間違った認識でみなし判定を行うのはリスクが高い
みなし判定を行ったほうがメリットが大きい場合もあれば、反対に、規定の分析調査を行った結果に沿ったほうがよい場合もあります。そのため、どちらを採用するかについては、慎重に判断することが必要です。
よくあるのが、分析調査が不要という点だけで、簡単で楽に解体・改修できると考えてみなし判定を採用し、結果的にコストや手間が増えてしまうケースです。
こうした失敗を防ぐためにも、みなし判定に関して正しく認識すると共に、信頼できる解体業者に現場視察を依頼した上で、よく相談して判断することをおすすめします。
まとめ
一定の条件を満たした建物の解体や改修では、大気汚染防止法によって、建物がアスベストを含有しているかどうかの事前調査結果を報告する義務があります。
このとき、アスベストのみなし判定を採用すれば、分析調査を省略できるため、分析調査にかかる手間や時間、調査費用を節約することができます。ただし、みなし判定を行っても、事前調査結果の報告義務は残るので、注意が必要です。
なお、アスベストのみなし判定と従来の手法のどちらを採用すべきかについては、費用や手間などをトータルでよく考えて判断することが大切です。まずは、信頼できる解体業者によく相談してみるとよいでしょう。
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