厚生労働省による制度見直しの動きが進んでおり、今後は職人の技能や経験に応じて退職金に差をつける「複数掛け金制度」の導入や、将来的な退職金水準の引き上げ(1000万円目標)が検討されています。
本記事では、YouTubeチャンネル「原状回復・解体工事のウラシコチャンネル」で公開された最新動画の内容をベースに、建退共の基本仕組みから今後の大改革のポイント、建設・解体業界への影響までを分かりやすく解説します。
目次
1. 建退共(建設業退職金共済制度)とは?基本のおさらい
そもそも「建退共」とはどのような制度なのでしょうか。名前を聞いたことがあっても、具体的な仕組みまで把握していないという方も少なくありません。
一般の会社員であれば企業ごとの退職金制度が存在しますが、建設業界は以下のような特有の働き方があります。
- 現場ごとに働く会社が変わるケースが多い
- 転職や出入りが頻繁にある
- 下請けや協力会社として働くケースが主流である
こうした業界特性上、1つの会社だけで退職金を積み立てる仕組みでは対応しきれません。そこで国が作ったのが、業界全体で退職金を支える「建設業退職金共済制度(建退共)」です。
会社が変わっても積み立てが引き継げる
建退共の最大の特徴は、加入している会社同士であれば、転職や現場の移動があっても退職金の積立を継続・引き継ぎできる点です。例えば、A社で5年間働き、その後B社に転職し、さらにC社に移った場合でも、建退共の加入企業であれば退職金がゼロになってしまうリスクを防ぐことができます。
現在は、職人さんが1日働くごとに会社が掛金を積み立てる仕組み(現在は1日あたり320円)をとっており、37年間コツコツと積み立て続けた場合の退職金はおよそ388万円程度となります。
💡 ポイント:「37年間働いて約400万円は少ないのでは?」と感じる方も多く、他業種との退職金水準の差が長年の課題となっていました。
2. なぜ今、建退共の見直しが行われているのか?
2025年3月に行われた建退共の運営委員会でも、建設業の退職金水準が他業界と比べて低い点が大きな課題として取り上げられました。
その背景にある最大の要因が、昨今の建設業界における深刻な人手不足と高齢化です。業界全体で高齢化が急速に進む一方で、若い新規入職者はなかなか増えない状況が続いています。
これを受け、国や業界団体は給与、福利厚生、そして今回焦点となっている「退職金・キャリア形成」といった待遇を大幅に改善し、建設業を若者から選ばれる魅力ある業界に変えていこうという動きを強めています。
こうした流れの中で、建退共は将来的に退職金額1,000万円を目指すという方向での検討を始めています。明日からすぐに1,000万円になるわけではありませんが、他業界と同等レベルの退職金水準を目指す大きな転換期に入っているのです。
3. 導入が検討されている「複数掛け金制度」とは?
では、どのようにして将来的な退職金の引き上げや魅力向上を実現するのでしょうか。その鍵を握るのが、今回新たに導入が検討されている「複数掛け金制度」です。
現在の建退共は、若手職人であってもベテラン職人であっても、基本的に一律の掛金(1日320円)で積み立てるシンプルな仕組みになっています。
しかし今後は、職人さんの技能レベル、経験年数、保有資格などに応じて掛金を変動させる仕組みが検討されています。イメージとしては以下のような階層化が想定されています。
- 見習い職人:基本の積立水準
- 一般職人:実務経験に応じた水準
- 職長クラス・ベテラン:技能や資格に見合った上位水準の掛金
頑張って技術や資格を身につけた職人ほど、将来受け取れる退職金も多くなるという仕組みです。これにより、「技術を磨くインセンティブ」が生まれ、職人のモチベーション向上にも直結することが期待されています。
4. 評価の基準となる「CCUS(建設キャリアアップシステム)」との連携
技能や経験に応じた複数掛け金を導入するにあたり、鍵を握るのが「建設キャリアアップシステム(CCUS)」との連携です。
CCUSは、建設技能者の保有資格や現場での就業履歴を客観的に記録・蓄積し、能力評価の適正化につなげるための仕組みです。レベル1からレベル4までのキャリアステージが設定されており、現場でカードを活用する取り組みが進められています。
ただし、現場からは「本当に実力が正しく評価されているのか」「会社ごとに運用や評価にばらつきがあるのではないか」といった懸念の声も挙がっています。退職金の金額がCCUSの評価に直結するとなれば、評価基準の公平性や透明性を担保することが極めて重要な課題となります。
5. 企業側(中小・解体業者)への影響と今後の対策
制度設計やルールの変更にあたっては、企業側、特に中小の建設業者や解体工事会社にとっての影響も見逃せません。
- 事務負担の増加:掛金の変動や管理体制が複雑になる可能性
- コスト面の配慮:企業が負担する掛金の見直しに伴う経営への影響
一方で、人材獲得競争が激化する現代において、処遇改善はもはや避けて通れない経営課題です。求職者、特に若い世代は「将来の保証がしっかりしているか」「福利厚生が充実しているか」を厳しく見ています。
建退共への加入や適切なキャリア評価制度の整備は、単なる義務ではなく、「従業員を大切にする優良企業である」という強力なアピール(採用力強化)につながります。逆に加入していない場合、求人市場において不利に働くリスクも高まるでしょう。
まとめ:これからの建設・解体業界に求められる姿勢
建退共制度の改革や複数掛け金制度の導入は、職人さんのモチベーション向上や業界全体の処遇改善に向けて非常に前向きな一歩です。
私たち愛知県名古屋市の解体工事専門業者「ウラシコ」でも、社員の建退共加入を積極的に推進し、職人の技術や経験が正しく評価される環境づくりに力を入れています。
現場の負担が過度に大きくならないような丁寧な制度設計を見守りつつ、業界全体で魅力ある職場環境を築いていくことが求められています。
今回の建退共改革について、皆様はどのように思われますでしょうか?ぜひYouTube動画のコメント欄やSNS等でご意見をお寄せください。

