現在、少子高齢化などの影響もあり空き家の増加が社会問題化しています。そんな空き家を所有している方の中には、解体費用が準備できる余裕がなく、悩まれている方もいると思います。
今回は、空き家解体費用が払えないときの対応策や利用できるサービスについて解説していきます。空き家解体で悩まれている方はぜひ参考にしていただけますと幸いです。
空き家解体の見積もりの様子をYouTubeでもご紹介しています。ぜひこちらも合わせてご参照ください。
目次
空き家解体の重要性
空き家は長期間手入れなどが行われず、劣化が進んでいくと、建物の屋根など飛散や倒壊などの事故につながります。建物の倒壊などの際に、近隣の方や通りがかりの方などにケガを負わせるようなことがあれば責任は全て所有者にかかってきます。
さらに不適切な状態で放置している空き家は「特定空家等」と行政から指定され、指導を受ける可能性もあります。指導で済めばいいのですが、罰則などの行政処分を受ける可能性もあるため注意が必要です。
空き家の解体費用の負担先
空き家の解体費用を負担するのは、法的には相続人となっています。故人の配偶者・子息・親・兄弟姉妹など、さまざまな人が相続人になる可能性があります。
相続する人が複数いる場合には、相続人同士で話し合って、遺産分割を行うことになりますが、土地・建物などのプラスの遺産はもちろんですが、借金や解体費用など負の遺産についても分割することになります。
遺産分割の話し合いのときに建物の解体費用の分担について話し合うこともありますが、もめた場合には法的にその負担を負うとされる相続人がその責任を負うことになります。
相続後に相続人ではない人が住む場合や、別の人に貸し出すことが決まっている場合には、その人と相談して、相続人ではない人が解体費用を負担することも考えられます。
空き家の解体費用相場
建物の造り | 1坪当たりの解体費用相場 |
木造 | 3万円~6万円 |
鉄骨造 | 4万円~7万円 |
鉄筋コンクリート造 | 6万円~9万円 |
解体費用は、家の大きさや敷地の大きさ、建物の造り(木造やRCなど)、建物の立地などで変動しますが、木造の場合は1坪当たり3万円~5万円、鉄骨造の場合は1坪当たり4万円~6万円、鉄筋コンクリート造・鉄骨鉄筋コンクリート造の場合は1坪当たり6万円~8万円となっています。
標準的な住宅(35坪の木造一軒家)を解体する場合、その費用は約200万円ほどと言われています。また、建物内に家具や遺品などが多く残っている場合には、その処分費用も加算されることになりますので、解体工事費用が高くなる傾向にあります。
空き家の解体工事費用の支払い方法
空き家の解体工事費用の主な支払い方法は、以下の2通りです。
相続した物件を売却したお金で支払う
相続した物件は、不動産業者が建物の解体費用を差し引いた価格で買い取ってくれる可能性があります。この場合、不動産業者が解体工事業者の手配などを実施することになるため、通常よりも解体工事費用が高くなる可能性もあります。
解体業者への支払いは通常複数回に分けて支払うことになりますので、土地を売却したお金で解体工事費用を支払うようにするため、解体業者や不動産業者と相談してみることをおすすめします。
解体を目的としたローンで支払う
建物の解体を目的としたローンも用意されており、解体費用のローンを組むという方法もあります。この場合、金融機関によって借り入れ限度額や借り入れの期間、金利など条件が異なり、審査基準も異なりますので、きちんと比較検討してみてください。
空き家の解体費用が払えないときの対応策とは?
空き家の解体費用が払えないときの対応策として以下の3つの方法があります。
・解体業者の見積もり内容の精査
・解体費用にローンを利用する
・各自治体の補助制度を利用する
この3つの対応策を詳しく解説していきます。
解体業者の見積もり内容の精査
まずは、解体業者の提示されている見積もりの精査を行いましょう。また、相見積もりをして相場を調べることもオススメします。
再度見直すことで、無駄な工事があったり、解体業者に頼むのではなく個人で処分が行えるものは処分を行うことで金額を安く抑えられる可能性があります。
家の中に残っているものも処分を解体業者に依頼すればその分の金額が計上されますので、金額があがるため、少しずつでも自身で処分が行えるものは処分を行い、工事範囲を少なくする努力を行いましょう。
解体費用にローンを利用する
前述した、解体工事の費用を捻出するためにローン利用すること検討しましょう。金融機関によって、利用できるローンが違いますが、「解体ローン」や「フリーローン」といったものがあります。
その他にも、土地の担保として銀行から借入を行い、解体業者へ代金を支払いその後、分割でローン返済するという形もあります。ただし、金融機関や銀行へ相談をし、無理のない返済の形を検討しましょう
各自治体の補助制度を活用する
現在、空き家の増加が社会問題となっており、空き家解体などに必要な費用を補助する制度を設けている自治体もあります。補助される金額であったり、補助に必要な条件などがあるため、補助を受けるために制度をしっかり調べておくことが重要です。
まずは空き家がある自治体に直接確認を行いましょう。ほとんどの自治体で、空き家問題を対象とした相談室を設けています。
例として、名古屋市の空き家対策のリンクを記載しておきます。
解体工事以外の方法とは?
空き家の解体費用が払えない場合に、空き家の解体工事を行わない方法もあります。
・空き家の売却を行う
・不動産会社へ買取を依頼する
・空き家バンクに登録する
空き家の売却を行う
空き家の解体を行わずに売却するという方法があります。売却には、さらに建物を残す形と残す形で売却する方法があります、それぞれご紹介していきます。
建物を残して売却
まず建物を残して、建物付の土地として売却する方法です。こちらは、解体費用もかからずに売却が行え費用対効果が非常に高いのが特徴です。
しかし、建物の状態が良くなければ買主が見つかりにくいので、過度な期待をせず、建物の状態をしっかりと考慮する必要があります。
解体して土地のみで売却
建物の解体を行い土地の売却する方法です。こちらは古い建物は解体を行い更地の状態で売却を行うため、場所が良ければ買い手が付きやすい特徴があります。
しかし、解体にかかった費用を土地の売却費用から捻出する形になるため、売却による利益は少ないです。
不動産会社へ買取を依頼する
不動産会社への買取を依頼する方法もあります。不動産会社は建物や土地の売買のプロであるため、早期に売却を行うことが可能です。
しかし、販売価格は相場より低くなる可能性が高く、売却が期待できないエリアでは買取を断られる可能性もあります。
空き家バンクに登録する
空き家バンクは自治体が運営している空き家の売却などを希望する方が登録を行うものです。登録することで、空き家を借りたいや購入したい人とのマッチングを行うことができます。
自治体の運営であるため、信頼性も高く買主がなかなか見つからない場合などには、非常に有効な方法です。こちらも、例として名古屋市の空き家バンクのリンクを記載しておきます。
空き家相続に関する諸問題
最後に、空き家の解体や想像時に発生する諸問題について解説します。大きなトラブルに発展しないように、事前に理解し、対策を講じておきましょう。
相続放棄に関して
遺産の相続に関しては、時間が問題になります。相続人は、相続権があることを知った日から3か月以内に、相続をするのか相続せず相続権を放棄するのかを決めなければなりません。
しかし、相続するかしないかを検討するためには、物件の売却や解体費用の捻出、補助金、解体費用の見積もりなど、様々なことを検討しなければなりません。そのため、建物の相続権があることが分かったら、建物を解体するかどうかの検討など、すぐに動き出す必要があります。
相続人同士のトラブル
建物の処分については、基本的には所有権を持つ方が解体すると考えられますので、決定権もその人にあります。ただし、兄弟や親類同士で所有権を分割する「共有名義」の場合、持分割合に応じて解体費用を負担することもあります。
この場合、建物の解体については相続人全員の合意が必要となりますので、一人でも反対すれば、解体することができず、相続人同士のトラブルとなってしまいます。
また、建物の解体自体には同意するが、費用負担については拒否する場合もあります。遠方に住んでいたり、付き合いが希薄だったりする場合には、費用を負担する義理もないということで、費用負担を拒否することでトラブルになることもあります。
全員が相続放棄した場合
全員が相続放棄するということも考えられます。その場合には、その時点で、空き家を管理している管理者に、次の管理人(空き家や土地の購入者、借り手)が見つかるまでの間、建物や土地の管理義務が発生します。
そのため、万一空き家が倒壊して第三者に損害が発生したり、空き家を放置することで、野生動物が棲みついたりして、近隣に損害を与えた場合には、管理者は賠償責任を負うことになりますので、注意が必要です。
相続税
空き家を相続をする場合には、相続税が発生します。相続税には基礎控除があり、その金額までは相続税はかかりません。基礎控除額は、3,000万円+(法定相続人×600万円)で算出されます。
その他、相続後に土地を売却する際には譲渡費用として譲渡所得税から控除されることもありますが、解体費用はこの控除の対象になりませんので、注意してください。
その他、亡くなった人の家を解体するときに必要な手続きと流れについては、下記記事で詳しく解説しています。ぜひこちらも合わせてご参照ください。
まとめ
空き家は、老朽化が進んでいた場合には解体するのがいいかもしれませんが、まだ建物として十分に使える場合には、そのまま居住したり、貸し出したりすることも考えられます。
また、リフォームして住んだり、貸し出したりするほうが、解体するよりも費用が抑えられることもありますので、きちんと比較して決定するようにしましょう。
解体工事では、残念ながら”悪徳業者”も数多く存在します。「壊せば終わり」と考えている業者には要注意です!こちらのページでは解体工事でよく起こるトラブルや、悪徳業者の手口、対処法、優良業者の選び方を体系的にまとめています。ぜひこちらもご覧ください。