現状では、コロナ禍で景気がひどく冷え込んでいます。店じまいに伴うオフィスの撤退などもあると思います。オフィスの撤去作業などを考えたときに、原状回復の義務についての知識が必要です。
目次
借り手には「原状回復」という義務がある
「原状回復」義務とは何か?
「原状回復」とは、賃貸物件を借りる前の状態に戻すことを義務付けているということです。この義務により、契約によって借り受けていた賃貸物件を退去する際には、借りる前の状態に戻す必要があります。
この義務の及ぶ範囲については民法の規定があり、基本的にすべて借主の負担で修繕が行われることとされています。なお、原状回復義務についての解釈は、事業用物件と住居用物件では義務の範囲の解釈が異なっています。
会社・オフィスの「原状回復」について
原状回復義務を負う借り手は、賃貸借の契約で交わした内容に従い、借りる前の状態に戻すことを求められます。
住居用物件の場合は、普通の生活を送るうえで自然発生的に生じた汚れや傷、経年劣化は貸主が修繕の義務を負うと解釈されています。一方で、事業用の場合は、借主が原状回復の義務を負います。
つまり、借りた物件は「入居した時並みにきれいにして退去してください」ということです。
借り手が負う原状回復の義務は、具体的に言うと、入居中に自分が部屋に置いたものはすべて撤去しなければならないという「収去義務」と、故意や過失による部屋の修繕費用の負担を指します。
原状回復の工事が済み次第物件の明け渡しが行われます。原状回復工事が速やかに行われない場合、工事期間中の賃料がかかることにも留意する必要があります。
賃貸物件はあくまでも「お金を払って一時的に物件を借り受けている」という状態です。したがって、お金を払っているとしても、一般的でない使用方法で物件を損耗させたり、通常の掃除など手入れを怠ったりすることは、あってはなりません。
これを、「善管注意義務」と言います。したがって、通常の手入れをしていれば防ぐことができた破損や汚れは、経年劣化や通常使用による損耗とは認められないことに注意が必要です。
入居時に払う敷金は、退去時の修繕費用としての意味合いを伴って請求されています。仮に支払った敷金を上回る修繕費用が発生したときは、貸主は賃借人に請求することが出来ます。それでは、話を少し進めて「オフィス移転時のよくある原状回復のトラブル」の事例をいくつかご紹介します。
オフィス移転時のよくある原状回復のトラブル
原状回復に関するトラブルの原因は、非常に大きく括ると「貸主と賃借人の認識の違い」が根本的な原因となっています。それでは、どういった部分に認識の違いが生まれているのでしょうか?
貸し手と借り手の不動産に対する知識と認識の違いが原因のケース
多くても数年に一度あるかどうかというのがオフィスの移転です。不動産に関する知識量について、貸し手と借り手の間に違いがある場合は認識の違いがある恐れがあるので、丁寧にすり合わせておくと安心です。
あらかじめ原状回復業者が指定されているケース
もともとの契約において原状回復の業者が指定されている場合は、業者の変更が難しので気を付ける必要があります。
合理的ではない理由によってトラブルになるケース
昼間に工事することが出来るはずなのに、夜間の工事を指定されるなどのような、明らかに不合理な理由で請求額が高額化されているケースもあります。
工事の対象や範囲が不明確なケース
工事の範囲や対象が明確に示されていないことにより、工事の必要がない部分も見積もりに含まれていてトラブルになるケースがあります。物件の「どこ」を「どれくらいの規模」で工事するのか事前に明確にしていなかったためにトラブルが発生することがあります。
原状回復のトラブルに関する記事をこちらのページでご紹介しております。こちらも合わせてご参照下さい。
業者の選び方の重要ポイント
見積もりの分かりやすさと対応の速さと丁寧さ
物件の明け渡しは原状回復の工事が済んでからとなっています。つまり、工事期間中にも賃料が発生します。「早く」見積もりに対応してくれて「わかりやすい」「丁寧な」対応をしてくれる業者は、選択肢として非常に有力です。
目安としては、お客様ファーストで、見積もりの対応が早くて丁寧で分かりやすい業者は、信頼関係を結びやすいです。丁寧さは、依頼主のみに対する丁寧さではなく近隣に対してもマナーを守れるような気持のよい対応ができる業者を選ぶと良いです。
原状回復に関連した作業を一手に引き受けてくれるか
原状回復工事と一口に言っても、貸し手との交渉、入居後の不具合への対応、退去の立ち合い代行など、その内容は多岐にわたります。一連の内容を一手に引き受けてくれる業者であれば、心強いことこの上なしです。
また、一社で済ますことが出来れば複数の業者による中間マージンがその都度加算されていくこともなく、費用の高額化を避けることが出来ます。
業者の得意分野
原状回復が必要となる物件は、多岐にわたります。飲食店、テナントビル、賃貸マンション、アパートなどありとあらゆる種類があります。テナントビルからの退去時であれば、テナントビルの退去に強い業者を選ぶとよいです。
また、「入居した時並みにきれいにして退去してください」という考え方からすれば、工事の際の清掃にも強い業者を選ぶと良いです。
知識・経験のような実績が豊富な業者
料金の安さも大切ですが、一にも二にも実績や経験が豊富な業者を選ぶことをお勧めします。経験値を積んでいる業者はサービス内容が充実している場合が多いので、一度の依頼で料金に見合ったサービスを受けることが出来る可能性が高まります。
相場と比較した適正価格
原状回復工事の『工事費用』は、気になるポイントだと思います。適正価格というのは、業者側のサービス内容と依頼者側の価値感覚のバランスが取れている状態ですので、ニーズが違えば適正料金と言われているものでも適正料金とは言えなくなります。
複数の見積もりを取ることで相場観を仕入れることが出来ます。多くの業者で行なっている無料見積りサービスは、依頼しようと思っている業者のサービス内容とホームページに記載されている内容を確認する絶好のタイミングです。
見積もり代金が高すぎると感じた方は、少しでも安くする方法をこちらの記事で詳しく解説しています。こちらも合わせてご参照下さい。
まとめ
原状回復は、法律上の義務でもありますが、貸し手と次の借り手の方々に気持ちよく物件を使っていただくために大切な工事です。業者選びのポイントで重要な「分かりやすさ」「迅速さ」「丁寧さ」を意識して、後悔しない業者選びをしましょう。
また、解体業者の選び方に関しましては、こちらの記事一覧ページにてまとめております。こちらも合わせてご参照ください。