今回は廃業や閉店、規模縮小のための移転などを決断した場合にしなければいけないことを説明していきます。工事の前段階でどのような書類の提出が必要なのか、どのような作業が必要なのかについても見ていきましょう。
廃業の際の流れとしては、個人名義か法人名義かで手続きが変わってきます。飲食店特有の手続きに加えて、法人の場合は更に追加で手続きが必要です。そんな個人事業主と法人が追加で行わなければならない手続きについて、手続きの流れを解説します。
飲食店の原状回復費用相場についてはこちらのページで詳しく解説しています。ぜひこちらも合わせてご参照ください。
個人事業主(個人名義)の場合
個人名義の場合には、以下のような手続きが必要となります。順番などは特に縛りはありませんが、期日が決まっているものも多くありますので、提出期限に間に合うように手続きを進めていきましょう。
各種書類の作成、提出
飲食店の場合には、食品を取り扱っていることもあり多くのところに申請をしなければなりません。具体的には税務署、都道府県税事務所、保健所、消防署、警察署、労働基準監督署、公共職業安定所(ハローワーク)です。
金融機関と相談(借入金がある場合)
金融機関からの借入金がある場合には、金融機関と返済期限などの返済スケジュールを確認などをする必要があります。
店舗の解約通知、造作売却手続き
廃業の際には、所有物件以外の場合には賃貸借だと思いますので、物件の明け渡し日の決定や、賃貸借契約解約のために管理会社や仲介業者などに解約通知を行う必要があります。解約通知期間は賃貸借契約書に記載がありますので、期日をきちんと確認の上、解約通知を行うようにしましょう。
原状回復工事
所有物件以外の場合には、明け渡しの際に原状回復義務があります。原状回復工事には内装解体工事とスケルトン工事の2種類があります。
必要な工事に関しては賃貸借契約に記載の内容を参照する必要がありますが、オーナーや管理会社から特別な要望などの指示がある場合にはこの限りではありません。
造作売却の場合にも必要となる工事が異なりますので確認が必要です。詳細に関しては以下の記事をご参照ください
リース契約解除(精算)、返却
飲食店の場合、大型冷蔵庫等の厨房機器はリースの場合も多いかと思います。基本的に、返却の前に連絡が必要な場合には遅滞なく連絡する必要がありますし、返却までに清掃などをしなければならない場合が多いです。
また、工事の前に機器を搬出しなければならないかと思いますので、工事のスケジュールを考える際にも必要になってきます。
従業員の解雇(解雇の30日以上前)
廃業に伴い、従業員を解雇する必要が出てきます。従業員の解雇は、解雇日の30日以上前に通知しなければなりません。「解雇予告通知」として書面で30 日以上前に通知するのが一般的です。
30 日に満たない日数で解雇する場合には、不足する日数分の平均賃金を「解雇予告手当」として支払う必要があります。
取引先への連絡
飲食店を経営していくうえで、少なからず取引をしている業者があるかと思います。例えば酒屋、問屋、清掃業者など様々な取引先が考えられます。
この様な取引先には前もって連絡をしておいたほうがいいでしょう。その店でしか取り放っていない商品もあるかもしれません。最後まで良いビジネス相手として取引していきましょう。
ライフライン(水道、電気、ガス、インターネットなど)の解約
水道、電気、ガス、インターネットなど経営に欠かせないライフラインに関してです。何日前までにといった規制は無いかもしれませんが、特にガスなどは立ち合いが必要な場合もありますので事前に連絡しておけば確実です。
店舗保険の解約
店舗によっては火災保険などの保険に入っている場合もあるでしょう。これも出来るだけ早く解約の手続きをしましょう。契約によっては、何日前までに通知をしなければならないなどの規定があるかもしれません。しっかりと確認した上で、相談なり通知なりを行っていきましょう。
個人経営の飲食店を例として、廃業届提出からテナント退去までの流れを解説してきました。ここからは法人名義の場合に発生する追加の手続きについて解説していきます。
個人事業主(法人名義)
法人名義の場合は、先程述べた手続きに加えて下記の手続きが必要になります。法人の種類によって申請書が異なる事もおりますので、自分がどの法人名義なのかをしっかりと確認した上で手続きを進めていきましょう。
登記(解散、清算)
- 解散⋯法人登記の抹消あるいは法人格の消滅のための手続き
- 精算⋯清算人による、債権回収、債務返済、残った財産の分配のための手続き
※解散日から2 週間以内に、解散、清算人の登記を行い、精算決了後2週間以内に精算完了登記を行う必要があります。
※各登記の様式は法務省HPより取得できます。ただし、法人により提出書類が異なるため注意が必要です。
各法人における申請書の種類
株式会社の場合
- 「株式会社解散及び清算人選任登記申請書」(清算人の人故で申請書が異なる)
- 「株式会社清算決了登記申請書」
特例有限会社の場合
- 「特例有限会社解散及び清算人選任登記申請書」
- 「特例有限会社清算決了登記申請書」
持株会社(「合同会社」「合資会社」「合名会社」)の場合
- 「持株会社解散及び清算人選任登記申請書」
- 「持株会社清算決了登記申請書」
※株式会社、合同会社は債権者に対する公告として2か月以上官報に解散広告を出さなければならないとされています。(会社法449条、660条)
※合名会社、合資会社は解散日から2週間以内に官報へ解散広告を1か月以上出さなければならないとされています。(会社法670条) また、債権者へ個別の公告も必要となりますので注意が必要です。
※その他、「解散確定公告」(解散から2か月內に提出)、「精算確定申告」(残余財産確定日から 1か月以内(残余財産が確定した事業年度)に提出)も必要となりますので、しっかりと確認しましょう。
各種必要書類
先程で述べたように、必要に応じて各種機関に申告書を提出したり、許可証を返納したりする必要があります。ここでは各機関ごとに、何を提出(返納)するのかを見ていきましょう。
保健所
- 「廃業届」提出期限:10日以内
※様式は各保健所で異なりますので、各保健所のホームベージなどで確認してください。また、電子手続きが可能な場合もあります。
※保健所には、「飲食店営業許可書」(原本)の返納も必要です。もし、原本を紛失している場合には、所語の保健所に相談してください。
消防署
- 「防火管理者選任(解任)届出書」提出期限:特になし
※様式は消防署で取得することができますので、所轄の消防署にお問い合わせください。
※「廃業日」が「解任日」とされていますので、注意してください。
警察署
- 「深夜酒類提供飲食店営業開始届出書」
- 「返納理由書」(「風俗営業許可証」の返納と一緒に)提出期限:10日以內
※開業(開店)の際に、許可申請や開始届を出している場合のみ対応が必要です。
※「返納理由書」の提出と一緒に、「風俗営業許可証」を返納する必要があります。
※返還を怠たった場合には、「30万円以下の罰金」などの罰則の可能性があります。
公共職業安定所(ハローワーク)
雇用保険加入の場合
- 「雇用保険適用事業所廃止届」
- 「雇用保険被保険者資格失届」
- 「雇用保険被保険者離職証明書」
提出期限:全て10日以内
※雇用保険被保険者離職証明書は3枚複写式の専用用紙で、窓口で取得するか郵送を依頼するかどちらかの方法で入手します。その他届出書はハローワークのホームページからPDF形式でダワンロードすることが可能です。
1か月以内に30人以上を解雇する場合
- 「再就職援助計画」提出期限:最初の離職者が発生する1か月前まで
- 「大量雇用変動届」握出期限:最後の離職者が発生する少なくとも1か月前まで
※どちらか一方の提出が必要です。「再就職援助計画」は雇用主が従業員に対して行い再就職活動の援助などの責務を果たせるようにするための申請。「大量雇用変動届」は、職業安定機関などが、迅速に雇用変動に対応するための申請です。
日本年金機構(年金事務所)
- 「雇用保険適用事業所廃止届の事業主控え」のコビー
- 「健康保険.厚生年金保険適用事業所全届」どちらも提出期限:5日以内
労働基準監督署
- 「労働保険確定保険料申告書」提出期限:廃業の事実があった日から50日以内
※雇用保険、労災保険のいずれかの労働保険に加入している場合に提出が必要です。
※所轄の労働基準監督署、都道府県労働局、日本銀行などで申告することができます。
※厚生労働省から発送される申告書が見当たらない場合には、所轄の労働基準監督署に再発行を依頼してください。
税務署(都道府県税事務所)
- 「個人事業の開業届け出・廃業等届出書」提出期限:1か月以內
- 「所得税の青色申告の取りやめ届出書」(※青色申告をしている場合のみ)提出期限:青色申告を止める年の翌年の3月15日まで
- 「事業廃止届」(消費税の課税事業者である場合や課税事業者を選択している場合)提出期限:事業廃止の事実が発生してから速やかに
- 「給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書」(従業員などに給与を支給している場合)提出期限:1か月以內
- 「所得税及び復興特別所得税の予定納税額の減額申請書」(所得税を予定納税している場合)提出期限:該当する年の7月1日〜15日(第1期、第2期分),該当する年の11月1日〜15日(第2期分のみ)
- 「各都道府県税事務所への廃業の届け出」提出期限:各都道府県により異なる
廃業届提出からテナント退去までのステップ
個人事業主(個人名義)の場合
- ①各種書類の作成、提出(後述する各機関提出のための書類作成)
- ②金融機関と相談(借入金がある場合)
- ③店舗の解約通知、造作売却手続き
- ④原状回復工事
- ⑤リース契約解除(精算)、返却
- ⑥従業員の解雇(解雇の30日以上前)
- ⑦取引先への連絡
- ⑧ライフライン(水道、電気、ガス、インターネットなど)の解約
- ⑨店舗保険の解約
更に、個人事業主(法人名義)の場合
-
登記(解散、清算)
株式会社の場合
「株式会社解散及び清算人選任登記申請書」(清算人の人故で申請書が異なる)
「株式会社清算決了登記申請書」
特例有限会社の場合
「特例有限会社解散及び清算人選任登記申請書」
「特例有限会社清算決了登記申請書」
持株会社(「合同会社」「合資会社」「合名会社」)の場合
「持株会社解散及び清算人選任登記申請書」
「持株会社清算決了登記申請書」 -
各種機関に申告書を提出(個人事業主も同様)
保健所
「廃業届」提出期限:10日以内
消防署
「防火管理者選任(解任)届出書」提出期限:特になし
警察署
「深夜酒類提供飲食店営業開始届出書」
「返納理由書」(「風俗営業許可証」の返納と一緒に)提出期限:10日以內
公共職業安定所:
雇用保険加入の場合
「雇用保険適用事業所廃止届」提出期限:10日以內
「雇用保険被保険者資格失届」提出期限:10日以內
「雇用保険被保険者離職証明書」提出期限:10日以內
1か月以内に30人以上を解雇する場合
「再就職援助計画」提出期限:最初の離職者が発生する1か月前まで
「大量雇用変動届」握出期限:最後の離職者が発生する少なくとも1か月前まで
日本年金機構(年金事務所):
「雇用保険適用事業所廃止届の事業主控え」のコビー
「健康保険.厚生年金保険適用事業所全届」どちらも提出期限:5日以内
労働基準監督署
「労働保険確定保険料申告書」提出期限:廃業の事実があった日から50日以内
税務署(都道府県税事務所):
「個人事業の開業届け出・廃業等届出書」提出期限:1か月以內
「所得税の青色申告の取りやめ届出書」(※青色申告をしている場合のみ)提出期限:青色申告を止める年の翌年の3月15日まで
「事業廃止届」(消費税の課税事業者である場合や課税事業者を選択している場合)提出期限:事業廃止の事実が発生してから速やかに
「給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書」(従業員などに給与を支給している場合)提出期限:1か月以內
「所得税及び復興特別所得税の予定納税額の減額申請書」(所得税を予定納税している場合)提出期限:該当する年の7月1日〜15日(第1期、第2期分),該当する年の11月1日〜15日(第2期分のみ)
「各都道府県税事務所への廃業の届け出」提出期限:各都道府県により異なる
まとめ
以上、廃業時に必要な書類を挙げてきました。結構な量があり、期限もバラバラである為全てを把握しておくのは大変です。
カレンダーにまとめてみたり、紙に書き出してみたりして、抜け漏れが無いようにしっかりと整理して期内に逃切な手続きをすることが出来る様にしていきましょう。
不備があった際には再提出となりますが、再提出も含めた期限になっているものもありますので、早め早めに行動していきましょう。もし、期限までに出来ない場合には、罰金や追徴課税などになる場合もありますので、注意してください。
時間の制約など諸般の事情で各機関を訪問できないことも考えられますので、ホームベージなどから入手できるものは、活用していくのかいいかと思います。
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原状回復工事の依頼から完了までの一連の流れは、こちらのページで詳しく解説しています。ぜひこちらも合わせてご参照ください。