「引っ越しを考えているんだけど、原状回復ってどこまですればいいんだろう」
「原状回復の特約って賃貸契約書のどの部分に記載されているいのかわからない」
このように、物件を退去する際に、原状回復の範囲や原状回復特約について、どこを見ればいいかわからないと悩んでいる方は、多いのではないでしょうか。この記事では、原状回復範囲が記載されている賃貸借契約書について詳しく解説していきます。
借主が負担する原状回復の範囲は、国土交通省のガイドラインによってある程度定められています。しかし、原状回復の特約が賃貸借契約書に記載されている場合、基本的に特約に内容に従わなければなりません。
目次
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賃貸契約書で原状回復の範囲が記載されている部分とは?
賃貸契約書は、専門用語が並んでいて全てを読むのが面倒だと感じてしまう方も多いのではないでしょうか。しかし、原状回復に関する事項は、極めて重要なので必ず目を通しておきましょう。
原状回復に関する事項が記載されているのは「明け渡し時の原状回復」などと明記されている部分になります(少し違った表現の場合もあります)
原状回復の特約については、契約書によって記載内容が少し変わりますが、一般的に別紙または枠で囲まれた別の表に記載されていることが多いです。「明け渡し時の原状回復」と「原状回復の特約事項」の2つは、必ず確認しておきましょう。
「明け渡し時の原状回復」
国交省の賃貸契約書雛形より抜粋
「原状回復の条件」
国交省の賃貸契約書雛形より抜粋
原状回復の特約
国交省の賃貸契約書雛形より抜粋
賃貸契約書に記載される主な原状回復の項目
賃貸契約書に記載される原状回復に関わる主な事項は以下3つです。
- 明渡し時の原状回復
- 契約中の原状回復
- 原状回復の特約
しっかりと違いを押さえておきましょう。
明渡し時の原状回復
明渡し時の原状回復とは、退去時に行わなければならない原状回復のことです。基本的に、借主は国土交通省が定めている原状回復ガイドラインに沿って、原状回復を行います。
そのため、借主が原状回復の義務を負うのは「借主が故意・過失・注意義務違反によって起こった破損や損耗」と「通常使用を超える使用によって起こった損耗と毀損」です。
以下、借主の負担範囲の具体例となります。
- 引っ越し作業でついたクロスや床の傷
- ペットによってつけられた傷や汚れ
- タバコの臭いやヤニ汚れ
- 結露の放置でできたフローリングや壁のカビ
※上記以外にも様々ありますが、よくある例を抜粋しています。
上記以外の「通常使用や経年変化で起こる損耗や劣化」は、貸主負担とされています。後述する特約等で特別に指定していない限り、「通常使用や経年変化で起こる損耗や劣化」は借主が負担する必要はありません。
ただし、店舗やオフィスなど事業用物件の場合は、不特定多数の人が利用することから、基本的に「通常損耗」や「経年劣化」であっても借主が費用を負担します。
契約中の原状回復
契約中の原状回復は、契約中に起こった設備の破損や故障、自然災害による建物の破損や故障などです。空調や水道などの故障や破損が該当します。
基本的に契約中の原状回復は貸主が負担します。ただし、破損や故障に気づいていながら貸主に報告せず、長い間放置して状況が悪化してしまうと、借主が負担することになってしまうので注意してください。
また、例外として、真夏に空調が壊れる、真冬に暖房が壊れるなどの緊急時は、命に関わる問題なので借主が修理業者を決めていいことになっています。貸主の対応が遅い場合などは、貸主に一報を入れた上で業者を手配をしましょう。
原状回復の特約
一番気をつけなければならないのが、原状回復の特約事項です。特約は、基本的に貸主側の意向を汲むものとなっており、借主に不利な内容が多いため、しっかりと確認しなければなりません。
確認不足によって契約を結んでしまうと、退去時に後悔することになってしまうので、注意深く確認しましょう。さらに詳しく解説して参ります。
原状回復の特約に頻繁に記載されている内容
これから紹介する特約の項目は、よくある項目でありながら、借主が不利になっている場合が多いので注意が必要です。
- 通常損耗や経年変化による原状回復は借主負担とする
- エアコンのクリーニング費用は借主負担とする
- 畳の替えの費用は借主負担とする
- 障子や襖などの張り替え費用は借主負担とする
- 次の入居者のための鍵交換費用は借主負担とする
上記はあくまでも一例です。上記以外にも法律的に認められる特約と認められない特約があるので、全てを呑み込む必要はありません。特約の内容で不審な箇所がある場合は、貸主に説明を求めましょう。貸主の説明で、納得のいく理由がない場合は交渉しましょう。
特約に納得できない場合はどうするべきか?
最後に、特約に納得できない場合はどのように対処したら良いのか、解説します。基本的に原状回復の特約が認められるには、以下3つの条件を満たす必要があります。
- 特約の内容が明確に明記されており、必要性が客観的・合理的にあり、借主に対して暴利的ではない
- 借主が特約によって定められた通常の原状回復義務を超えた範囲の原状回復を負うことを理解している
- 借主が特約の義務を負う意思を明確に表明している
上記の3つのポイントを満たしていない場合、特約は有効となりません。
要約すると、貸主側は借主に対して、契約時に原状回復の特約について説明する義務があり、借主が納得しなければ無効になります。
また、内容の明記もポイントになります。例えば「室内クリーニング費用は貸主負担とする」という記載があった場合、「どの部分のクリーニングなのか」や「明確な金額」がないため、無効となる可能性が高いです。
【契約前】特約に納得できない箇所がある場合
契約時に原状回復の特約に納得できない場合は、交渉して特約を無くしてもらうか、相談の場を設け、原状回復の内容を細部まで取り決めましょう。
貸主、借主双方が納得できない契約の場合、いずれトラブルに発展します。最終的に契約自体を結ばないという選択肢もありえます。
【契約後】特約に納得できない箇所がある場合
一方、契約後に特約の不利に気づいた場合は、自力で解決することは難しいです。まずは正直に貸主に事情を説明し相談しましょう。貸主サイドもスムーズな退去を望んでいるため、相談に乗ってくれるでしょう。
万が一、相談に乗ってくれない、一方的に拒否されるなどの場合は、専門機関や弁護士などの第三者を交えて、特約を無効にしてもらう必要があります。万が一トラブルが起きてしまった際の相談先はこちらの記事でまとめています。こちらも合わせてご参照ください。
まとめ
この記事では、貸主が負担する原状回復の範囲から、原状回復範囲が記載されている賃貸借契約書の部分を詳しく解説してきました。この記事の重要ポイントは以下です。
- 賃貸契約書には、「明け渡し時の原状回復」などと原状回復に関する事項が明記されている
- 原状回復の特約は契約書の別紙や枠で囲まれた別の表に記載されることが一般的
- 原状回復の特約は、借主が特約の義務を認識しており特約の内容が明確かつ客観的にみて合理的である必要がある
原状回復の特約は基本的に借主が不利になる内容が多いです。退去時に後悔しない・トラブルに発展させないためにも、契約時にしっかりと確認しておくことが重要です。上記のポイントを参考にして、原状回復の特約で損をしないようにしましょう。
また、原状回復費用や施工事例についてはこちらのページで詳しく解説しています。これから退去に臨まれる方は、ぜひこちらも合わせてご参照ください。