解体工事でよく使われる「積替保管」という言葉をご存でしょうか。多くの人にとってはなじみのない言葉だと思います。今回は、この積替保管について説明します。
解体工事に関する基礎用語はこちらのカテゴリー一覧にもまとめております。これだけは覚えておきたい!という用語をまとめておりますので、ぜひこちらもご参照ください。
積替保管(つみかえほかん)とは?
積替保管とは、排出事業場(解体現場など)から契約している産業廃棄物処分場までの運搬工程の中で、廃棄物を車両から下ろして、一時保管したり別の車両へ積み替えたりすることです。
産業廃棄物を運搬する場合、通常だと現場から処分場へ直行しますが、トラックを満載している場合でも、トラックの4分の1しか積載していない場合でも、運搬にかかる手間は変わりません。
そのため、少量しか積載していない場合には運搬効率が悪くなってしまいます。そこで、活用されるのが、積替保管です。
積替保管のメリット
積替保管を行うことにはどのようなメリットがあるのか紹介していきます。
運搬効率の向上
まずはなんといっても、運搬効率の向上が見込めます。一度に大量の荷物を運ぶことができますので、同じ重量の荷物を往復して運んだり複数台に分けて運搬するよりも運搬効率は上がります。
コストを抑えることができる
産業廃棄物を運搬する回数が減るということは、それにかかる人件費や燃料代を減らすことができるということにもなります。削減できたコストで別の必要な作業などに充てることができるようになりますし、その分を依頼主に還元する(費用の減額を行う)ことができます。
環境にやさしい
運搬する回数が減るということは、それだけ燃料の消費を抑えることができるということですので、余分なエネルギー消費をすることがなくなり、排気ガスの削減にもつながります。結果的に環境に配慮した取り組みをしていることにつながります。
混合産業廃棄物を手作業で選別できる
解体現場などから排出された産業廃棄物は、建設リサイクル法で分別して処分しなければならないと定められています。解体現場で分別を行って処分場に持参する方法もありますが、廃棄物が少量であるなどの場合には、別々で運搬するよりも、すべてを積替保管施設に持参し、そこで分別したほうが効率がいいこともあります。
また、廃棄物の中にも有価物として扱うことができるものもあります。このような場合でも、積替保管の許可を保有していれば、手作業での分別作業を行うことができます。ただし、機械で分別を行う場合には、中間処理業(中間処理)という別の許可が必要になりますので、注意が必要です。
大量に集めることで、有価物として売却できるものを収集できる
廃油や釘などの鉄くずは、少量であれば廃棄物として処分することになりますが、まとまった量集めることができれば、有価物として買い取り対象になります。
積替保管のデメリット
責任の所在があいまいになる
積替保管を行わない場合、解体現場などの産業廃棄物が排出された場所から、収集運搬会社や解体工事の請負会社が産業廃棄物を収集して、処分場へ運搬することになります。
一方で、積替保管を行う場合は、収集した産業廃棄物をいったん積替保管施設へ持ち込み、積替え・保管、場合によっては選別を行い、最終の処分場まで運搬することになります。
このように、いったん処分場以外の場所へ運搬し、保管するというプロセスを経ることにより、委託契約をしなければならない会社が増えるだけでなく、その責任の所在があやふやになる可能性が高くなります。
積替保管に使用される保管施設の要件
積替保管に使用される保管施設に求められる要件を説明していきます。なお、以下で紹介するものは、産業廃棄物処理法施行令で定められています。
自治体によっては建設前に住民説明会を開催し近隣住民の理解を得る必要があったり、大前提として、積替保管を行うための許可を取得することなど、様々な要件が課されます。詳しくは各都道府県などの窓口や各HPで確認してください。
保管施設の周囲に囲いが設置されていること
外部からの第三者の侵入を防ぐために設置が必要です。原則として高さ3m程の鋼板またはブロック構造が求められています。
掲示板を設置すること
保管施設の外部から見やすい場所に、一定の大きさ以上の掲示板を設置する必要があります。そこには、廃棄物の保管施設であること、保管している廃棄物の種類などを掲示しておく必要があります。
保管施設の敷地内に常駐可能な管理事務所があること
施設の管理業務や廃材の受け入れなどの処理を行う人が必要です。
飛散、流出、地下浸透等の防止対策がなされた場所で適切な容器を用いていること
近隣の迷惑や土壌汚染などが起こらないように十分な対策を講じたうえで、保管する場所を設定する必要があります。
※保管することができる量については、当該保管の場所における一日当たりの平均的な搬出量の7日分が上限として定められており、これを超えて保管することは禁止されています。
積替保管の注意点
実際に積替保管を利用する場合の注意点について説明します。
積替保管には許可が必要
積替保管は、収集運搬業の許可条件の一つになっています。そのため、許可がないと行うことができません。細かいところでいうと、収集運搬業の許可証に「積替え、保管を含む」という表現があればいいということになります。この表現がある許可証を保有している会社が積替保管を行うことができる会社と見分ける判断材料になります。
産業廃棄物が最終処分されるまでが排出事業者の責任
産業廃棄物が最終的に処分されるまで、その産業廃棄物の処分に関する責任は、排出事業者が負うことになります。
ここでいう排出事業者とは、廃棄を依頼した事業者のことになりますが、建物の解体工事などで排出された産業廃棄物の場合には、工事を請け負った会社や工事を依頼した施主が排出事業者となりうることに注意が必要です。
そのため、産業廃棄物の処分が適切に行われず、不法投棄などされてしまった場合には、最悪の場合施主が責任を負担しなければならないことになりますので、十分注意してください。
すべての会社と委託契約が必要
積替保管を行う場合、排出事業者から積替保管施設まで運ぶ収集運搬会社と、積替保管施設から処理場へと運ぶ収集運搬業者が同じとは限りません。廃棄物処理法により、関係するすべての収集運搬業者と委託契約を締結しなければなりません。
その際、どの会社がどこからどこまでの運搬をになっているのかを明確にし、契約書内の「運搬の最終目的地」をきちんと記載する必要があります。
マニフェストの種類が異なる
積替保管を行う場合のマニフェストは、積替保管を行わない場合の7枚複写ではなく8枚複写になっており、積替保管施設への運搬終了時に収集運搬業者から返送してもらう書類が追加されていますので、注意が必要です。
各自治体の裁量が大きい
積替保管をはじめとする産業廃棄物の許認可については、各自治体の裁量権が大きく、自治体によって積替保管施設の設備要件や必要な措置などが変わっていきます。
そのため、A県では問題なかった行為が、B県では許可されていないという場合も考えられますので、事前の確認が必要です。
まとめ
今回は、産業廃棄物の処分費用を抑えることができる方法として、積替保管を紹介しました。積替保管はコスト削減に役立つというメリットはありますが、責任の所在があやふやになるというデメリットもあります。安易に積替保管を行うのではなく、しっかりと考えて行う必要があります。
信頼できる解体業者の選び方は、こちらの記事でも詳しく解説しています。こちらも合わせてご参照ください。