今回はややこしくて複雑ですが、重要な内容が詰まっている原状回復ガイドラインについてわかりやすく解説します!原状回復は、賃貸住宅や店舗、事務所を退去する際に避けては通れない義務です。
貸した側と借りた側のどちらが負担するかの原状回復の範囲を知らないと、借りた側が、貸した側に言われるがままに、原状回復の全てを負担することになってしまう可能性があります。
目次
原状回復のガイドラインとは?
ではまずは「原状回復のガイドライン」について簡単に説明します。原状回復ガイドラインの基本定義は以下になります。
①通常の使用による損耗や経年劣化は賃借人(ちんしゃくにん)負担としない
②故意・過失・注意義務違反による汚れや傷、破損は賃借人(ちんしゃくにん)負担とする
③通常の使用を超える使用の損耗や毀損は賃借人(ちんしゃくにん)負担とする
この3つ定義を基に原状回復の範囲やどちらが負担するのかを考える必要があります。
原状回復ガイドラインで重要なポイント
では、原状回復ガイドラインで重要なポイントを解説して参ります!原状回復ガイドラインの原文は非常に長く複雑なので、「ここだけ押さえればOK」というポイントを8つにまとめました!
①普通に暮らす中で発生した汚れ・キズなどの負担
②建物の構造が引き起こす劣化と損耗の負担
③次の入居者のための準備の負担
④不注意によって付いた汚れ・キズなどの負担
⑤居住の経過年数と原状回復の負担割合
⑥賃貸借契約書の特約事項に関して
⑦トラブルを未然に防ぐ物件のチェック
⑧冷暖房や水道、雨漏りなどの故障について
それでは、ひとつひとつ詳しく解説していきます。
①普通に暮らす中で発生した汚れ・キズなどの負担:貸主負担
普通に暮らす中で発生した汚れ・キズなどの負担、これは「貸主負担」です!借手が普通に暮らしていて発生した汚れやキズなどは貸主の負担になります。例えば、
・家具の設置による床の凹み
・テレビ・冷蔵庫などの電気ヤケ
・直射日光による床や壁の変色
・ポスターなどを貼った画鋲やピンの跡
・設備機器の寿命による故障
ガイドラインでは、賃貸借契約書の特約事項がない限り、上記のような場合は借主が原状回復費用を負担する必要が無いとしています。
②建物の構造が引き起こす劣化と損耗の負担:貸主負担
建物の構造が引き起こす劣化と損耗の負担、これは「貸主負担」です!
建物の構造上の問題で起こった、畳や壁の変色、床材の変色、雨漏り、ガラスの亀裂などは、基本的に経年劣化とみなされ、貸主の負担となります。
ただし、雨漏りやガラスの亀裂などは、分かった段階で直ぐに伝える必要があります。長い期間放置して、悪化してしまうと借主負担となる場合があるので注意してください。
③次の入居者のための準備の負担:貸主負担
次の入居者のための準備の負担は「貸主負担」です!
これは、
・鍵や網戸、畳などの交換
・部屋や内装のハウスクリーニング
・エアコン内部の洗浄
などです。これらは、次の入居者に長く住んでもらうための原状回復となるため、貸主がおこないます。
ただし鍵は紛失や破損がある場合、借手側の負担となるので注意してください。
④不注意によって付いた汚れ・キズなどの負担:借主負担
不注意によって付いた汚れ・キズなどの負担は「借主負担」です借手の不注意によって付いた汚れやキズは借手自身が原状回復の費用を負担しなければなりません。
・食べ物や飲み物をこぼして付いたシミ
・引越し作業やその他運搬で付いたキズ
・油汚れやスス、結露の放置によるカビやシミ
・タバコによるヤニ汚れや臭い
・落書きなどによる壁紙の汚れ
・ペットがつけたキズや臭い
・水回りの水垢やカビ
これらは、借手の故意・過失によって起こるものと指定されています。
⑤居住の経過年数と原状回復の負担割合
ここからは、負担区分ではなく、ガイドラインの中で、特に重要な記述を解説してまいります。では、居住の経過年数と原状回復の負担割合についてです。
原状回復ガイドラインでは、経年変化・通常損耗の修繕費用は賃借人(ちんしゃくにん)、つまり借りた側が支払う賃料の中に含まれていると明記しています。
そのため、退去する際に借りた側が経年変化と通常損耗分の修繕費用を支払うと、賃料と原状回復費用で二重に支払うことになってしまいます。
この二重支払いを防ぐために、原状回復ガイドラインでは、入居年数が長いほど、経年劣化と通常損耗の負担割合を減らす方針を立てています。
⑥賃貸借契約書の特約事項に関して
つづいて、賃貸借契約書の特約事項に関してです。
貸主(かしぬし)と借りた側が合意の上で決めた「特約」は、原状回復ガイドラインよりも強い効力を持ちます。基本的に原状回復の特約には、従わなければならないということです。
しかし、あまりにも理不尽な内容である場合は、裁判所に認められないこともあります。以下3つの要件が守られている時に特約が有効となります。
・客観的にみて特約の必要性や理不尽でないことが認められ、特約の合理的理由がある
・賃借人(ちんしゃくにん)が特約で決められた通常の原状回復義務を超えた修繕義務を負うことを理解している
・賃借人(ちんしゃくにん)が特約の負担義務に同意している
上記3つ全てについてクリアしている場合において、原状回復の特約が認められるようになっています。理不尽な特約をつけられないように、3つの要件を覚えておきましょう。
⑦トラブルを未然に防ぐための入退去時の物件のチェック
つづいて、トラブルを未然に防ぐ物件のチェックについて解説します。
賃貸契約期間が長い場合、特に損耗について、オーナーと入居者との間でトラブルが起きやすいです。「記憶」だけだと証拠がなくトラブルが悪化しやすい原因になります。
トラブルを防ぐには、オーナーや管理会社は、損耗・毀損のチェックリストを作成して入居時に入居者と一緒に確認するといいでしょう。
また、一方、入居者は、入居時に損耗・毀損がある部分の写真を撮っておくなどして、証拠を残すことが重要です。スマホで撮影すると日付が残せるためよりおすすめです。
⑧冷暖房や水道、雨漏りなどの故障について
最後は、冷暖房や水道、雨漏りなどの故障について、です。
冷暖房や水道、雨漏りなどの故障のメンテナンスについては、基本的にオーナー側が負担します。しかし、オーナーや管理会社にメンテナンスや交換の依頼をしても直ぐに対処してもらえない場合があります。
以前は、冷暖房や水道、雨漏りなどのメンテナンスに関して、入居者がメンテナンスの業者を手配した場合は、入居者が費用を負担するとなっていました。
しかし、2020年4月の原状回復ガイドラインの改正で、入居者がメンテナンス業者を手配しても費用がオーナー側負担となりました。
緊急性がある場合は、入居者の判断で業者を手配していいということですね。ただし、トラブルを生まないためにもまずは、オーナーや管理会社に一報を入れることを忘れないようようにしましょう。
最後に
以上、今回は原状回復ガイドラインについて解説しました。詳しい変更点や専門的なポイントは私達のホームページにてご紹介しています。
事業者目線の専門的な説明がたくさんありますので、ぜひご参照ください。
原状回復ガイドラインの取り決めは、入居者が不利にならないように作られた重要なものです。上記のポイントを参考にして、原状回復義務の範囲を理解し、理不尽な原状回復費用の負担を防ぎましょう。
それではまた!ありがとうございました。