建物の解体作業現場では、シートに覆われた形で工事をしているのをよく見かけます。このシートは『養生シート』と呼ばれるもの。
普段何気なしに見かける養生シートですが、実はとっても大切な役割があります。養生シートをせず解体作業をしていると、トラブルやクレームの原因にもなりかねません。
この記事では養生シートがどういうものなのか、わかりやすく説明します。養生シートの役割や種類について知っておくと、解体作業をお願いするときも便利ですよ。
目次
解体作業に使う養生シートとは?
養生シートとは、解体作業現場で使われているシートです。建物全体を養生シートで覆い、周辺トラブルやクレームを最低限に抑制するために使われています。建物を解体するときに考えられるトラブルやクレームは以下です。
- 騒音
- 粉塵
- 安全性
周辺にはさまざまな人が生活をしています。養生シートは周辺の方に配慮するためにも必要な道具です。
ただし厳密には解体工事で養生シートのしようが義務付けられているわけではありません。養生シートを使っていないからといって違法ではないことも知っておきましょう。
こちらの記事は養生について基礎用語を解説をしておりますので、合わせてご参照ください。
養生シートにはどんな役割がある?
具体的に養生シートにはどんな役割があるのか見ていきましょう。先ほど説明したトラブルやクレームの原因となるものが、養生シートを使うことで緩和されます。
周囲への騒音を緩和させる
解体作業でもっとも多いトラブルが騒音です。とくに住宅地はさまざまな方が生活しているため、騒音には細心の注意を払う必要があります。そこで有効なのが養生シートです。
解体作業では建物を取り壊す音や重機の音で、想像以上の騒音が発生します。これらを少しでも抑制するために養生シートが使われます。養生シートは防音や遮音性に優れたものがあり、解体作業現場でもいちばん多く使われているのはそのためです。
粉塵(ふんじん)の飛散にブレーキをかける
解体作業現場では、粉塵の飛散も重大な課題です。建物を取り壊すときは、どうしても破片やほこりなどが周囲に飛び散ってしまいます。このような粉塵の飛散は、さまざまなトラブルを起こしかねません。
- 洗濯物に粉塵が付着する
- 建物の外壁が変色する
- 通行人が粉塵を吸い込んで体調を崩す
これらのトラブルを避けるためにも必要なのが養生シートです。養生シートは建物全体を囲うため、破片やほこりなどの粉塵を周辺に広がるのを最低限に抑えます。
ただし養生シートだけでは、粉塵の飛散が完全になくなるわけではありません。作業中に水を巻きながら解体すると飛散距離も短くなるため、優秀な解体業者は散水と合わせながら解体しています。粉塵はとても細かいため、いかに飛散距離を短くするかが焦点です。
資材の降下防止にも期待できる
安全面でも養生シートはとても有効です。解体現場では最悪の事態も考えて仕事をしなければいけません。
- 工具や資材が落ちる
- 作業員の転落
- 建物の崩壊
これらは養生シートを活用することで、危険を緩和できるメリットがあります。工具や資材の降下は、万が一通行人がいた際はケガをさせてしまう原因に。命の危険性もある解体現場では、養生シートを使うことで危険を押さえる効力があります。
また、養生シート以外で、もし工事へのクレームが発生してしまった際の対処法はこちらに詳しく解説されております。ぜひ合わせてご参照ください。
養生シートは解体現場でも数種類使い分けられている
養生シートは、解体現場や環境によって使い分けられています。その種類は大きくわけて3つ。それぞれ特徴があるため、どんな養生シートを使っているか確認してみましょう。
防音シート
解体現場でいちばん使われているのが防音シートです。防音シートは遮音シートとも呼ばれており、現場で音を緩和させるために使われています。防音シートは重いものほど防音の効力が高いのが特徴。そのため厚みがあり密度が高いものは、防音がより期待できます。
住宅地の解体作業は防音シートを使うことが多く、近隣住民の生活を守っています。防音シートは表面に『防音シート』『遮音シート』と書かれていることが多いため、素人でもわかりやすいようになっているのが特徴です。
また防音シートよりも防音に優れているといわれているのが防音パネル。防音パネルはおもにビルの解体作業で使われます。防音シートよりも密度が高いため、コンクリートといった大きな音が出やすい場所向きです。
防炎シート
養生シートには火に強い防炎シートを使うこともあります。防炎シートは住宅地で使われることが少なく、おもにビルやマンションの解体作業で使われるもの。
ビルやマンションは鉄筋コンクリートを使っており、金属を切断するときは電気を使って切断します。このとき火花が飛散すると周辺に着火する可能性があるため、火災の防止として使用されます。
防炎シートは800℃まで熱に耐えられるものもあり、素材もポリエステルや塩化ビニールなどさまざまです。
メッシュシート
養生シートの中でも珍しいのがメッシュシートです。メッシュシートは防音シートや防災シートと役割が少し異なります。おもに使われる場所は、風が強い海辺や山。メッシュ素材になっているため、強風が吹いても風を通し大きな影響を受けず労働できます。
一般的な解体作業で使うことはほとんどありませんが、台風の時期はメッシュシートを使って建物を囲うことも。ものによっては防炎機能が備わっているものもあるようです。
まとめ
養生シートは解体作業を安全に行うだけでなく、周辺への配慮も考えたもの。養生シートを使っていないからといって違法ではありませんが、近隣のトラブルを避けるためには欠かせないものです。
養生シートを使うか否かというだけでも信頼できる解体業者かわかるほどなので、建物や周辺の環境によって使い分けているかチェックしてみましょう。
また養生シートの他にも信頼できる解体業者の見分け方がありますので、こちらも合わせてご参照ください。