2024/11/21
アスベスト含有建物解体での近隣説明はどうすればいい?具体的な説明例と注意点を解説します
かつてアスベストは「奇跡の鉱物」建築材料として広く使用されており、人体に有害であることがわかり、現在では有害物質として厳しく規制されています。しかしながら、規制前に建設された建物にはいまだにアスベストが利用されている部分が残っている場合があり、解体工事の際にアスベスト除去工事を実施しなければならないケースも多いです。
アスベスト関連の工事は、健康と環境に深刻な影響を及ぼす可能性がありますので、工事前には近隣の方へきちんと説明して工事を開始する必要があります。今回は、アスベスト含有建物の解体工事の前に実施する近隣説明に関して説明していきます。
目次
アスベスト含有建物の解体工事前に実施する近隣説明
近隣説明とは、建物の解体工事を実施する前に実施する周辺の周知のことです。工事期間や工事内容、作業時間などを周知することになります。
工事現場に看板などを設置する周知は、業者に義務付けられていますので、必ず実施されていますが、自宅のポストに工事に関する詳細が書かれたお知らせが投函されていたことがある方もいると思います。これが近隣説明に当たるものです。説明資料の配布や戸別訪問による説明、説明会の開催など様々な方法で近隣説明が実施されます。
この近隣説明については、一部条例で定めている地域を除き、法的義務は発生せず実施しなくても良いとされているものですが、工事開始後のクレームやトラブルを回避するために実施されているものになります。
近隣説明で説明する内容
近隣説明で伝えなければならない内容としては、以下のようなことがあります。
・工事の概要(工事期間、解体方法、作業時間、作業内容など)
・騒音、振動、粉じんなどへの防止対策
・工事車両の通行経路や資材、廃材等の搬出経路
・周辺への安全対策
・アスベストの使用状況及び使用されている場合の除去方法
特に住宅地などで近隣に個人の住宅が多い場合には、アスベストの健康被害以外にも、騒音・振動などの影響があることを事前に伝えておく必要があります。
また、アスベストに関する工事に対する漠然とした恐怖であまり肯定的に受け入れられない可能性もありますので、アスベスト含有の古い建物を放置せず、適切に解体することが、長い目で見ればその土地に住む人にとっては好ましいことであることを併せて伝えるようにしましょう。
トラブルなく工事を完了させられるように、こちらから積極的に情報を開示していく姿勢が重要です。また、ご挨拶に持参する手土産は一般的に1000円程度だと言われていますが、地域のしきたりなどもありますので、業者に相談してみるのが良いでしょう。
工事期間の過ごし方も添える
近隣説明の際に、工事に関する連絡だけでなく、工事期間に発生する制約についても触れておくとなお親切です。
例えば、以下のような普段の生活にどのような影響を及ぼす可能性があるのか、どのような対策を実施すればいいのかを加えて挙げるとより良いでしょう。
・解体工事期間中は砂や塵、ほこりなどが飛散する可能性が高くなるため、外に洗濯物を干すのは控えたほうが良い。また、解体業者にシートを貸し出してもらい車やバイクを保護することもできるため、あらかじめ連絡してほしい。
・どのような対策を実施しているためにアスベストは飛散せず、衣類に付着する可能性はない
・工事開始後には騒音や振動などが発生し、日常生活に多少なりとも支障をきたす恐れがあるため、何か事情があって控えてほしいタイミングがあれば連絡してほしい
近隣の範囲
近隣説明といっても、どの範囲が近隣になるのかと思う方も多いと思います。近隣説明の範囲は、向かいの3軒、裏の3軒、両隣を目安にしてください。特に裏のお宅は忘れられがちですが、工事の影響は裏の家が受けやすいため、忘れずに実施が必要です。
一般的に近隣説明は、解体業者が代行して実施することがほとんどですが、特に普段からお付き合いがある家などには、業者の挨拶の前に口頭ででも、「工事があるのでよろしくお願いします」と声をかけておくことで、周囲の方の理解も得やすいだけでなく、施工業者も訪問営業などと間違われることがなくなります。
また、先回りしてトラブルの際は業者に連絡してもらえるよう伝えておくことで、対応を業者に任せることができ、当事者同士が感情的になりすぎてトラブルがこじれることを避けることもできます。
アスベストの危険性
アスベスト含有建物であるから直ちに危険というわけではありません。アスベストが飛散し、それを肺に吸い込まなければ人体への被害はないため、建材に使用されていたとしてもそれが板状に固めてあるボードである場合や、天井裏・壁の内部にある吹付け石綿があったとしても露出していない場合は飛散のリスクは低いです。
ただし、建物が老朽化して崩壊したときや、建物を解体し、取り壊す時にはアスベストが飛散する恐れがありますので、専門の業者による適切な処理が求められます。正しく処分しなかったことで飛散してしまった場合、作業者だけでなく、近隣の住民や通行人など多くの人々の健康を害する可能性があります。
アスベスト除去工事
アスベスト含有建物の工事を実施するにあたり、いくつかの方法がありますので、簡単に紹介していきます。
除去工法(リムーバル工法)
除去工法とは、アスベストが使用されている建築材すべてを除去し、非アスベストの建築材と入れ替える工法です。除去後のアスベスト管理の必要がなく、飛散性の高いアスベストの処理としては一番安全な処理方法です。しかし、工事の際には厳格な安全管理の下で作業を行う必要があり、他の2つに比べて作業費用は高くなり、作業時間も長くなります。
封じ込め工法(エンカプスレーション工法)
封じ込め工法とは、建物内に存在するアスベストに溶剤を吹きかけ固定することで、アスベストが飛散しないように封じ込める工法です。溶剤を吹きかけて固めるだけであるため、作業時間が短く、費用も除去に比べると安く済みますが、アスベストを完全に除去できるわけではありません。
囲い込み工法(カバーリング工法)
囲い込み工法とは、アスベストが露出している部分をそのままに、板状の材料など非アスベスト材をその外側から取り付けてアスベストを完全に密封し飛散を防ぐ工法です。天井や梁にアスベストが使われている場合に、室内へのアスベストの飛散を防ぐために使用されることが多いです。
しかし、天井が今までよりも低くなったり、他の構造にも手を加える必要が生じる可能性があり、アスベストを取り除くわけではないため、作業後の定期的な点検も必要になります。
アスベスト含有建物の解体工事での近隣説明についてまとめ
今回はアスベスト含有建物の解体工事の前に実施する近隣説明に関して紹介してきました。冒頭でも述べましたが、アスベストは人体に有害な物質であり、取り扱いを誤ると数年後、数十年後に大病を患うことになりますので、アスベスト含有建物の解体工事をご検討中の方は、アスベスト解体の経験が豊富な解体業者に依頼することが大切です。
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