2023/05/08
太陽光発電(太陽光パネル)の積立義務化とは?廃棄費用はどう変わる?解体工事業者が解説します
太陽光発電を導入しようと考えている方は、少し調べると、積立が義務化されたことが出てくると思います。今回は、積立制度とはなんなのか、廃棄するときの費用はどうなるのかを説明していきます。
また、こちらのページでは実際に弊社が作成している見積書を掲載しています。チェックポイントも合わせてご紹介していますので、ぜひこちらも合わせてご参照ください。
目次
廃棄等費用積立制度とは
廃棄等費用積立制度とは、太陽光発電設備を廃棄する際の撤去費用などに充てるために、買取金額から一定分を積立することを定めたものです。
資源エネルギー庁が2021年に「太陽光発電設備の廃棄費用等積立制度について」という発表を行い、2022年4月に再エネ特措法(再生可能エネルギー電気の利用の促進に関する特別措置法)が改正され、2022年7月から法律により積立てが義務化されました(改正再エネ特措法第15条の6第2項)。
この記事ではこの制度の具体的な内容について説明していきます。
廃棄等費用積立制度制定の背景
廃棄等費用の積立が制度化(義務化)された背景には、以下のような背景があります。
社会問題化対策
FIT制度(再生可能エネルギーの固定価格買取制度)が適用される20年間は、電力の買取価格が固定されているため安定した収益が見込めますが、FIT制度が終了すると買取価格が低下して利益が出にくくなるため、太陽光発電から撤退することが考えられます。
FIT制度は2012年7月から導入されているため、2032年~2035年頃にこの制度の満了を迎える事業者が急増すると考えられ、メンテナンスが十分でない太陽光発電所が全国に点在してしまうという問題が発生することが考えられます。
この時、太陽光発電所設備を撤去する費用を発電事業者が捻出できない場合、深刻な問題に発展するため、政府は発電事業者に廃棄費用の積立を義務化しました。
低い積立実施率
そもそもFIT制度では、廃棄費用を想定した買取価格を算定しており、売電収入の一部を将来のために積み立てることを期待していましたが、実施率は低いままでした。
これを受け、2018年4月に資源エネルギー庁により発行された「事業計画策定ガイドライン(太陽光発電)」により、事業計画策定時には廃棄等費用の算定額とその積立計画を記載することを求め(改正再エネ特措法第9条第2項第7号)、廃棄等費用の積立てを遵守事項としました。
しかし、積み立てを開始する時期などは事業者に任せられていたため、ほとんどの事業者が積立を行っておらず、2019年1月末時点でも低い水準のままでした。
このような現状を受け、適切な廃棄費用を将来的に確保できない業者が増える可能性があると判断され、制度化に至りました。
積立て対象事業者範囲
ガイドラインによれば積立制度の対象となるのは、次の①~③の事業者です。
①再生可能エネルギー電気の利用の調達に関する特別措置法施行規則に基づいて、10kW以上の発電を行う事業計画のFIT認定の申請を行う事業者
②10kW以上の事業計画のFIT認定を受けて発電を行っている事業者や発電所(認定事業者)
③事業者や発電所と特定契約を締結し買取を行う事業者(買取義務者)
したがって、容量10kW未満の事業用太陽光発電事業者や家庭用太陽光発電設備を設置している家庭などは積立制度の対象外となります。
積立てを実施する期間
積み立て開始時期は、交付又は調達期間が終了する日から起算して10年前の日が令和4(2022)年7月1日より前か後かで変わります。
原則(改正再エネ特措法施行規則第13条の4第2号)
積立開始 ⇒ 交付又は調達期間終了日から起算して10年前の日以降の、最初の検針日(※)から
積立終了 ⇒ 調達期間終了日
例外(改正再エネ特措法施行規則第13条の4第1号)
積立開始 ⇒ 2022年7月1日以降、最初の検針日から
積立終了 ⇒ 調達期間終了日
2012 年6月30日以前に運転を開始した事業者(発電所)がこの場合に該当します。
※検針日
改正再エネ特措法施行規則第25条で定める期間ごとに行われる検針や、その他これに類する行為のこと。
積立て方法・金額
積立て金額は、外部積立てか内部積立てかによって異なりますので、それぞれの場合を説明します。
外部積立て
積立は、原則として推進機関に源泉徴収的な形で外部積立て(売電収入から廃棄費用分が引かれる形式)で積み立てることになります。積立ての頻度は、買取が行われる月1回です。
積立金額は、「積立基準額」×「売電量」で算出され、「積立基準額」は改正再エネ特措法第15条の7第1項によって定められていますが、FIT認定年度や入札区分、容量によって変動します。
2012年に認定を受けた事業者の場合には、積立基準額は1kWhあたり1.62円です。
2017年~2019年は入札によって積立基準額が変動する形になっており、2017年であれば入札対象外の事業者の場合は1kWhあたり0.99円、第1回入札に参加した事業者の場合は、1kWhあたり0.81円になります。
2020からは売電量が50kWh以上になるかどうかによって積立基準額が変動する形になっており、2023年に認定された(される)事業者の積立基準額は、売電量が10kWh以上50kWh未満の場合には、1kWhあたり1.33円、売電量が50kWh以上の場合には1kWhあたり0.64円となります。
内部積立て
内部積立は下記の5つの要件を満たす場合に可能です。
①50kW以上の高圧発電設備であること
②事業計画に記載される事業者が発電事業者本人であること
③積立基準額よりも高い金額の積立を行い、それを公表すること
④積立金額を定期的に公表すること
⑤金融機関や会計士などのチェックを定期的に受けること
積立ては逐一行い、年1回の定期報告で、積立て状況を報告することになっています。
また、積立金額は、2012年に認定を受けた場合、1kWあたり1.7万円、2023年の場合には1kWあたり1.0万円になっています。
まとめ
今回は、太陽光発電設備の廃棄等費⽤積⽴制度について説明してきました。各家庭で必要になるものではなく、事業者が対象になりますので、きちんとした計画を立てて、積み立てるようにしてください。
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