2021/08/27
退去時の原状回復指定業者は変更できる?原状回復専門業者がわかりやすく解説します
これまで、飲食店やオフィスなどの退去の際には「原状回復工事」が必要であることは説明してきました。さらに、業者の選定方法や注意点などもご紹介してきましたが、実のところ業者の選定を行わなくても良い(業者を指定できない)場合も存在しています。
今回は、指定業者が存在している場合の変更の可能性を見ていきます。結論からお話ししますと、原状回復工事の指定業者の変更は基本的にはできません。しかし、場合によっては可能(条件あり)ですが、可能性はかなり低いでしょう。では、なぜこうなるのか説明していきます。
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目次
なぜ原状回復の「指定業者」は変更できないのか
そもそも、「指定業者」とはなんなのでしょうか。賃貸借契約書では、原状回復義務や工事の範囲について書かれていることはご存知の方が多いかと思いますが、実はその他にも工事業者の指定について明記されている場合があります。
ここで指定されている業者を「指定業者」と呼んでいます。物件の貸主(オーナーや管理会社)の立場からすると、自分の所有物である物件の工事をよくわからないところに依頼するよりも、長く付き合いがある信頼のおける業者にやってもらった方が安心できますし、要望通りに仕上げてもらえます。
そうすることで、物件の価値を維持することができます。原状回復工事はただ壊せば良いという簡単なものではありません。原状回復工事は、内装の撤去から、床の補修工事、各種機器の取り外し、看板の撤去などさまざまなことを行わなければならず、専門の業者が存在するほど専門性が必要な工事の一つです。
もし、別のところに発注して望み通りの工事にならなかった場合は最悪自己負担で再工事しなければなりません。そうなるのを防ぐためにも、貸主(オーナーや管理会社)が工事業者を指定したい理由になっています。
本当に原状回復の「指定業者」は変更できない?
原状回復工事の業者を貸主側(オーナーや管理会社)が指定する理由はお分かりいただけたかと思います。しかし、原状回復工事などは頻繁にやっているわけではなく、相場もどれくらいのものかわからないのが普通だと思います。
本当に適正な価格で見積もりが提示されているのか心配になると思います。費用を負担する側からすると、本当に信頼できる業者が出した適正価格なのか確かめたいという気持ちも生じてくると思います。
実際に、他の会社に見積もりを取ってみれば、相場はなんとなくではありますが掴めてくると思いますし、安心できる材料になるのではないでしょうか。どうしても信用できない場合には、貸主側(オーナーや管理会社)と相談して、指定業者を変更してもらえるように交渉することもできます。
一般的に、不動産賃貸契約書に指定業者の指定が明記してあれば、変更は極めて難しいですが、そうでない場合には、解体業者を選定できる可能性がありますので、貸主側と交渉してみても良いかと思います。あくまでも交渉ですので、実現するかどうかは分かりませんが、話してみる価値はあると思います。
原状回復の指定業者を変更できなくてもやるべきこと
指定業者を変更できなくても原状回復費用を抑えることができるかもしれません。諦めずに以下の3つに取り組んで原状回復費用を抑えましょう。
・原状回復工事の見積もりの確認
工事の前に指定業者から、工事の見積もりが発行されるはずです。その時に、工事の内訳がわからない場合にはきちんと内訳を示してもらうようにしましょう。費用を負担する側としては、どの項目にどれくらいの費用がかかるものか把握しておくのが良いかと思います。
また、明らかに不明瞭な項目がある場合や、明らかに高額な項目がある場合には、なぜそうなっているのか確認した方がいいでしょう。多くはないですが、水増し請求や架空請求の可能性もありますので、注意してください。
また、あとからの追加請求が発生しないように、あらかじめ工事項目はこちらの要望を実現できるのかどうかも確認しておく必要があります。
・不用品の撤去は自分で行う
工事の前までに使えなくなった不用品を自分で処分できそうであれば、多少お金がかかっても自分で処分する方が良いです。
大型の家具や厨房機器など処分するのが大変なものもあるかと思いますが、これらを解体業者に処分してもらうと産業廃棄物扱いとなり、処分までに中継企業を挟むことになり、結果的に自分で処分した方が安いということになることも考えられます。
また、まだ使えるけど使わないようなものは、リサイクルショップに買い取ってもらったり、友人知人で必要な人に譲ったりすることで多少は工事費用の足しになるでしょう。
状態が良ければ、意外な金額になることも考えられますし、処分することなく使い回すことでエコにもつながります。
原状回復の指定業者を変更できる時に気をつけること
他の記事でも紹介している部分もありますが、再度業者選定や見積もりの際に注意すべき点3つを整理しておきましょう。
・工事の範囲を明確にしておく
業者選定などの前に、まずは貸主(オーナーや管理会社)と原状回復工事の範囲について打ち合わせしましょう。
基本的には不動産賃貸契約書に記載があれば、それに従って行いますが、次の入居者との兼ね合いや貸主側との交渉次第で一部造作物(空調や電気設備など)については、そのままにしておいても良い可能性があります。
そのため、勝手に工事範囲を決めてしまわずに貸主側に確認するようにしましょう。勝手に進めてしまい、追加工事が発生したりするトラブルを避けるためにも重要です。
・業者選定は迅速かつ慎重に
ほとんどの方が原状回復工事の期間や相場について詳しくないと思います。見積もりを提示してもらい、工事内容や適正価格など十分に確認せずに依頼するのは危険です。
もし、工事内容に必要な工事が含まれていなければ、追加で発注しなければなりませんし、提示された見積もりが相場よりかなり高い場合も考えられます。一方で、安ければ良いということでもありません。
必要な工事が含まれていなかったり、廃棄物の処理代金を別途請求されたり、不法投棄をしていたりと不穏な安い理由があります。もし不法投棄を行っていた場合、工事の依頼者が罰せられるという最悪なケースも考えられますので慎重に選定してください。
また、退去日は決まっていますので退去までのスケジュールはきっちりと立てましょう。原状回復は特に行程が多い作業です。最低でも半年から3ヶ月程度の期間を要するとされています。
・見積もりは可能な限り現地でやってもらう
一部の業者では、電話口で口頭確認だけで見積もりをしてくれるようなところもあります。しかし、実際に見てみないと見えてこない部分もあります。
天井が思ったより高かった、配線が複雑で工事に時間がかかる、解体することによって残しておかなければならない造作に影響を与えてしまうかもしれない、建物の外に搬出用のトラックを止めるスペースがないなど、それぞれのケースによって固有の事情が生じてくるはずです。
そのようなこと度外視で見積もりをしてしまうと、結果的に追加費用が発生する可能性が高くなります。可能であれば、貸主側も立ち合いのもと、見積もりを行ってもらいましょう。そうすれば、工事範囲を間違う可能性も低減できます。
まとめ
原状回復工事における指定業者の変更は原則できないと思っていいでしょう。ただし、不動産賃貸契約書に業者の指定が明記されていない場合や、明記があっても貸主側(オーナーや管理会社)との交渉で、自分で選定した業者に依頼することができます。
また、どちらの場合でも、見積もりの詳細を確認すること、自分でできることは自分でやる、工事の範囲は不動産賃貸契約書を確認したり、貸主側と打ち合わせしたりして明確にしておくなど注意すべきポイントがいくつかありますので、しっかりと確認した上で進めていってください。
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