2022/11/08
近年の解体コストの値上がりの理由を徹底解説!ウッドショック?ガソリン高騰?アスベスト?業者目線で解説します
ロシアのウクライナ侵攻の影響で原油価格などが高騰したことにより、物価高が止まらない状況になっていますが、その影響は解体工事においても出てきています。今回は、解体コストが値上がりしている理由を解説していきます。
また、令和4年4月1日のアスベスト関連法令の改正実施内容に関しましては、こちらのページで詳しく解説しています。解体業者の現場目線で変更点を解説していますので、ぜひご参照ください。
解体費用の内訳
解体費用を変動させる要素はいくつかあり、一般的に以下に示すものがあります。
・建物の立地
・構造
・埋設物の有無
・作業時間
・整地の方法
・付帯工事(庭木やブロック塀の撤去など)
・アスベスト除去工事の必要性の有無
・産業廃棄物の処分費用
・人件費
・各種申請費用
・雑費(ガソリン代など)
↓↓↓
・トラックや重機を利用するためのスペースがない
・特殊な工法で建設されている
・浄化槽などの埋設物の撤去を行う必要がある
・1日の作業時間の制約が厳しい
・解体した後別の用途で使用するため通常とは異なる整地の方法が必要
・庭木や庭石の撤去やブロック塀の撤去など付帯工事が多い
などの要因があると価格は変動してきますが、これは通常期でも起こりうることであり、時流によって変わるというものではありません。
今回は、近年の法改正や世界情勢によって価格が上昇しているアスベスト工事、産業廃棄物の処分費用、人件費、各種申請費用、雑費に関して紹介していきます。
解体コストの高騰
冒頭で、ロシアのウクライナ侵攻による影響について言及しましたが、実は解体コストはそれ以前から年々値上がりしています。そしてこれからもしばらくの間は値上がりし続け、これ以上下がることはないと言われています。
ここ数年で解体費用が高騰し続けている要因としては、産業廃棄物処分費用の高騰と人件費の高騰が挙げられます。
産業廃棄物処分費用の高騰
中国が資源ごみの輸入を停止したことや、台風や地震などの自然災害で発生した廃材の増大、それらに伴う日本国内の産業廃棄物の最終処分場の不足が大きく影響しています。
海外から廃プラスチックや古紙、木材チップなどの資源ごみを輸入していた中国が2017年5月に世界貿易機関(WTO)に対して資源ごみの輸入の段階的停止を通告しました。
これにより輸出されるはずの資源ごみを国内で処分しなければならなくなり、国内の処分場の処理キャパシティを圧迫し始め、処分費用が約2倍にまで高騰し、その高騰した処分コストがそのまま解体費用に転嫁され、結果として解体費用が値上がりしてしまっています。
また、近年では2011年の東日本大震災や2016年の熊本地震、2018年の西日本豪雨などをはじめとした自然災害が多く発生しています。
これらの影響で、使い物にならなくなった建物や損壊した道路、土砂崩れなどで流れ出した土砂など処分しなければならなくなった廃材が増えたことも、日本国内の廃棄物処分場を圧迫する要因となっています。
処分場を新設して処分場の不足を解消するという方法もありますが、処分場を新設する際に建設予定地の周辺住民の理解が得られなかったり、処分場で働く労働力の確保ができなかったりと、なかなか対策が進まないという状況になっています。
人件費の高騰
解体コストの高騰には、人件費の高騰も大きく影響しています。建設や解体の業界で人手不足が解消されていないことは以前からの課題として挙げられていましたが、新型コロナウイルスの影響や働き方改革、外国人技能実習生の受入れが進んでいないことなどの影響もあり、人材の確保がさらに困難になっています。
人材を確保するため今まで以上のコストが必要になり、結果的に解体費用が高くなってしまうという状態になっています。
また、法改正により分別解体が義務付けられたことで、分別にかかる時間が増え、作業時間が以前よりも長くなっていたり、処分場まで運搬した廃棄物を降ろすまでに何時間も待たされることで、通常であれば2往復できたトラックが1往復しかできず、結果的に人件費が余計にかかったりしてしまうという悪循環に陥っています。
アスベスト関連法の改正
アスベスト規制
連日のように石綿(アスベスト)による健康被害が大きく取り上げられた時期もありましたが、現在ではアスベストの危険性が広く周知され、アスベストによる健康被害も少なくなっていますが、アスベストが使用された建物がなくなっているわけではありません。
2006年以前に建設され、アスベスト除去工事などが行われずに現在まで残っている建物に関しては、今も建物のどこかで石綿(アスベスト)が使用されている可能性があります。
このように、アスベストが使用されている建物の解体工事に当たる際には、解体でアスベストを周囲に飛散させないことや作業者自身が大量に吸い込んで、体内に蓄積することを防止しなければなりません。
この他、アスベストに関する対策を義務化した法律がいくつかあります。中でも、2021年から順次改正法が施行されている大気汚染防止法が注目されています。
改正大気汚染防止法
2021年4月から順次施行されていますが、アスベスト関連の工事を行う作業者はもちろん、周辺に住んでいる方の保護を行うことを目的とした内容が盛り込まれています。
2021年4月からは、規制対象がレベル3建材にまで拡大され、アスベストが少しでも含まれている建材を使用した建物の解体・改造・補修作業を行う際には、アスベスト飛散防止対策を行うこと、事前に都道府県等に届出を行うことが義務付けられました。
また、作業後の安全確認や工事現場において周知のための掲示義務、工事前の事前調査の義務化などもこの時期から開始されました。
こうすることで、アスベスト調査費用がかかるだけでなく、各種申請にかかる費用も毎回発生するようになりました。
さらに、2022年4月からはアスベスト調査(事前調査)の内容を各都道府県などに提出することが義務付けられ、2023年10月からは事前調査を行うことができるのは、一定の資格を有している人に限定されるということになります。
このように、解体工事を行う前の事前調査の義務化やアスベスト調査の有資格化により、解体工事業者の負担は増加しています。
原油価格高騰
ガソリン価格の高騰
新型コロナウイルスやロシアのウクライナ侵攻の影響で、原油価格の高騰が続いており、日本でもガソリン代の高騰や電気料金の値上がりが嘆かれていますが、この影響は解体工事費用にも影響を与えています。
解体工事の際には、工事の規模にもよりますが重機やトラック、発電機を使用することになります。これらを動かすためには、ガソリンや軽油が必要になりますので、原油価格が高騰すれば、原油から精油されるガソリンや経由の価格も高騰することになります。
また、ガソリンの価格高騰に関しては、新型コロナウイルスの蔓延で日本国内の自家用車を使用する機会が増加しガソリンの需要が増加したことも要因として考えられます。
原油価格高騰のわけ
なぜ原油価格が高騰しているのかというと、新型コロナウイルスによって落ち込んだ需要が世界的に回復してきていること、需要の増大に対応するだけの余力が産油国に残っていないこと、産油国であるロシアのからの供給が減少することへの危機感が関係しています。
新型コロナウイルスで減少した需要に対応するだけの体制しか整っていなかった産油国で増大した需要に対応できず、供給が追い付いていないことで、価格の高騰が起こっています。
また、ロシアのウクライナに対して各国が経済制裁を行っていますが、この制裁に対抗する形で一大産油国であるロシアが原油の供給停止や縮小を行うことで、原油不足が起こってしまうため、そうならないよう原油のストックを持とうとする各国の危機感も需要の増加につながっていると考えられます。
おわりに
解体コストの高騰には、原油価格の高騰や産業廃棄物の最終処分場の不足など、複雑な問題が多くあります。自然災害の増加や世界情勢の変化などの影響が、様々な形で我々の生活に影響してきています。状況が好転することを祈るばかりです。
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2024年の空き家の解体費用の相場は、以下の記事で詳しく解説しています。ぜひこちらも合わせてご確認ください。
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