2024/11/16
2025年の建築基準法改正で【解体業】の何が変わる?業者自らが現場目線で影響を考察します
2022年6月に「脱炭素社会の実現に資するための建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律等の一部を改正する法律」が制定され、2025年4月からの施工される予定ですが、それに伴い、建築基準法も改正されます。今回は、この改正で変更される点と解体業に与える影響について説明していきます。
目次
建築基準法改正が解体業に与える影響
建物の大規模な修繕・模様替えを行う場合の建築確認申請
建物の大規模な修繕・模様替えを行う場合には、建築確認申請が必要になります。
「大規模な修繕」とは、経年劣化した壁や柱、床、はり、屋根又は階段(主要構造部)のうち一種類以上を対象に、既存のものと概ね同じ位置に概ね同じ材料、形状、寸法のものを用いて半分以上原状回復を図ることです。
また、「大規模な模様替え」とは、壁や柱、床、はり、屋根又は階段(主要構造部)のうち一種類以上を対象に、建築物の構造、規模、機能の同一性を損なわない範囲で改造することです。一般的に改修工事などで原状回復を目的とせずに性能の向上を図ることを指します。
対象となる工事
解体工事でいうと、「スケルトン工事」や「内装解体工事」のうち、壁や柱、床、はり、屋根又は階段のいずれかを半分以上解体する場合には、上記でいうところの「大規模な修繕」に該当することになり、事前の建築確認申請が必要になります。
建築確認申請とは
建築確認申請とは、新築、大規模改修・増改築を行なう際に、着工前に実施する申請のことで、設計内容を確認検査機関や特定行政庁へ申請して確認を受け、建築基準法をはじめとする法令に適合していることを証明するための手続きのことを指します。
建築確認申請は違反建築物を排除することが目的であり、その建物に住む人やその周辺に住む人の安全や生命を守るために必要な手続きですので、申請が通らないと法的に適合した設計・構造であることが認められず、着工することができません。
申請には、以下のものが必要となります。
・確認申請書(建築物):設計主や建築地の住所、用途地域や建蔽率などを記載した申請書
・委任状:設計事務所や施工会社等が代理で行うために必要
・公図:土地の区画や配置を表す地図(法務局で入手可能)
・建築計画概要書:内容は確認申請書と同じだが、のちに一般公開される書類
・工事届:建築主の種別や工事の種別、主要用途などを記載した書類
・案内図:建築物の所在が分かる地図(グーグルマップなどでも可)
・配置図:敷地の形状と、その敷地に建物がどのように配置されているかを示す図面
・求積図:敷地と建物の面積を算出するのに必要な図
・平面図:建物の平面図に仕様などを書き込んだもの
・シックハウス計算表:ホルムアルデヒドの使用面積や室内を喚起する回数など記載した書類
・構造関係規定等の図書:詳細未定
・省エネ関連の図書:詳細未定
※太字は2025年の改正で追加提出が必要になる書類
建築基準法改正の主なポイント
今回の改正の主な目的は、エネルギー消費の約3割を占める建築分野における「省エネ促進」と木材需要の約4割を占める建築分野での「木材利用促進」です。これは、2030年の温室効果ガス46%削減、2050年のカーボンニュートラル社会を実現させるための施策として期待されています。
四号特例の縮小(建築確認審査の対象となる建築物の規模の見直し)
今回の改正で建築業界で最も話題となっているのが「四号特例の縮小」です。
これまで、2階建て以下で延床面積が500㎡以下の木造住宅など一定の条件をクリアする建物については、建築確認申請において構造に関する審査が省略されていました(四号特例)が、今回の改正以降、木造2階建住宅や平屋建て(建築面積200㎡以上)においても、構造規定や省エネ基準の適合性が審査されることになります。
また、屋根や外壁、階段や間取りなどの構造や外観に関わる部分を半分以上変更する大規模改修(リフォームやリノベーション)でも確認申請が必要になる点もポイントです。この改正で、小規模な住宅の新築やリフォームに今までより時間がかかるようになりますが、耐震性や安全性が十分に確認されるようになります。
(引用:国土交通省|建築確認・検査の対象となる建築物の規模等の見直し)
既存住宅における高さ制限・建ぺい率・容積率の特例
昨今では、リフォームやリノベーション時の屋根(屋上)の断熱化や太陽光発電設備の設置を行っている建物が増え、新築時よりも建物高さが高くなるケースが増加しており、また、日除けのための庇(ひさし)を設置することで建ぺい率の上限に抵触してしまうケースも増加しています。
この現状を踏まえ、建築基準法上の規定が省エネ改修の弊害とならないように、「高さ制限・建ぺい率・容積率の特例許可制度」が追加されました。具体的な変更点は以下のようになります。
現行
・第一種低層住居専用地域・第二種低層住居専用地域・田園住居地域やその他高度地区において、原則として都市計画法で定められた高さ制限を超えてはならない
・都市計画区域内において、原則として定められた建ぺい率・容積率を超えてはならない
改正後
・第一種低層住居専用地域・第二種低層住居専用地域・田園住居地域やその他高度地区において、屋外に面する部分の改修工事によって高さ制限を超える場合、構造上やむを得ない建築物に対して特例を許可する
改修例:屋根の断熱改修、省エネ設備の屋上設置など
・都市計画区域内において、屋外に面する部分の改修工事により、建ぺい率・容積率の上限を超える場合、構造上やむを得ない建築物に対して特例を許可する
改修例:外壁の断熱改修や通気層増設、日射遮蔽を目的とした大きな庇設置など
既存不適格建築物における現行基準適用の一部免除
空き家問題などで現行の建築基準法にそぐわない建物(既存不適格建築物)が増加している一方で、接道義務(建築基準法第43条第1項)に違反している建物や、道路内建築制限(建築基準法第44条第1項)に適していない古い建物の省エネ改修や耐震改修を実施したくても、現行法に適合させることが現実的に不可能であり、リノベーションを断念せざるを得ない事例が多発しています。
これを踏まえ、既存住宅などの省エネ化・長寿命化の促進を目的として、一部の既存不適合建築物に対して、現行基準を適用しないようになります。これによって、大規模リノベーションによって古い空き家を再利用できる可能性が高まり、空き家問題などの解消に寄与することが期待されます。
2025年の建築基準法改正まとめ
今回は、建築基準法の改正が解体業に与える影響について説明してきました。今回の改正で今まで必要なかった申請が必要になり、工期が今までより長くなり、費用も申請の分高くなることが予想されます。2025年に工事を計画されている方はこの辺りに十分注意して進めていく必要がありますので、業者との打合せを密に行ってください。
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