2021/05/27
【事業者向け】原状回復で絶対に知っておきたい3つのこと|工事の流れ、ルール、注意点を徹底解説
今回は、退去が決まったときに知っておくべきことを「原状回復工事の種類」「退去までの流れ」「注意が必要なポイント」の大きく3つの点から説明していきます。
退去の流れについて簡単に知りたい方や退去を考えている方向けの内容になっていますが、一部契約時に知っておくべき内容が含まれています。これから原状回復に望まれる方は、ぜひお読みください。
また、「原状回復」とは一体何か?こちらの記事で詳しく解説しています。ぜひこちらも合わせてご参照ください。
目次
原状回復の基礎知識はYouTube動画でも解説しています!
原状回復工事の基礎知識に関しましてはウラシコのYouTubeチャネル【ウラシコチャンネル】でも解説しています。この動画では10分でわかりやすく要点をまとめておりますので、ぜひご参照ください。
原状回復工事の種類
原状回復工事には大きく分けて4つの種類と3つの区分があります。工事の種類はその内容ごとに以下の通り4つに分かれています。
- 原状回復工事
- スケルトン工事
- 産業廃棄物処理作業
- その他付随工事
区分については依頼主と費用負担先の違いから3つに分かれています。それぞれについて見ていきましょう。
- A工事
- B工事
- C工事
原状回復工事
看板の撤去や床・壁・天井の修繕、カウンターや間仕切りの撤去など内装に関する工事全般を指します。基本的には、事業に際し設置したものや変更したものをすべて撤去して借りたときの状態に戻すことになります。
スケルトン工事
建物の構造だけの状態にする工事です。コンクリート打ちっぱなしの状態にする工事などがこれに当たります。天井・壁・柱など基本構造以外の装飾や設備をすべて撤去してしまうことになります。
産業廃棄物処理作業
解体業者に依頼して工事を行った際には、工事で出たゴミや不用品はすべて産業廃棄物として扱われるため、一般の廃棄とは違った方法で処理する必要があります。後述しますが、一般ごみと産業廃棄物とでは処理にかかる費用がかなり違ってきますので、自分で処理できるものは、自分で処理したほうがいいでしょう。
その他付随工事
原状回復工事に伴い、電気・ガス・インターネット回線などを新規で設置した場合には、それらの撤去・解約も必要です。解体工事との兼ね合いも考え、きちんと計画を立てて工事を依頼しましょう。
原状回復工事の工事区分
本来ならA工事の内容がB工事として扱われ、貸主から費用を請求されたり、C工事の内容がB工事として扱われたりするなど、トラブルの原因となるケースがあります。工事の見積もりを確認する際にはなぜそのように工事分けされているのかをしっかりと確認するなど注意が必要です。
A工事(甲工事)
費用負担:貸主 工事の依頼者:貸主 業者の選定:貸主
ビルなど建物の共用部(共有通路の床や壁など)や設備(空調、防火設備など)に対する工事などが該当します。基本的には、借主側に請求が来ることはありませんが、借主の不注意などで損耗させた場合(特別損耗)には、借主に支払い義務が生じることもあります。
B工事(乙工事)
費用負担:借主 工事の依頼者:貸主 業者の選定:貸主
壁、床、天井、空調設備、防災設備、照明などについて、建物全体の安全や構造に関わる工事を、テナント側の依頼によって変更、増設・移設したりする工事のことです。入口ドアの変更や、空調設備や電気設備の増設、室内間仕切りの新設などが含まれます。ここで行った工事はすべて、原状回復工事の対象となります。
C工事(丙工事)
費用負担:借主 工事の依頼者:借主 業者の選定:借主
テナント資産に分類される設備や物品に対する工事のことです。入居後に行われる内装工事のことを指し、照明器具の取り付けやクロスの張り替え、インターネットの配線工事などが含まれます。
物件退去までの流れ
①解約通知(退去の意思表示)
契約書記載の内容にもよりますが、前もって賃貸借契約解約の通知を貸主に対して書面または口頭で行う必要があります。
半年から3か月前くらいの期限が設定されていることが多く、この期間よりも短く解約通知を行った場合には、希望期日に退去できないもしくは別途違約金を請求される可能性もありますぅので、注意が必要です。
②見積もり依頼
原状回復工事にどれくらいの費用と日数がが掛かるのかを実際に算出してもらう必要があります。特殊な工事が必要な場合には、それだけ日数や費用がかかる可能性があります。
また、解体業者側の人員や資源の確保などにより、工事の日程が決まってくることもあります。明け渡し期日までには、工事を完了させなければいけないので、スケジュール管理は重要になってきます。
大体のスケジュール感をつかむためにも、まず見積もりをしてもらうのが良いでしょう。
③ 明け渡し期日までの日程確認
解約通知を済ませ物件の明け渡ししの期日が決まったら、見積もりをしてもらい、大体工事にどのくらいかかるのかがわかってきたと思います。
そうしたら、明け渡し期日に向けた日程を確認します。明け渡し期日、工事期間などを考慮し、閉店や移転の日程を組み、最終的なスケジュールを決定しましょう。
工事の日程は気象条件など不測の事態が起こることを勘案して余裕を持った日程を組むべきでしょう。
見積もりで大体の相場と日数は把握していると思います。実際の工事の依頼もしなければならないので、あまり時間をかけすぎることがないように注意が必要です。
④工事着工
実際の工事をやってもらいます。工事の日程は気象条件など不測の事態が起こることを勘案して余裕を持った日程を組んでおくのがベターです。
⑤明け渡し
明け渡し日までに、工事を完了させ内部の清掃や電気などインフラの解約などすべて終わらせておかなければなりません。もし、期日に明け渡しできないとなれば、賠償金が発生したり、追加家賃が発生したりして、追加費用がかかりますので、注意してください。
原状回復工事で注意するポイント
日程の組み方
先ほども少し触れましたが、気象条件や周囲との兼ね合い、地震などの災害など様々な要因で工事が予定していた日程通りに進まないことが考えられます。解体業者側でも余裕を持った工程を組んでいるかもしれませんが、さらに遅れる可能性があることも考慮に入れておかなければなりません。
もし明け渡し日までに間に合わなければ、賠償金や追加の家賃請求をされる可能性があります。次に何か予定が組まれていた場合や、次の入居者が決まっていた場合には多大な損害を発生させてしまう恐れがあります。起こる確率が低かったとしても常に最悪の事態のことを想定して行動しておいて、悪いことはないでしょう。
オフィスの原状回復は特に行程が多い作業です。最低でも半年から3ヶ月程度の期間を要するとされています。オフィスの原状回復で必要な工事、手続き、行政処理はこちらの記事でまとめていますので、ぜひ合わせてご参考ください。
不用品の処分
工事の種類のところでも触れましたが、解体業者に依頼した工事で発生したゴミなどはすべて産業廃棄物扱いとなり、費用が割高になります。
大型機器などまだ使えるものは、リサイクル業者に買い取ってもらうことで工事費用の足しにできたり、不用品は専門業者に回収してもらうなどして自分で処分できるものは自分で処理することで、工事費用を抑えることができたりもします。
安すぎる・高すぎる費用
見積もりをしてもらった場合に、費用が相場よりも高かったり安かったりするかと思います。実際に発生しているトラブルの中でも、費用に関するものが多くあります。貸主指定の工事業者の見積もりが相場よりもかなり高くなっている、見積もりしてもらったはいいが、相場よりもかなり安いなど様々なケースが考えられます。
費用が高い場合には、まず工事の内容を見積もりで確認します。何がそんなに高額になっているのかを確認しましょう。夜間の工事が想定されていたり、特殊な工事が必要とされていれば、その分通常よりも費用は上がります。
もしくは、不必要な工事が含まれている場合もあります。まずは、しっかりと項目を確認し、場合によっては指定業者以外の業者に見積もりを取って、貸主に減額交渉を行ってもいいでしょう。
また、費用が低すぎる場合には、注意が必要です。必要な工事が含まれてなかったり、産業廃棄物処理費用が別途になっていたりと様々な可能性が考えられます。ほんとに信頼できる業者なのか、今一度しっかりと検討したうえで、工事を依頼する業者を決定してください。
原状回復工事の範囲
そもそも原状回復とは、借りている物件を借りたときの状態に戻すことで、法律で決められた借主側の義務です。特に事業用の物件の場合には、契約書などで特約が定められていることが多く、契約書に則った工事が必要になります。
契約書に特約で定めのない場合には、国土交通省作成の住所用物件のルールである「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」が適用された判例もあります。
ただそれは小規模事業者やオフィスの場合のみで、基本的には通常損耗も含めたすべてが原状回復の範囲として扱われます。原状回復工事の範囲はとても重要で退去時のトラブルの原因となる可能性がありますので、必ず明確にしておく必要があります。
不要なトラブルを避けるためにも、契約時、原状回復工事の見積もりの際に、原状回復工事の範囲を貸主と打ち合わせるなどして、明確にしておきましょう。
もしもトラブルが起こったら?
費用や工事の範囲などでトラブルになった場合には、一人で考え込まず頼りになる人に相談しましょう。友人知人に詳しい人がいる場合には、その人に相談するのもいいでしょう。貸主側からの連絡が滞りがちだったり、不当な請求をされていると感じた場合には、弁護士などしかるべき相手に相談しましょう。
万が一トラブルが起きてしまった際の相談先はこちらの記事でまとめています。こちらも合わせてご参照ください。
まとめ
退去に向けて知っておくべきこと、注意すべきことを説明してきました。不要なトラブルや悩みなどを避けるためにも、事前の準備はしっかりとしておきましょう。「立つ鳥跡を濁さず」ではないですが、最後くらい何のトラブルもなく気持ちよく終わりたいですよね。
実際に経験することが少ないからこそわからないことだらけでどうしていいかわからない人も多いと思います。この記事が少しでも、そんな方の役に立てばいいなと思います。
解体工事では、残念ながら”悪徳業者”も数多く存在します。「壊せば終わり」と考えている業者には要注意です!こちらのページでは解体工事でよく起こるトラブルや、悪徳業者の手口、対処法、優良業者の選び方を体形的にまとめています。ぜひこちらもご覧ください。
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