2022/04/28
【5分でわかる】アスベストのレベル1〜3の違いとは?定義、危険度、必要手続きなど、令和4年の改正内容を名古屋の原状回復業者が解説します
令和4年4月の法改正実施により、建物を解体する前にアスベスト(石綿)が使われているか否かを調べる事前調査と報告が義務付けられました。それに伴い、アスベストの有無や含有量によって、解体業者選びや解体費用の見積もりが変わってきます。
そのため、改めてアスベストについて適切に理解しておきましょう。この記事では、アスベストのレベル1〜3の違いや撤去費用の目安、令和4年(2022年)4月の法改正について解説いたします。
なお、条例や工事規模によって特別な基準や手続きが必要な場合がございます。本記事で概要をご確認いただいたあとは、各自治体のホームページ等で必ず詳細をご確認ください。
また、令和4年4月1日のアスベスト関連法令の改正実施内容に関しましては、こちらのページで詳しく解説しています。解体業者の現場目線で変更点を解説していますので、ぜひご参照ください。
目次
アスベストのレベルに関しては、YouTube動画で詳しく解説しています!
アスベストの基礎知識、アスベストレベルごとの特徴、レベルごとに必要な届け出と手続きについて、現場目線でわかりやすく解説しています。ぜひこちらもご参照ください。
アスベスト(石綿)とは
アスベストとは繊維状の鉱物で、「せきめん」「いしわた」とも呼ばれます。かつては「奇跡の鉱物」と呼ばれるほど、耐熱性や耐摩擦性などに優れていることが評価され、建材などで広く使われていました。
しかし、その繊維が極めて細くて軽いため飛散しやすく、人が吸い込むことで肺に刺さるという健康被害が指摘されるようになりました。
そのため1975年から段階的にアスベストの使用が禁止され、2006年には全面的に禁止となりました。したがって、2006年以前の建物ではアスベストが含まれている可能性があるのです。
特に、1975年以前の建物にはアスベストが一般的に使用されています。それらの建物は2022年現在では築47年以上になるため、いつ解体工事が行われてもおかしくありません。
アスベストが使われた建物の解体工事は2040年ごろがピークと言われています。築年数を考えても、これから解体工事の数は増加するでしょう。
参考出典:目で見るアスベスト建材(国交省)
特定建築材料(アスベストが含まれているとされる建材)の種類(一部抜粋)
材料区分 | 建築材料の具体例 | |
吹付け石綿 | ①吹付け石綿、②石綿含有吹付けロックウール(乾式・湿式) ③石綿含有ひる石吹付け材、④石綿含有パーライト吹付け材 |
|
石綿を含有する断熱材 | ①屋根用折板裏断熱材、②煙突用断熱材 | |
石綿を含有する保温材 | ①石綿保温材、②石綿含有けいそう土保温材 ③石綿含有パーライト保温材、④石綿含有けい酸カルシウム保温材、 ⑤石綿含有水練り保温材 |
|
石綿を含有する耐火被覆材 | ①石綿含有耐火被覆板、②石綿含有けい酸カルシウム板第2種 | |
石綿を含有する仕上塗材 | ①石綿含有建築用仕上塗材 | |
石綿含有成形板等 | ①石綿含有成形板、②石綿含有セメント管、③押出成形品 |
出典:大気環境中へのアスベスト飛散防止対策について(環境省)
アスベストのレベル分類
アスベストを使用した建物を解体する際、アスベストが飛散すると作業員や近隣住民の健康に影響が出る恐れがあります。これを防ぐために、アスベストのレベルが定められているのです。
アスベストは主に3つのレベルに分類されます。その際に基準となるのが「発じん性」です。耳馴染みがない「発じん性」という言葉は、粉じん発生率または飛散率のことを指します。
粉じんが飛び散りやすいものは、解体工事を行う際によりリスクが高くなり、近隣住民への影響も大きくなります。この健康被害を防ぐために、飛散の危険性に合わせてレベルが定められており、このレベルに合わせて作業する必要があります。
レベル1:発じん性が著しく高い
アスベストのレベルは数字が小さいほど飛散性が高く、レベル1が最も危険です。レベル1は綿のようなタイプのものが該当します。綿状のアスベストは解体時にブワッと繊維が飛び散ってしまうため大変危険です。
撤去作業では、飛散防止のために、作業中には看板の掲示や作業場の徹底した清掃、前室の設置などが義務付けられています。作業員も防じんマスクや防護服の着用など、厳重なばく露(飛散したものを吸ったり、触れたりしてしまうこと)対策が必要です。
また、改修のみの際は、薬液を使って飛散を防止する「封じ込め工法」や板状の材料で密閉する「囲い込み工法」を用いることもできます。
レベル1の主な建材の例
レベル1の建材の例として、アスベストとセメントを混ぜ合わせたもので、屋根裏などにモコモコと吹き付けてある「アスベスト吹き付け材」やロックウールの中にアスベストを混入した「石綿含有ロックウール吹き付け材」が挙げられます。
レベル1の主な使用箇所
レベル1は主に耐火建造物の梁や柱、エレベーター周り、ビルの機械室や立体駐車場の天井や壁などに使用されています。耐火用や断熱、吸音のために使用されるケースが多く、一般的な住宅の建材としてはほとんど利用されていません。
レベル2:発じん性が高い
レベル2は配管などに巻き付けてある保温材や断熱材として利用されているものが一般的です。アスベストが「練り込まれたもの」に近いものなので、レベル1の吹き付け材ほどの飛散性はありません。
しかし、もともと断熱目的で作られているので空気を含んでいて軽く、密度が低いため、いったん崩れると大量に飛散する恐れがあります。アスベスト自体の含有率も高いので、安全とは言えません。
工事前にはレベル1同様の届け出が必要です。危険であることには変わりないので、レベル1と同基準の作業が求められます。
ただし、レベル1の吹き付け材と違ってこびりついているわけではないので、配管ごと取り外すなどの方法もあって、レベル1よりも多少解体がしやすい特徴もあります。
レベル2の主な建材の例
レベル2の建材の例を挙げると「石綿含有保温材」や「耐火被覆材・断熱材」などです。シート状のもので巻き付けて利用されることが多いです、
レベル2の主な使用箇所
レベル2は主にボイラー本体や配管、空調ダクトの保温材、屋根用折板裏断熱材、煙突用断熱材などに使用されています。
レベル3:発じん性が比較的低い
レベル1・レベル2に比べ、取り扱い方が大きく変わってくるのがレベル3です。硬い板状に成形されたものが多く、割れにくいため、飛び散るリスクが低いという特徴があります。レベル3になると、一般的な木造住宅でも使用されている可能性もあります。
アスベストの含有量が高い場合もあるので、むやみに触れると危険です。令和3年の法令改正によりレベル3の建材も、特定建築材料とされました。これによりレベル1、2同様の義務や作業基準が適用されます。
レベル3の主な建材の例
レベル3の建材の例として、アスベストが混ぜられてある硬い床材や壁材(スレートやビニル床タイルなど)が挙げられます。
レベル3の主な使用箇所
レベル3は主に屋根材や外壁材、天井・壁・床などの内装材、ビニール床のタイルに使用されています。また、排気や換気のためのダクトを連結するためのパッキンにも含まれていることがあります。
レベルごとの必要書類・届出
先程申し上げたとおり、アスベストはそのレベルによって作業の基準や工法が異なります。さらに作業ごとに必要な工事届出が異なります。下記一覧にまとめましたのでご参照ください。
ただし、下記意外にも条例や工事規模によって各種届出が必要な場合がございます。詳しくは各自治体の相談窓口にご相談ください。
レベル1
・工事前に労働基準監督署に提出する必要がある書類「事前調査結果の届出」「工事計画届」「建物解体等作業届」
・工事前に都道府県庁に提出する必要がある書類「特定粉じん排出等作業届」「建設リサイクル法の事前届」
レベル2
・工事前に労働基準監督署に提出する必要がある書類「事前調査結果の届出」「工事計画届」「建物解体等作業届」
・工事前に都道府県庁に提出する必要がある書類「特定粉じん排出等作業届」「建設リサイクル法の事前届」
レベル3
・工事前に労働基準監督署に提出する必要がある書類「事前調査結果の届出」
・工事前に都道府県庁に提出する必要がある書類「建設リサイクル法の事前届」
令和4年4月のアスベスト関連法改正について
ここからは、令和4年(2022年)4月の法改正についてご紹介いたします。
先の法改正の実施により、建物を解体する際には、アスベストが含まれているかどうか事前調査をする必要があります。加えて、2022年4月からは、特定条件に該当する解体作業を行う場合には調査結果の届け出も必須になっています。
(※調査結果の報告が必要なものは、条件に当てはまる一部の工事のみですが、事前調査自体はすべての工事前に必要です)
令和4年まではレベル1・2のみ、都道府県庁へ調査結果の届け出が義務付けられていました。しかし令和4年4月1日から、一定の規模の建築物等については、石綿含有建材の有無に関わらず、全ての工事で事前調査の結果を届け出ることが義務付けられました。よってレベル3であっても、届け出を出さなければいけません。
調査結果の報告対象となる工事
※石綿の有無によらず以下のいずれかに該当する場合には報告が必要です。
- 解体部分の延べ床面積80㎡以上の建築物の解体工事
- 請負金額が税込100万円以上の建築物の改修工事
- 請負金額が税込100万円以上の特定の工作物の解体または改修工事
- 総トン数が20トン以上の船舶(鋼製のものに限る)の解体又は改修工事
※建築物の改修工事には、模様替え、修繕のほか、建築設備(ガス・電気の供給、給水、排水、換気、冷暖房、排煙、汚水処理のための設備等を含みます)の設置・修理・撤去等を行う場合が含まれます。
※上記意外にも条例や工事規模によって報告が必要な場合がございます。詳しくは各自治体の相談窓口にご相談ください。
報告対象となる工作物
※ 報告対象となる工作物は以下のものです。(なお、事前調査自体は以下に限らず全て必要です。)
- 反応槽、加熱炉、ボイラー、圧力容器、煙突(建築物に設ける排煙設備等の建築設備を除く)等
- 配管設備(建築物に設ける給水・排水・換気・暖房・冷房・排煙設備等の建築設備を除く)等
- 却設備、貯蔵設備(穀物を貯蔵する設備を除く)等
- 発電設備(太陽光発電設備・風力発電設備を除く)変電設備、配電設備、送電設備 等
- トンネルの天井板、遮音壁、軽量盛土保護パネル 等
- プラットホームの上家、鉄道の駅の地下式構造部分の壁・天井板 等
※上記意外にも条例や工事規模によって報告が必要な場合がございます。詳しくは各自治体の相談窓口にご相談ください。
令和4年のアスベスト改正実施はYouTube動画でも解説しています!
より詳しいアスベスト関連法令の改正実施の解説はウラシコのYouTubeチャネル【ウラシコチャンネル】でも解説しています。解体業者の目線で現場がどのように変わるのかわかりやすく説明していますので、ぜひこちらもご参照ください!
アスベストに関して十分な知識や対策を準備してから解体工事に臨みましょう
ここまでアスベストのレベル1〜3の違いや撤去費用の目安、令和4年4月の法改正などについて解説いたしました。アスベストは飛び散ることによって健康被害の恐れがあるため、慎重な作業や徹底した対策が必要になります。
大きな費用を考えると、建物の解体自体に踏み込めない方も出てくるでしょう。しかし、補助金などの制度によって少し安くなる可能性もあります。アスベストに関して十分な知識や対策を準備してから、解体作業を行いましょう。
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