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原状回復工事はどこまで必要?|店舗・テナント退去時の義務とルール

原状回復工事はどこまで

事業を始めるとなれば、どのような形であれ拠点となる場所が必要となります。店舗であれ事務所であれ、どこかに物件を借りることが多いと思います。その場合には、不動産賃貸借契約を締結し、事業に合わせて物件に手を加えそれぞれの形にあった空間を作り出すことと思います。

しかし、何らかの事情で廃業、移転する場合には、その物件は貸主に返却することになります。返却する際には、改正民法第621条に基づき、物件を借りた状態に戻す原状回復義務を負います。今回は、原状回復工事の範囲について触れていきます。

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原状回復工事の基礎知識に関しましてはウラシコのYouTubeチャネル【ウラシコチャンネル】でも解説しています。この動画では10分でわかりやすく要点をまとめておりますので、ぜひご参照ください。

原状回復費用の負担先

原状回復費用の負担先

通常私たちが住居として賃貸で部屋を借りる場合には、たばこによるヤニや故意に破損させた箇所は当然その原因となった借主の負担で原状回復することになりますが、それ以外(通常損耗)については貸主の負担で修繕することになります。

しかし、賃貸借物件を飲食店やオフィスなど住居以外の用途で使用した場合には、経年劣化や自然損耗などの通常損耗の原状回復はすべて借主の負担となります。

これは、その用途によりどのような損耗が発生するか事前に想定することが困難であるためであり、借主は物件の一切の責任を負うことになります。もし、借り受けた際に何か不備があれば、その時に貸主もしくは管理会社に連絡しておきましょう。

また、退去時の原状回復にはそれなりの費用がかかります。そこで入居時に支払っている敷金や保証金を、この工事費用に当てようと考える方もいらっしゃるかもしれません。現に、敷金償却により費用を軽減することができたケースもありますが、敷金の返還はすぐには行われないことに注意です。

返還には、半年から最長2-3年かかることもあります。敷金の返還に関しては、契約書もしくは特約の内容となっているはずですので、契約の際にきちんと押さえておく必要があります。

物件を退去した時などに聞く「原状回復」とは一体何か?こちらの記事で詳しく解説しています。ぜひ合わせてご参照ください。

原状回復の工事内容

原状回復の工事内容

次に工事内容ですが、基本的には賃貸契約書に記載された内容、範囲で行います。ここで注意が必要になるのが、居抜き物件を借りた場合です。

居抜き物件として借りているため、返す時も借りたときの状態で退去すればよいと思っていたが、契約書にはスケルトン状態での変換が記載されていたり、別の姿での変換が記載されている場合も少なくありません。

もともとオフィスとして使用していたが、入居者が決まらないため、飲食店など別業態での入居を許可していたが、やはりオフィスでの用途に変更したいと考えていた場合には、契約書には退去後オフィスで使用できるような工事を施すように記載されている場合もあります。

また、次の入居者が決まっている場合には、居抜き物件として内装などそのままで退去しても良いと貸主が許可する場合もありますので、一度相談してみるのもよいかと思います。

このように、貸主の事情で工事の内容が免除される場合もありますが、その場合には、特約で貸主の許可がある場合にはそちらが優先されるといったような内容が記載されている必要がありますので、ここにも注意が必要です。

さらに、スケルトン工事後の仕上げ工事まで、原状回復工事に含む可能性もありますので、原状回復工事の内容、範囲については、貸主や管理会社ときちんとすり合わせをしておく必要があります。

事前に工事の範囲を明確にしておかなければ、追加の工事が発生することもあり、追加の工事費用が発生するだけでなく、最悪明け渡し期間に間に合わず、追加の家賃など発生する可能性もありますので、十分確認することが必要です。

原状回復工事の終了時期

原状回復工事の終了時期

原状回復工事は明け渡し期日までに完了させる必要があります。通常工事には、2日から1週間程度の時間がかかります。解体業者は約1か月先の予定を組んでいることも多く、工事を依頼しても、即日でやってもらうことは基本的には不可能だと思っているほうがいいでしょう。

賃貸借契約の解除(廃業、閉店など)は半年以上の解約予告期間が設定されているはずですから、明け渡しの期日は予め決まっています。そこから逆算して、いつ頃に閉店して工事に入るのか、計画を立てなければなりません。

実際に工事に取り掛かるまでに業者屋の選定、工事の見積もり、不用品の搬出など、やることはたくさんあります。もしものことを考えて、ゆとりのあるスケジュール感で進めていくのが良いかと思います。また、余裕をもっての工事であれば繁忙期などを除いて工事費用の減額交渉もしやすくなります。

工事の期間に関しては、工事の内容、不用品の処分、工事の時間帯などによって期間が大きく変わってきますので、必ず確認してから見積もりを依頼するようにすることが必要です。

オフィスの原状回復は特に行程が多い作業です。最低でも半年から3ヶ月程度の期間を要するとされています。オフィスの原状回復で必要な工事、手続き、行政処理はこちらの記事でまとめていますので、ぜひ合わせてご参考ください。

原状回復業者の選定

原状回復業者の選定

原状回復工事の業者に関しては、契約書や特約で指定されている場合があるため、自由に選定できないことがあります。貸主が信頼できる業者に依頼したいという思いから設定されていますが、多くの場合大手ゼネコンを指定しているため、費用が相場より高めになってしまうことがあります。

費用が割高になる要因としては、工事の依頼までに中間業者が介在し、よけいな中間マージンが発生していること、貸主が空室の期間の不利益を少なくするために多めに設定していることなどが挙げられます。

退去の際には何かと費用がかさんで、工事費用はなるべく抑えたいのが本音です。工事費用の相場を知るためにも、一度ご自身で解体の見積もりを取られてみると良いかと思います。

そこで、指定業者からの見積もりがあまりにも高すぎる場合には、貸主と金額の交渉を行うこともできますし、場合によっては、業者の変更ができる場合もあります。あくまで交渉ですので、絶対に減額できる、変更できるとは限りませんが、やってみる価値はあるかと思います。

原状回復工事費用を抑える方法

原状回復工事費用を抑える方法

閉店や廃業などで、店舗の退去・撤退をする際には、何かと費用がかさみます。そこで、工事費用抑える方法として、自分で次の入居者を見つけ居抜きのまま入居してもらう方法があります。(造作譲渡)

造作譲渡の場合には、貸主と退去予定者との賃貸借契約が、貸主と新入居者との契約に変わることになります。そのため、造作譲渡には貸主の許可が必要となり、オーナーが許可しなければ、造作譲渡を行うことはできません。

また、造作譲渡自体は退去予定者と新入居者との契約となるため、譲渡に関しての条件交渉は、両者間で行われることになります。この時、退去予定者側は原状回復費用を抑えることができるほか、設備などを新入居者に売却するということもできますが、無償で譲渡が行われる場合もあります。

造作譲渡(居抜き売却)の場合には、閉店、新規開店の費用が抑えられるメリットがありますが、十分注意しなければならないこともあります。

①工事内容でも述べた通り、新入居者が入居した際には、内装などがそのまま残った状態での入居になりますが、退去の場合には、同じく居抜きの状態ではなく、原状回復工事を施した状態での退去(返却)となる場合があります。トラブルを避けるためにも、譲渡の前に十分に確認、説明しておく必要があります。

②エアコンなどをリースしている場合には、その使用権も引き継がれますが、最後には返却しなければならないので、勝手に売却や償却してはいけないことに留意しなければなりません。

まとめ

原状回復工事の範囲

今回は、原状回復工事の範囲やルールについて説明してきました。事業を終わらせようとしている人はもちろんですが、これから事業を始めようとする人も知っておくべきことですので、しっかりと知識を付けたうえでやっていく必要があるのではないでしょうか。

開店する前から閉店のことを考えるのも変な話ですが、飲食店の場合には、10年以内に約半分の店が閉店、撤退しているという現実があります。しっかりと準備することに越したことはありませんので、様々な情報を収集し、いざというときに慌てないようにしておいてはいかがでしょうか。

また、優良な解体業者に見分け方に関しましては、こちらの記事一覧ページにてまとめております。こちらも合わせてご参照ください。

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