2021/04/18
【原状回復の基準】国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」について内装解体専門業者の視点でわかりやすく解説します!
みなさんは、国土交通省が公表している、「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」をご存知ですか?このガイドラインは、政府が原状回復におけるトラブルを未然に防ぐために作られたものです。
原状回復では、退去時に工事の負担が、借りた側なのか貸した側なのかでトラブルが起こることがあります。今回は国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」について簡単に、わかりやすく、解説していきます。
原状回復につきましてはこちらの記事で詳しく解説しています。ぜひこちらも合わせてご参照ください。
目次
原状回復ガイドラインの利用にあたって
前提として、「ガイドライン」は市場家賃程度の民間賃貸住宅を想定しており、参考に使ってもらうものとして位置づけられています。
そのため、テナントや店舗となると当然費用の負担割り合いは変わってくることもありますし、一般的な住宅であっても負担の割合が変わったりします。
ガイドラインは1998年3月に取りまとめたもので、2004年2月と2011年8月の2回追加などの改訂がされています。
既に賃貸借契約をしている方は、現在の契約書が有効なものとなります。しかし契約書があいまいであったり、何らかの問題がある場合には、ガイドラインを参考にしながら話し合うように記載があります。
ガイドラインの中での原状回復の定義
ガイドラインの中では原状回復の定義を、借りた側が借りた当時の状態に戻すことではないと明確にしました。
「賃借人の居住、使用により発生した建物価値の減少のうち、賃借人の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗・毀損を復旧すること」 |
と原状回復を定義し、費用は借りた側の負担としました。
さらに、ガイドラインでは賃貸住宅の価値を4つに分類
①借りた側が通常の住まい方、使い方をしていても、発生すると考えられるもの |
②借りた側の住まい方、使い方次第で発生したり、しなかったりすると考えられるもの、明らかに通常の使用等による結果とは言えないもの |
③基本的には①であるが、その後の手入れ等借りた側の管理が悪く、損耗等が発生または拡大したと考えられるもの |
④基本的には①であるが、建物価値を増大させる要素が含まれているもの |
このように賃貸住宅の価値を①~④の4つに分類したとき、②と③については借りた側に原状回復義務があると定義しました。
ガイドラインでは、賃貸住宅の場合、経過年数は考慮される
②や③の場合でも、経年変化や通常損耗が含まれており、借りた側はその分を賃料として支払っているので、貸す側が修繕費用の全てを負担することになります。
契約当事者間の費用配分の合理性を欠くなどの問題があるため、借りた側の負担については、建物や設備の経過年数を考慮し、年数が多いほど負担割合を減少させる考え方を採用しています。
そして、経年劣化にあたる通常の使用による損耗の原状回復費用は、賃料に含まれるものとしました。簡単に言うと、普通に住んで自然にできてしまった汚れや傷は、入居者が費用を負担する必要はないということです。
借りる側が支払う賃料や敷金、保証金が、汚したり損傷させた場所を原状回復する費用として充てられるということです。
賃貸物件を退去した時などに聞く「原状回復」とは一体何か?こちらの記事で詳しく解説しています。ぜひ合わせてご参照ください。
原状回復費用はどこまでが借りた側の負担になるのか?
2023年2月、引っ越しシーズンに伴い、原状回復に関するトラブルのご相談を多くいただいています。これらのご相談は年々増えており、原状回復トラブルについて、国民生活センターが注意を呼び掛けるほどになっています。
参考:引っ越しシーズンに増加「原状回復」トラブルに注意 (2023年2月5日)
https://www.youtube.com/watch?v=iJ4cj2TahIw
まずはじめに、賃貸住宅とオフィスやテナントなどの事業目的の建物は原状回復範囲は異なります。賃貸住宅はガイドラインに沿った原状回復範囲になりますが、オフィスやテナントはほぼ100%借りた側の負担で原状回復が必要です。なぜかというと、事業ごとに負担が異なるため、ガイドラインよりも契約時に決める特約が効果を持つからです。
先程述べたとおり、賃貸住宅では自然にできた傷や汚れはオーナー負担となります。賃貸物件の原状回復では、主に経年変化を差し引いた金額を負担する、という考え方で費用を計算します。
そして借りた側の負担の場合、原状回復費用は、退去後に返還される敷金から引かれることになります。
では具体的に、どんなことが自然にできてしまった汚れや傷なのか、借りた側の負担になる汚れや傷とはどんなものなのでしょうか。よくある事例を解説していきます。
賃貸住宅の壁の原状回復範囲
賃貸住宅は、壁にクロスと呼ばれる壁材が用いられていることがほとんどです。退去時には、このクロスを張り替えるかどうかが、よく争点となります。ガイドラインの過去の事例では、ポスターを貼ったときの画鋲やピンの跡はオーナー負担になります。日差しによるクロスの色の変色はオーナーの負担になります。
しかし、クギやネジを使って壁に棚を設置したときのクギ穴、喫煙によるヤニ汚れなどは、借りた側の負担としています。
賃貸住宅の床の原状回復範囲
日差しで色あせてしまった床材の張り替えはオーナーの負担になります。しかし、不注意で窓を開けたまま外出してしまい、その間に降った雨で床が変色した場合は、借りた側の負担となります。
一部だけ新しい床材にすることは原状回復ではないため、床の交換が必要になりますが、シミのない部分まで負担することはありません。
入居時に退去時のことを考えてトラブルを回避
国土交通省のガイドラインが公表されたことで、トラブルは減ってはいますがゼロではありません。原状回復におけるトラブルを防ぐにはどうしたらよいのでしょうか。
契約書と重要事項説明書の確認
まずは慎重に部屋を選ぶべきです。借りるとはいえ、毎月家賃を払うので高い買い物をするのと同じです。注意深く部屋を探し、契約は慎重に行いましょう。契約時には、契約書と一緒に渡される重要事項説明書に書かれている内容を確認しましょう。
例えば、原状回復とは別に、専門業者による清掃を施すための費用を敷金から差し引くという特約が書かれていることがあります。契約したあとになって、支払う必要がないと思っても遅いのです。特約がある場合は内容をきちんと把握し、納得できるかどうか判断することが必要です。
ガイドラインには、壁のクギの穴は何センチまでなら負担にならないかまでは書かれていません。ですから分からないところは契約前に確認することが大切です。契約書と重要事項説明書を事前にもらって読んでおけるとよりよいです。
入居前に必ず部屋をチェック
内見時や引越し前に、傷やシミ等の有無の確認をしましょう。もしあるようなら写真を撮っておき、オーナーや不動産会社と情報を共有しましょう。写真を撮っておけば、万が一入居中にオーナーや不動産会社が変わっても証拠となります。
最後に、当たり前ですが、入居中の掃除はきちんと行いましょう。手入れを怠ったことによる調理場や換気扇の油汚れの修繕は、借りる側の負担となることがほとんどです。トイレや手洗い場の水あかやカビについても同様です。
万が一原状回復のトラブルが起きてしまった際の相談先はこちらの記事でまとめています。こちらも合わせてご参照ください。
まとめ
原状回復義務には住んでいれば自然とできる汚れや傷、色あせなどがあります。こうした線引きがあいまいなため、トラブルが多かったのです。しかし、オフィスやテナントの原状回復では全額借りた側の負担になることも多くあります。
ガイドラインをうまく活用して、原状回復を行いましょう。原状回復でわからないことがあれば、お気軽にご相談ください。また、優良な解体業者に見分け方に関しましては、こちらの記事一覧ページにてまとめております。こちらも合わせてご参照ください。
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