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PCB(ポリ塩化ビフェニル)とは?どのような処理が必要?解体工事業者がわかりやすく解説します。

PCBとは、「ポリ塩化ビフェニル」の略称で、人工的に作られた油のことです。PCBには、水に溶けにくい、沸点が高い、熱で分解がしづらい、不燃性、電気絶縁性が高いなどの複数の特徴があります。

以前は様々な用途で使用されていましたが、現在では健康被害の危険性から、製造・輸入ともに禁止されています。この記事ではPCBの特徴や、処理方法について記載していきますので、ご参考ください。

PCBの毒性について

画像出典:ウィキペディア「ポリ塩化ビフェニル」

PCBは脂肪に溶けやすい性質を持っており、慢性的な摂取が続くことで体内に蓄積していきます。その結果、様々な症状を引き起こします。

PCBが注目される原因となった事件は、1968年(昭和43年)のカネミ油症事件です。PCBは化学的にも安定的な性質を持つことから加熱・冷却用の熱媒体として利用されてきましたが、この事件では食用油の製造過程にて熱媒体として利用されていたPCBが混入してしまい、多くの健康被害を発生させてしまいました。

カネミ油症とは、西日本を中心に広域に広まった、ライスオイル(米ぬか油)による食中毒です。カネミ倉庫社製だったためこの名前が付けられました。症状としては、吹き出物ができたり、神経症状や関節症状、呼吸器症状、目やに等の皮膚症状、全身の倦怠感などの症状があります。

症状の改善には相当な時間がかかります。こういった健康被害が多いことから、結果的に昭和47年にはPCBの製造や輸入、新たな使用が禁止されました。

高濃度PCBと低濃度PCB

PCB廃棄物はPCBの濃度によって「高濃度PCB」と「低濃度PCB」の2種類に分類されます。該当物が異なりますが、それぞれ処理する施設も異なりますので、注意してください。

高濃度PCB

高濃度PCB廃棄物とは、意図的にPCBを使用した電気機器廃棄物を指します。

こちらには、高圧変圧器やコンデンサー、安定器、可燃性のPCB汚染物(濃度100,000mg/kg超)、不燃性のPCB汚染物(濃度5,000mg/kg超)などが含まれます。

こちらは中間貯蔵・環境安全事業株式会社(JESCO)が処理を行っています。銘版に記載されたメーカーや型式、製造年月日などの情報から高濃度PCBなのかを判断します。

低濃度PCB

低濃度PCB廃棄物とは、非意図的にPCBが混入してしまった廃棄物を指します。

こちらには、微量のPCBに汚染された廃電気機器や可燃性のPCB汚染物(濃度100,000mg/kg以下)、不燃性のPCB汚染物(濃度5,000mg/kg以下)などが含まれます。

低濃度PCB廃棄物については、環境大臣が認定している無害化処理認定施設及び都道府県知事などが許可する施設にて処理を行っています。微量なPCBの汚染については、絶縁油のPCB分析を行って、PCB汚染の有無を確認します。

PCBの処理方法

PCBの処理方法は10種類あります。下記にそれぞれについて説明しますので、確認していきましょう。

①脱塩素化分解

薬剤などと混合させて、脱塩素化反応によって分解する方法で、化学反応によってPCB分子内の塩素原子を水素などに置き換えて、ビフェニルなどPCB以外の物質に変化させます。

②水熱酸化分解

超臨界水や超臨界水に近い高温高圧下の水の中で、PCBを水や塩化ナトリウム・二酸化炭素に分解する方法です。

「超臨界水」とは、臨界点である374℃かつ218気圧を超えた液体でも気体でもない両方の特徴を持った水のことです。超臨界水は反応性が非常に高く、誘電率が極端に低いので、幅広いPCB処理物に対応することができます。

③還元熱化学分解

酸素のない還元雰囲気の高温下で、PCBを脱塩素化し、塩化ナトリウムや燃料ガスに分解する方法を「還元熱化学分解」と言います。

④光分解

紫外線を照射して、化学反応でPCBの中の塩素を分解する方法です。PCBやイソプロピルアルコール、水酸化ナトリウを60℃以下で混合し、紫外線を照射することでPCBを脱塩素化し、PCBを分解します。

⑤プラズマ分解

アルゴンガスなどのプラズマを発生させ、3000℃以上の高温プラズマの中にPCBを噴霧注入することで、PCBを水や塩化水素、水素、炭酸ガスなどに分解する方法です。

⑥高温焼却

1100℃以上の高温で焼却し、ダイオキシン類の発生を防ぎながら分解する方法です。焼却により燃焼ガスが発生するため、日本では周辺住民の不安の声が大きいとのことでほとんど実績がないが、欧米諸国ではPCBの主な処理方法がこの高温焼却です。

⑦機械化学分解

メカノケミカル反応の原理を活用して、機械的エネルギーを付与する粉砕操作でPCBを分解する非加熱分解方法です。

➇溶融分解

処理する対象を千数百℃以上の高温で溶融分解する方法のことを言います。有機物は分解することによってガス化され、無機物はガラス固化体及び金属体になります。PCBに汚染された土壌にも適用される分解方法です。

⑨洗浄

トランスやコンデンサなどのPCB汚染物を解体して、各部材を洗浄する方法です。溶剤については、溶剤の中のPCBを分離・除去し、再利用されます。

⑩分離

内部構造が複雑な電気機器など、PCBで汚染されたものから、PCBを分離させて回収する方法です。主に真空状態で物質を加熱する真空加熱分離法があります。

処理に関する法律・罰則について

処理に関する法律・罰則について

PCBに関する法律や罰則について記載していきます。PCB廃棄物の処理についてはいくつかの法律とそれに伴う罰則がありますので十分注意してください。

不法廃棄について

PCB廃棄物は決められた処理を行う必要があります。もし不法廃棄を行った場合、5年以下の懲役または1000万円以下の罰金に処し、またはこれを併科されます。法人の場合は3億円以下の罰金が科せられます。

届出について

PCB廃棄物を保管している事業者は、毎年PCB廃棄物についての保管・処理状況について都道府県知事に届け出なければなりません。虚偽申告または届出を行わなかった場合は、6ヶ月以下の懲役または50万円以下の罰金に処されます。

処分の期限について

PCB廃棄物は、2027年3月31日までに自分で処分するか、許可を持った業者に委託して処分する必要があります。これに違反した場合は、3年以下の懲役または1,000万円以下の罰金に処し、またはこれを併科されますので注意してください。

譲渡もしくは譲受けについて

PCB廃棄物は、絶対に譲渡したり、譲り受けたりしてはいけません。これに違反した場合は、3年以下の懲役または1,000万円以下の罰金に処し、またはこれを併科されます。ただし環境省が定める場合を除きます。

まとめ

PCB廃棄物

PCBはその危険性からも決められた複数の処理方法が存在します。間違った処理を行ってしまうと罰則の対象になってしまいますので、しっかり内容を把握して処理を行いましょう。

PCBと同じく危険物質として知られるアスベストに関しては、こちらのページで詳しく解説しています。解体業者の現場目線で変更点を解説していますので、ぜひご参照ください。

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