2022/08/31
解体工事で発生する有害物質とは?主な物質と注意事項を解説します。
解体工事で発生する有害物質といえば、石綿(アスベスト)を思い浮かべる人が多いと思います。しかし、解体工事で発生する可能性のある有害物質はそれだけではありません。
今回は、アスベストを含む有害物質と処理時の注意事項などを紹介していきます。
令和4年4月1日のアスベスト関連法令の改正実施内容に関しましては、こちらのページで詳しく解説しています。解体業者の現場目線で変更点を解説していますので、ぜひご参照ください。
目次
解体工事で発生する有害物質
・アスベスト
・水銀
・PCB
冒頭でも述べたように、解体工事の際に発生する有害物質はさまざまです。ここでは、主たる上記3つの有害物質と、その処理方法などを紹介していきます。
アスベスト(石綿)
画像出典:Wikipedia-アスベスト
アスベストは、非常に小さい繊維状の鉱物で、一度呼吸器に入り込むと簡単に肺まで移動し、長い年月をかけて蓄積することで肺がんなどの呼吸器系の病気を引き起こします。アスベストは、断熱材や耐火材、吸音材として一般住宅からビルや工場など様々な場所で使用されている可能性のある有害物質です。
アスベストには、飛散の危険性に合わせて1-3の作業レベルが設定されており、レベル1が一番危険な作業になります。特に危険なレベル1に属するのは石綿含有吹付け材で、発塵性がとても高く、工事の際には防護服の着用などをはじめとした決まりが多くあり、細心の注意を払って工事を行わなければなりません。
また工法に関しても、囲い込み、封じ込め、除去のいずれかで解体することが決められています。
水銀
水銀とは、常温で凝固しない(液体のままである)唯一の金属元素で、銀のような光沢を放つことからこの名前がついています。揮発しやすく、一度自然界に排出されると分解されることなく、魚の体内にメチル水銀として蓄積され、それを食した人間の体にも悪影響を及ぼすことがあります。
水銀は自然界にもともと存在しているもので、主に地殻から噴出するガスに含まれています。その他、化石燃料の燃焼の際に大気中に放出されることもあり、人間の活動による排出も多くなっています。
多くの人を苦しめた水俣病の原因物質も水銀であり、大気や水を通じて世界的に循環し健康被害を引き起こす可能性があることから「水銀に関する水俣条約」が採択され、地球規模で水銀汚染の防止を目指しています。
水銀が使用されている製品としては、蛍光管や血圧計、体温計、一部ボタン電池などがあります。水銀を使用するうえで、正しい使用方法を守ることはもちろんのこと水銀を使用していない製品への切り替えや、水銀を使用した製品の適切な処分などが、環境汚染・人体被害の抑制につながります。
PCB(ポリ塩化ビフェニル)
画像出典:wikipedia-ポリ塩化ビフェニル
PCBとはポリ塩化ビフェニルの略称で、人工的に作られた化学物質のことです。 主に油状で、水に溶けにくい、熱で分解しにくい、電気絶縁性が高いなどの特徴を持つため、電気機器の絶縁油、熱交換器の熱媒体として使用されました。
PCBが使用されていた電気機器としては、コンデンサや蛍光灯の安定器、変圧器などがあります。PCBが使用された安定器を使用した蛍光灯は学校などでも使用されていました。
1968年に食用油の製造過程で熱媒体として使用されたPCBが混入し、西日本を中心に広範囲で食中毒を引き起こしたカネミ油症事件が起こりました。
この事件で起こった健康被害としては、吹出物、色素沈着、目やになどの皮膚症状や倦怠感、しびれ、食欲不振など様々で、この事件がきっかけでその毒性が注目されるようになり、現在では製造・輸入ともに禁止されています。
有害物質に関する関連法規
各有害物質に対して、その使用や処分方法などを法律で定めているものがあります。ここでは先に挙げた有害物質に関する法律を一部紹介していきます。
アスベスト関連
建築基準法
アスベストの使用禁止、アスベストを使用した建築物の増改築・解体時の適切な工事(除去・封じ込め・囲い込み)の実施などを規定
労働安全衛生法(石綿障害予防規則を含む)
重量の0.1%を超えるアスベストを含む製剤等の製造・輸入・使用の禁止、建物の解体等作業における作業者へのアスベストばく露防止措置、作業主任者の選任などを規定
大気汚染防止法
アスベストが使用されている特定建築材料の指定、アスベスト飛散防止のための作業基準(除去・封じ込め・囲い込みの方法など)、解体現場でアスベスト関連工事の掲示義務などを規定
PCB(ポリ塩化ビフェニル)関連
ポリ塩化ビフェニル廃棄物の適正な処理の推進に関する特別措置法(PCB廃棄物特別措置法)
PCB廃棄物の基準、PCB廃棄物を所有する事業者の保管及び処分状況の届出、処分期間、法律に違反した場合の罰則などを規定
廃棄物の処理及び清掃に関する法律(廃棄物処理法)
一般廃棄物の処理のほか、PCB廃棄物の種類、収集・運搬・処分方法などを規定
水銀関連
水銀による環境の汚染の防止に関する法律(水銀法)
水銀の掘採の禁止、特定の水銀(人体に有害な水銀)使用製品の製造禁止、特定の製造工程における水銀使用の禁止、水銀等の貯蔵及び水銀を含有する再生資源の管理などを規定
水銀に関する水俣条約
新規鉱山開発の禁止、水銀や水銀使用製品の輸出入の制限、大気中への水銀排出の削減などを規定
おわりに
今回は、解体工事で発生する可能性のある有害物質を3つ紹介してきました。このほかにも、有害物質はたくさんありますので、解体作業の際は十分に注意しましょう。
これらの有害物質は今でも我々の生活に密接につながりがあり、その影響を受ける可能性があるものですので、正しい知識を持ち共存していくことが必要です。
アスベストに関する記事はこちらのカテゴリーでまとめています。令和4年度の改正法令を反映した記事を公開していますので、ぜひ合わせてご確認ください。
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