2021/04/18
コスト増加!?原状回復業界におけるコロナウイルスの影響まとめ|内装解体専門業者が考察してみます
2019年暮れから世界的に流行している新型コロナウイルスの猛威はとどまることを知らず、いまだに私たちの生活を脅かしています。
日本においては、2回に及ぶ緊急事態宣言、や飲食店の営業自粛、不要不急の外出自粛など様々な制限がかけられる窮屈な生活になって1年ほどが経ちました。
テイクアウトや中食の増加により、飲食店の経営は困難を極めています。建設業界でも例外ではありません。今回は、新型コロナウイルスの建設業界、解体業界における影響を見ていきます。
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目次
2020年企業の休廃業・解散は2年ぶりに減少
2021年1月18日帝国データバンクが発表した2020年の全国企業「休廃業・解散」動向調査結果によると、2020年の休業や廃業、解散を行った企業(個人事業主を含む)は5万6103件であった。
同調査よると、8万人以上の雇用が消失しており、売り上げでは約2兆6000万の損失となっている。当初、新型コロナウイルスの影響による急激な景気悪化により事業の撤退を余儀なくされる企業が急増するとみられていたが、官民一体となった、経済政策や支援により発生が抑えられたとみられている。
業界別でみると、解体業が属する建設業で休業や廃業、解散が最多で7037件となっており、昨年よりは減少したものの影響が大きかったことが受けてとれる。
解体業界全体では減少トレンド
大手解体比較見積もりサイトが2020年4月に実施した調査によると、解体工事会社の約9割ほどが新型コロナウイルスの影響を感じているという結果が出ています。
その中でも、7割にも及ぶ会社で解体工事案件の減少や売り上げの減少を感じているまたは、その見込みがあると回答しています。
また、現時点ではどれくらいの影響があるのか不明と回答した会社もあり、先行き不透明な状況に困惑している層も一定数いることがわかっています。一般的に、解体業者は、ハウスメーカーや工務店経由の案件も多く、そのルートからの工事依頼が減少していることが大きく影響しているようです。
工事現場でのコロナウイルスの蔓延が危ぶまれる中で、生き残りをかけた対策が急務となっているなか、具体的な方策が決定していない会社が大半であり、不安がぬぐえない状況になっています。
また、減少した需要(案件)を取りに行こうと価格を下げている企業が多くなっており、解体やリフォームを考えていた方にとっては、狙い時かもしれませんが、相場より安すぎる見積もりを出された場合は、後々のトラブルを避けるためにも気を付けましょう。
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解体業界の課題は依然として解決せず
解体業界では、以前より様々な課題がありました。産業廃棄物処理場の不足、処理コストの高騰、人材不足など根強い問題が残っています。工事案件が減少している中でもこれらの問題は、解体業者を悩ます材料となっています。
未曽有の事態に瀕し、それどころではないかもしれませんが、このような時期だからこそ、一度立ち止まってこれらの問題と真摯に向かい合い、どのような解決策があるのか、どうすれば改善していくのかを考えていくいい機会かもしれません。
減少トレンドの中でも需要あり
新型コロナウイルスの蔓延により、テレワーク(在宅勤務)が推進され、会社に出社せずとも仕事が進められるような体制が確立され、オフィスの在り方が見直され始めました。
オフィス運営には、家賃のほか光熱費など諸経費が毎月発生します。会社で仕事しなくてよくなれば、今までのような大きさのオフィスは必要ありません。家賃の安い場所へ移転縮小することでコストカットを図ろうとする会社が増加しました。
そのため、移転に伴う原状回復工事の依頼が上昇しました。また、感染対策のための席と席の間隔を広くとったレイアウトに変更したり、換気のための設備をいれたり、売り場の一部をテレワーク用のスペースに作り変えたりと内装工事への需要も上昇しました。
このように解体工事会社にとっては、軽微な案件であるかもしれませんが、売り上げが見込めない中での光明の光になったのかもしれません。
飲食店は冷え込みの時代
新型コロナウイルスの影響で、外出自粛や時短営業の結果、売り上げの低迷が続き閉店、倒産に追い込まれる店舗が多く出てきている。
本来であれば、テナント側が解約までの期間家賃を払い続けながら、原状回復工事を行い引き渡しをしなければならないが、この状況の中で、そのような金銭的余裕はないため、敷金や保証金から相殺してほしいとする事案が急増している。
この場合、原状回復の費用は、貸主側が負担することとなり、場合によっては、かなりの出費を強いられることになります。
さらに、テナント側が破産申告をして、それが認められれば、敷金や保証金などは破産管財人の管理下に置かれてしまえば、敷金や保証金を原状回復工事に充足することができなくなり、大損してしまう可能性もあります。
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解体業界は成長産業だった
実は、解体業界はこれから成長が期待される産業の一つでした。というのも、高度経済成長期、日本ではマンションやトンネル、道路橋などの建設ラッシュがおこり、急激に建設がすすめられました。
バブル期の景気のよさがうかがえるこの建設ラッシュですが、これから50年があまり経過し、平成末期からは建設ラッシュ時の建築物の老朽化による建て替えや取り壊しが行われていく予定でした。
かなりの数の建物の建て替え、リフォームが行われる予定でしたので建設業界、ひいては解体業界はここ何十年と成長していくはずでした。
しかし、コロナウイルスの影響で工事の延期や中止が相次ぎ、そんな流れにストップをかけてしまいました。これら需要の急増に備え、法整備が着々と進んでいました。
法改正により、解体に専門性付与
2002年以降の法改正により、解体工事には、「建設業許可」または「解体工事業登録」が必要になりました。簡単に言うと、請負金額が500万以上の場合には「建設業許可」が必要になり、500万未満の場合には、「解体工事業登録」が必要となります。
また、どちらの場合でも、すべての現場に専任の技術者(「主任技術者※1」または「監理技術者※2」)を最低でも2名以上配置することを義務付けられました。これは環境問題への対応や安全性の確保、労働環境の整備などを目的としています。
一般的に、解体の際に建物の設計図を手にすることが困難になるケースが多く、解体工の経験や知識から解体を進めていかなければならないため、現場の監督者になるためにはそれなりの経験も必要とされています。
大手による新たな解体方法の模索
時代の流れとともに、ビル群が乱立しオフィスが立ち並ぶ場所では、大規模な重機を使っての解体や大胆な解体では、周囲に地理やごみをまき散らしてしまう可能性が高いだけでなく騒音や空気汚染の問題も発生します。
このような問題に対処するために、各企業では「安全性」「効率」を意識した方法の開発が進んでいます。大成建設の「テコレップシステム」や竹中工務店の「竹中ハットダウン工法」など様々な方法が開発され、解体業界はどんどん進化を遂げています。
まとめ
今回は、成長が期待されていた解体業界が新型コロナウイルスによってどのような影響を受けているのか、関連する業界がどのような状況なのかを解説いたしました。
世界的パンデミックに認定された新型コロナウイルス(COVID-19)ですが、人体だけでなく世界経済にまで来れほどの影響を持っていることがお判りいただけたのではないでしょうか。
しかし、このような状況でもできることはあります。
老朽化が進んでいる建築物の建て替えをお考えの方は、次はどのように建てるのかを考え、具体的なイメージを固める時期として、取り壊しを検討の方は、解体後土地をどのように生かすのかなど、今だからこそゆっくりと時間をかけてできることがあります。今だからこそできることを実践していきましょう。
また、原状回復における行政手続きを詳しく解説している記事をまとめてあります。こちらも合わせてご参照ください。
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