2023/12/06
大家さん・賃貸オーナー向け|原状回復ガイドラインで知っておくべきポイント
みなさんは、「原状回復ガイドライン」というものの存在をご存じでしょうか。賃貸物件に関するトラブルのうちのほとんどが、原状回復をめぐるものとなっており、これらのトラブルを未然に防ぐために国土交通省がまとめたものがこのガイドラインです。今回は、ガイドラインの内容で大家さんやオーナーが知っておくべき内容を紹介していきます。
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目次
原状回復ガイドラインの概要
原状回復ガイドラインとは
原状回復ガイドラインとは、正式には「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」(以下、ガイドライン)といいます。退去時における原状回復をめぐるトラブルを未然に防止するため、賃貸住宅標準契約書の考え方や裁判例及び取引の実務等を考慮したうえで、原状回復の費用負担のあり方について妥当と考えられる一般的な基準をガイドラインとして国土交通省がまとめたものです。
民間の賃貸物件における賃貸借契約は、契約自由の原則により、貸す側と借りる側の双方の合意に基づいて行われるものですが、「退去時において、貸した側と借りた側のどちらの負担で原状回復を行うことが妥当なのか」についてのトラブルが頻発していました。
このような状況を受け、国土交通省が1998(平成10)年3月に取りまとめたものであり、2004(平成16)年2月及び2011(平成23)年8月には、裁判事例及びQ&Aの追加などの改訂を行っています。
原状回復ガイドライン参照リンク:国交省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」について
原状回復ガイドラインの対象
現状回復ガイドラインは、賃料が市場家賃程度の民間賃貸住宅を対象にしており、賃貸借契約締結時において参考にすることを想定しています。すでに賃貸借契約を締結している場合には、その内容が有効になりますので、契約内容に沿った取り扱いが原則です。
しかし、契約書の内容があいまいな場合や契約締結時に問題があった場合には、ガイドラインを参考に話し合いを実施するようにしてください。
原状回復の問題は退去時の問題だと思いがちですが、これを入居時の問題としてとらえ、入退去時における損耗の有無など物件の状況をよく確認しておくことや、契約締結時に原状回復などの契約条件を当事者双方がよく確認し、納得したうえで契約を締結するなどの対策をとることが、トラブルを未然に防止することにつながると考えられます。
原状回復ガイドラインのポイント
原状回復の対象範囲
ガイドラインでは、原状回復を「賃借人の居住、使用により発生した建物価値の減少のうち、賃借人の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗・毀損を復旧すること」と定義し、その費用は賃借人負担としました。
一方、いわゆる経年変化や通常の使用による損耗等の修繕費用は、賃料に含まれるものと考えられるため、賃貸人負担であるとしました。
「通常の使用を超えるような使用による損耗・毀損」とは、賃借人の住み方や使い方次第で発生したり、発生しなかったりすると考えられるもので、明らかに通常の使用等による結果とは言えないもののことを指すと考えられています。これ以外の箇所については、基本的には賃貸人負担で修繕する必要があるとされています。
特約の設定
賃貸借契約について、強行法規に反しない範囲で、特約を設けることは契約自由の原則から認められています。特約のうち、一般的な原状回復義務を超えた修繕等の義務を賃借人に負わせるものは一定の要件を満たす必要があるとされています。
これは、判例等において、一般的な原状回復義務を超えた修繕を賃借人負担とする旨の特約は、単に賃貸人の修繕義務を免除するためだけのものであり、経年変化や通常損耗に対する修繕業務等を賃借人に負担させる特約は、賃借人に法律上、社会通念上の義務とは別の新たな義務を課すことになると考えられているためです。
特約を設定する時に満たしておく要件は、「特約の必要性があり、かつ、暴利的でないなどの客観的、合理的理由が存在すること」、「賃借人が特約によって通常の原状回復義務を超えた修繕等の義務を負うことについて認識していること」、「賃借人が特約による義務負担の意思表示をしていること」です。
これらすべてが満たされていない場合には、裁判などの結果、特約が無効になる可能性があることに留意しておく必要があります。
施工単位
原状回復は、毀損部分を復旧することが目的であることから、可能な限り毀損部分に限定し、毀損部分の補修工事が可能な最低限の施工単位とすることが基本となります。したがって、賃借人に原状回復義務がある場合の費用負担についても、補修工事が最低限可能な施工単位に基づく補修費用相当分が負担対象範囲と考えられます。
ここで問題となるのが、クロスの張り替えです。クロスに釘穴や不注意による欠損がある場合には、クロスの張り替えが必要になりますが、クロスを張り替える場合には、毀損や欠損が一部だけであっても 、部屋全体の張り替えを実施することが多いです。
この場合、欠損がある面だけではなく、全面の張り替え費用を賃借人負担とするのは、部屋の価値の増大という側面が大きいことから、原状回復以上の利益を賃貸人が得ることとなり、妥当ではないと考えられます。一方、クロスの毀損部分だけの張り替えが可能でも、そうすることで張り替え部であることが明確になる場合には、一面すべての費用を賃借人負担とすることは、妥当であると考えられます。
このように毀損部分と補修箇所に差異が生じるような場合は、最低限の範囲での補修工事、原状回復による賃貸人の利得及び賃借人の負担を考慮し、当事者間で不公平とならないようにすべきです。
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おわりに
今回は、国土交通省が定めた「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」の知っておくべきポイントを紹介してきました。契約を実施する際に当事者双方が知っておいて損はありませんので、きちんとポイントを抑えて確認するようにしましょう。
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